何年も起業準備しているのに手応えがないのは、なぜですか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

もう何年も起業準備を続けています。本を読み、講座も受け、ノートには事業の構想が積み上がっています。それなのに、いっこうに手応えがありません。実際の収入はゼロのままで、何かが前に進んでいる感覚がまるでないのです。

これだけ時間をかけているのに手応えが出ないのは、いったいなぜなのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

何年も真剣に向き合ってきたのに手応えがない。それはつらい状態だと思います。ただ、原因を一段ずつ掘り下げていくと、抜け道がはっきり見えてきます。

表面の問題は「時間をかけても進まない」ことです。ではなぜ進まないのか。一段深く見てみましょう。

手応えは「外に出した量」からしか生まれない

多くの場合、積み上がっているのは「インプット」と「構想」であって、「外に向けた行動」ではありません。手応えという感覚は、自分の中で考えを練った量ではなく、外の誰かに届けた量からしか生まれません。本を一冊読んでも、お客さんの反応は一つも返ってきません。準備が長いのに手応えがないのは、ほとんどの場合、外に出している量が足りていないだけです。

さらに根本を見ると、もう一つの原因にたどり着きます。「誰に届けるか」が決まっていないと、人は外に出す行動そのものを怖がります。漠然と「世の中の人」に向けて出そうとすると、批判されそうで手が止まる。だから構想を磨くほうに逃げてしまうのです。

届ける相手を「たった一人」に絞る

根本に効く一手は、対象を広げることではなく、思い切り狭めることです。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、最初のお客様はたった一人でいい、その一人を徹底的に満足させられれば9割は成功している、と紹介しています。百人に届けようとして動けないより、確実に喜んでくれそうな一人を思い浮かべ、その人だけに向けて何かを出すほうが、はるかに早く手応えが返ってきます。

抽象的な「世の中の人」ではなく、実在する一人を起点にすると、出すべきものの輪郭が急にはっきりします。まずは、あなたの構想を喜んでくれそうな具体的な一人を、実名で書き出してみてください。

実際に、長い足踏みから抜け出した方の話をご紹介します。

起業18フォーラムにいた笹岡さん(仮名・50代前半・男性・通信会社の管理部門・子はすでに独立)は、3年以上にわたって起業準備を続けていました。資料は分厚くなる一方で、収入はずっとゼロ。本人いわく「準備のための準備をしていた」状態だったそうです。

転機は、ある日の勉強会のワークで訪れました。起業18フォーラムのワークシートに「あなたの商品を、いま顔が浮かぶ誰に売りますか」という一問があり、笹岡さんはそこで筆が止まったのです。これだけ準備してきたのに、具体的な届け先が一人も書けない。自分でその空白に気づいた瞬間でした。

この気づきを言葉にしながら、まずは前の職場で世話になった後輩ひとりに向けて、業務の困りごとを解く小さなサービスを出してみることにしました。

準備開始から20ヶ月目に出した最初の一件をきっかけに、口コミで似た立場の人へと広がり、二年目に入る頃には毎月の相談が途切れない状態が続くまでになっていました。月に数件の相談が安定して入る形ができ、「届け先を一人に決めた瞬間から、急に手が動き出した」と笹岡さんは振り返ります。

準備が長いこと自体は、悪いことではありません。足りないのは、外に出す相手を一人に絞ることだけです。今週は、これまで温めてきた構想を、いま顔が浮かぶ具体的な一人に向けて、ほんの一部でいいので外に出してみてください。

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長い準備は、無駄だったのではありません。届ける相手を決めていなかったから、出口が見えなかっただけです。積み上げた構想は、宛先が決まった瞬間に、ようやく動き出します。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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