起業する際の心構えと手続き(実務)について

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

今は、大企業も倒産したり、不正会計で危機に立ったり、パンデミックが突然襲い掛かってくる時代です。日本で働く誰しもが、自分のキャリアについて常に考えておくことが必要になっています。ぬるま湯はもう終わりです。
 

起業
 

その時々で、最もよい働き方を選びながら、柔軟に生き抜く強さを身に着けたいものです。起業したり、転職したり、その時代によって有利なキャリアチェンジはあるはずです。私は起業コミュニティを運営していますが、起業だけが人生の選択肢だとは思いません。

私の周りでは、起業している人がたくさんいます。みんな余裕で生きているようにも見えますが、実際は大変なんだろうと思います。そこは起業前の人からは見えないでしょう。もし、準備を全くせずに起業してしまうと、大変な目に合うのは分かりきっています。しっかりと準備してください。

今回は「それでも起業するんだ!」と思う人のために「起業に必要な手続き」についてお話します。
 

ポイント 起業する際の手続き

起業するには手続きはこうする・一覧

イメージを持つ
 

確かな目的・イメージを持つこと

起業を目標にしている人もいますが、起業はあくまでも手段です。本来の目的、夢を持っていなければ、起業をする意味などありません。起業には目的が必要なのです。

その思いを叶える過程で、思ってもいないような事態に陥ることもあります。そんな事態を乗り越えるためにも「明確な目的」を持っていることが大切です。あの有名なビルゲイツさんも「成功の秘訣は、大きなビジョンが持てるかどうかだけだ」と言っていますね。
 

ビジネスプランをしっかり立てることが大切

起業するためには、ビジネスプランを考えなければなりません。会社の上場を目的にしている人も、そうではない人も、そういったことに関係なく、ビジネスで目指すところについて考える必要があります。

近年では、アフィリエイトなど副業から始めるプチ起業や、定年後のシニア世代が起業するケースなど、さまざまな起業スタイルがあります。学生世代では、卒業後すぐに起業することを目標に置いている人もいます。どのようなやり方、サイズ感にしろ、起業するためにはしっかりしたビジネスプランが必要になります。

  • 起業の目的
  • 見込み客が直面している問題
  • その問題の解決策
  • この事業を起こすタイミングはいつなのか?
  • 参入しようとしている市場の規模
  • 競合相手よりも優れている点(相手を研究する)
  • 提供するモノやサービスはどういうものなのか?
  • 利益をどう出すのか?
  • どんな仲間と行うのか?
  • 財務管理はどうするのか?

ポイント 会社を作るために必要な手続き等

起業するには手続きはこうする・一覧

会社設立
 

しっかりビジネスプランを立てることができたら、まずはやってみることです。会社設立などは、後で考えればよいことなので、とりあえず個人でやってみましょう。

ビジネスが回るようになってきて、社会的にも税金的にも、そろそろ会社を作ったほうがよいなと思ったら、会社設立を考えましょう。
 

会社の名前を考える

会社の名前は、後から変更することも可能ですが、会社の顔となる存在ですので納得するまで考えましょう。検索ワードを含めて「実利」を考えるか、造語で満足感アップを狙うか、それも価値観です。

平成14年に法律が改正されて、それまでは使用することができなかったローマ字やアラビア数字なども使えるようになって、幅が広がりました。覚えてもらいやすい名前をつけましょう!
 

本社の場所を決める

会社の本社の場所は、会社の目的や組織、活動、構成員、事業執行などといった定款(ていかん)を作成するまでに決めなければなりません。(定款に関しては後程)本社の住所をして使えるのは「貸事務所」「自宅」「サービスオフィス」「バーチャルオフィス」「コワーキングスペース」です。自宅以外は、借りる必要があるので賃貸会社を契約を結ぶ必要があります。

そして、自宅を本社にする場合には、その自宅を会社として使ってよいのかを確認する必要があります。「商用利用不可」等、家主によって違いますので、必ず確認しましょう。新しく借りる場合は、アットオフィスのような事務所の仲介をしてくれる会社があるので、規模等を加味して最適な事務所を紹介してもらえます。気軽に相談してみましょう。
 

お金を調達する

起業をする際に、一番大変なのがお金の調達でしょう。新会社法が改正されたことによって1円からでも会社が作れるようになりました。しかし、資本金の金額がその会社の基礎になりますし、会社は設備投資など何かとお金が必要になります。1年くらいは収益が無くてもやっていけるくらいの資本金は用意しておいた方がいいでしょう。

資本金の主な出所は以下のようなものがあります。

  • 自己資金
  • 家族や親戚、知人などからの出資
  • ベンチャーキャピタルからの出資
  • 個人投資家からの出資
  • 創業融資(国民政策金融公庫から)
  • 制度融資(信用保証付きの融資)
  • 国の補助金や助成金

資本金の調達先として、一番最初に考えるのが自己資金。そして、家族や親せきからの出資でしょう。実際もこの割合が高いようです。

ベンチャーキャピタルは、起業する前でもビジネスモデルがしっかりしていて、技術があれば将来性を見込まれて出資してもらえる可能性はあります。それに対して、立ち上げたばかりの企業に個人投資家から出資を受けるのは、かなりの信頼関係を築かないといけないので、大変でしょう。

その他、金融機関や各都道府県などからの融資を受けられる制度もありますので確認しましょう。また、返済の必要のない、補助金や助成金の公的資金も受けれるかもしれませんので、しっかりチェックしましょう。
 

会社の決算月を決める

多いのが3月ですが、実際は何月にしても大丈夫です。一番儲かる時期を避けたり、お金が出ていることが多い時期に納税しないといけないという事態を避ける、消費税の免責期間をできるだけ長くするなど、事情を考えてから決定しましょう。税理士さんに相談してください。
 

会社のハンコを作る

会社を作る際には「実印」「銀行印」「角印」の3種類が必要です。この印鑑は、登記する際の種類に押すので、登記する日までには必ず用意しておきましょう。
 

印鑑証明書をとる

会社を作るためには、発起人や取締役の実印と印鑑証明書が必要です。その他印鑑証明書が必要な場面は下記の通りです。

  • 定款の認証の際(合同会社の時は定款の認証が必要ありません)
  • 設立登記申請の際

印鑑証明書には有効期限があります。定款の認証の際には6ヵ月、設立登記の際には3ヵ月以内のものを用意しましょう。
 

設立に際しての登記費用を用意する

資本金のほかに、下記のような登記に必要な費用があります。
 

株式会社を設立するのに、最低限必要な費用は次のとおりです。

ア 認証手数料5万円
イ 謄本手数料1枚250円大体8枚2000円くらい
ウ 印紙代4万円。ただし電子定款のときはなし
エ 設立登記に必要な登録免許税15万円か出資額の1000分の7のいずれか高い額。
オ このほか、募集設立の際には、払込保管証明書約2万5000円
カ これに加えて、代表者印の作成費用、印鑑登録証明書代がかかります。

日本公証人連合会「Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。」 より引用

 

株式会社と合同会社では違いますが、株式会社の場合約25万円ほどの登記費用がかかります。
 

定款の作成と認証

次は、先ほどから何度も出ている「定款」の作成です。定款とは会社を経営する上での基礎的な決まりのことで、会社の法律のようなものです。作成した定款は公証役場で公証人の認証を受けます。

この定款は紙ではなくPDF(電子定款)として作成すると収入印紙を貼らなくてもいいので、印紙代の4万円が必要なくなります。それと、定款の作成を行政書士に依頼することも可能です。大体5万円程度でやってくれます。
 

登記するための書類の作成と登記

定款の作成と認証が終われば、次は登記です。登記に必要な書類は・・・
 

  • 会社設立登記の必要書類:全ての会社が必要な書類7点
    • 登記申請書
    • 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
    • 登記すべき事項を保存したCD-R
    • 定款
    • 取締役の就任承諾書
    • 払込証明書
    • 印鑑(改印)届出書
  • 会社設立登記の必要書類:場合によっては必要となる書類4点
    • 発起人の決定書
    • 代表取締役の就任承諾書・監査役の就任承諾書
    • 取締役全員の印鑑証明書

マネーフォワード「会社設立における登記の必要書類11種類を徹底解説!」 より引用

 

登記するには、実際に法務局へ行くという方法もありますが、郵送やオンラインでもできます。登記を申請した日が会社設立日になりますので、覚えておきましょう。

書類に不備がなければ、大体申請から1週間くらいで登記は完了します。登記が完了する日はわかるので、申請する際に確認しましょう
 

登記の手続きは専門家に依頼することも可能か?

これまで見てきて、会社を立ち上げるまでに決める事や用意すること、実際の手続き等とても大変だと思いませんでしたか? 会社を作る際にかかる費用を少しでも安くしたいということで、自分でやる人もいるのですが、私は専門家に任せてしまうことをお勧めします。経営者のやるべき仕事は、登記ではなく経営です。

専門家に依頼すれば、すべての手続きが数日から数週間程度で終わります。その短縮した時間で、事業に集中したり、他にやるべきことを進めることができます。

そして、意外と忘れてしまうことなのですが、会社の口座を開設するということです。近年では、マネーロンダリングへの警戒感からなのか、法人の口座開設は以前に比べて厳しいものとなっています。ギリギリで慌てて行うとうまくいかないこともありますので、まずは調べておくことが大切でしょう。
 

ポイント まとめ

起業するには手続きはこうする・一覧

法人化
 

今回は、起業するために必要な心構えと手続きについて書きました。いざという時の決断を下す際にお役に立てればうれしいです。もし今後、起業する可能性がある方は、今まで書いてきたことを参考にしてみてください。
 

法人格を持った会社には・・・ 株式会社 合同会社 合名会社 合資会社 有限会社があります。このうち、有限会社は有限会社法の廃止によって新設できません。また、合名会社と合資会社は一般的ではないといえます。そのため、会社を設立するという場合、多くは株式会社か合同会社の設立が該当します。なかでも、対外的な信用度などを考慮すると株式会社を選択したいと考える人が多いのではないでしょうか。そこで、今回は株式会社の設立のために必要な手続をご紹介します。  起業18では、会社員の間の法人設立はお勧めしていま...

 

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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全11冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


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