記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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アイリストで起業する始め方を調べると、必要な資格や開業の形について、たくさんの情報に出会います。美容師免許、シェアサロン、面貸し、業務委託。言葉は次々に出てくるのに、「で、結局どの順番で動けばいいのか」という肝心なところが、意外と見えてこないものです。
アイリストは、施術する人のほぼ全員が同じ国家資格を持つ世界でもあります。だからこそ、資格をそろえた後で何を決めるかが、その後の単価を静かに分けていきます。今日は、現場で見てきた事実から、その順番を整理していきます。
全員が同じ資格を持つ世界で、何で選ばれるか

まつエクには美容師免許が要る、という前提
まず押さえておきたい事実があります。まつげエクステの施術は、美容師免許がなければ行えません。これは、知識や技術の足りない無資格者の施術でまぶたの腫れや充血といったトラブルが相次いだことを受け、2008年に国が定めたルールです。サロンを構えるには、保健所への美容所登録も必要になります。
つまりアイリストとして独立する人は、ほぼ全員が同じ美容師免許という土台を持っています。免許を取った時点では、まだ他の人との差はほとんどついていない、ということでもあります。
「もっと資格を」と動く前に立ち止まる

資格の上乗せは安心材料にはなる、けれど
美容師免許を取ると、次に「もっと専門の資格を取らないと選ばれないのでは」という不安が湧いてきます。まつげエクステに関わる民間の検定はいくつもあり、技術の裏づけやお客様への安心材料として、たしかに役に立ちます。
ただ、資格を増やすほど指名が増えるかというと、そう単純ではありません。お客様が「この人にお願いしたい」と思うのは、資格の数より、自分の悩みをわかってくれそうかどうかです。そのぶん、資格を一枚追加する前に考えておきたいことがあります。どんな人の、どんな目もとの悩みを引き受けたいのかを先に決めるほうが、その後の準備はずっと迷わなくなります。
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、才能のない人は一人もいない、と書いています。人見知りも、回り道してきた経歴も、誰かにとっては安心して任せられる理由になります。資格が横並びの世界では、この「あなたならでは」の部分こそが、選ばれる理由になっていきます。
- 資格を増やせば指名が増えると思い込む:
横並びの世界では、資格の枚数より「誰の悩みに強いか」が選ばれる軸になる - 技術の高さだけで勝負しようとする:
技術が同水準の人は多く、技術単体では価格を上げる理由になりにくい - 万人向けのメニューにする:
「誰でもどうぞ」は、結局「あなたでなくてもいい」と受け取られやすい
開業の形を、身の丈から選ぶ

いきなり自分の店を構えなくていい
独立というと、自分の店を借りる姿を思い浮かべがちです。けれど、アイリストの開業にはいくつかの形があり、それぞれ初期費用も働き方も違います。業務委託のように店の集客に頼れる形では、売上の還元率が4〜6割ほどに落ち着くことが多く、自由度と引き換えに手取りが変わってきます。
どの形にも長所と短所があります。自分の今の体力と資金に合うものから始めて構いません。
- 自宅サロン:
家賃が抑えられる一方、保健所の美容所登録の要件を満たす設備や区画が必要になる - 面貸し(ミラーレンタル):
空いている席を空き時間に借りる形。少ない元手で始めやすいが、借りられる時間は店次第 - シェアサロン:
個室や施術スペースを利用料を払って借りる形。月額制や時間制があり、自分のペースで働ける - 業務委託:
サロンと委託契約を結んで働く形。集客は店側に頼れるが、売上の還元率は4〜6割ほどに落ち着くことが多い
はじめは業務委託や面貸しで現場の感覚と顧客とのつながりを育て、手応えが出てからシェアサロンや自宅サロンへ移る。この順番なら、固定費の重さに押しつぶされずに進めます。大事なのは、店の形から決めるのではなく、引き受けたい相手を決めてから、その人に届きやすい場所を選ぶことです。
起業18フォーラム会員・相馬さんの一年

起業18フォーラムにいる相馬さん(仮名・40代前半・女性・サロン勤務を経て独立)は、最初の頃、面貸しでの施術を重ねても単価を上げられずにいました。美容師免許も民間検定も持っていて、技術には自信がありました。それなのに、一回の施術で受け取れる額は、勤めていた低単価サロンの頃とほとんど変わらなかったのです。
転機は、起業18フォーラムの勉強会で、他のアイリストの単価事例を見たことでした。同じ免許で、技術の差もそれほどないのに、受けている値段がまるで違っていたのです。「技術が足りないわけではないのかもしれない」。そう感じた相馬さんは、その後の会員間の個別相談で、自分の施術メニューを一つずつ見直していきました。
相談の中で見えてきたのは、相馬さんが「誰でも歓迎」のメニューにしていたことでした。やってあげる仕事を、ただ広く構えていたのです。そこで、自分が一番ていねいに向き合える「目もとが乾燥しやすい40代以降の方」に絞り、肌が敏感な人でも安心できる施術を看板にし直しました。

絞り込んでから、相馬さんの仕事は静かに変わっていきました。施術の技術そのものは、以前と大きく変わっていません。けれど、絞り込んで動き出して8ヶ月目に入る頃から、「敏感肌でも安心してまかせられる相馬さん」と名指しで予約が入るようになり、同じ一回の施術でも、面貸し時代とは比べものにならない値段で受けられるようになりました。
相馬さんは「資格は前から持っていました。変えたのは、誰の悩みに向き合うかを決めて、その人にだけ届く言葉でメニューを書き直したことだけでした」と話していました。資格が横並びの世界では、誰に向けて何を言うかを決めた人から、選ばれる側に回っていきます。
指名で続くお客様が増え、独立から一年が見えてくる頃には、面貸しの空き時間頼みだった働き方から、自分の予約で埋まる働き方へと移っていました。同じ時間働いても、手元に残る額は以前を無理なく上回るようになっています。相馬さんが変えたのは技術ではなく、横並びの資格の先にある「自分ならでは」を、お客様に伝わる形にしたこと。それだけでした。
よくある質問

Q.まつエクの開業に美容師免許は本当に必要ですか?
必要です。まつげエクステの施術は、美容師免許を持つ人でなければ行えないと国が定めており、無資格者の施術でまぶたの腫れや充血などのトラブルが相次いだことを受け、2008年からのルールになりました。免許なしで開業することはできません。
店舗を構える場合は、これに加えて保健所への美容所登録も必要です。免許を取った段階では、独立に向けた土台ができたところ、と考えてください。差がつくのは、その先です。
Q.未経験から準備するなら、何から始めればいいですか?
順番としては、美容師免許の取得が出発点になります。専門学校や通信制で学ぶ道があり、働きながら目指す人もいます。ただ、免許を取ること自体がゴールではありません。
免許の取得と並行して、自分がどんな人の目もとの悩みに向き合いたいかを考えておくと、その後がぐっと楽になります。技術を磨く期間に、引き受けたい相手の輪郭を少しずつ描いておく。この準備が、独立後の指名につながっていきます。
Q.自宅サロンと面貸し、最初はどちらがいいですか?
どちらが正解という話ではなく、今の資金と働き方の希望で選ぶものです。元手を抑えて小さく試したいなら、面貸しやシェアサロンから入るのが無理のない選び方になります。借りる時間や費用の形、解約の条件は店ごとに大きく違うため、契約内容を一つずつ確認しないまま決めると、後から負担が重くのしかかることがあります。
自宅サロンは家賃を抑えられる一方、保健所の美容所登録の要件を満たす設備や区画が要ります。まずは面貸しで顧客とのつながりを育て、指名が安定してきてから自宅やシェアサロンへ移る。この流れが、固定費で苦しまないための現実的な道になります。
開業の情報を集めるほど、資格や設備の話に気を取られがちです。けれど、全員が同じ免許を持つこの世界で長く選ばれ続けられるかどうかは、誰のどんな悩みを名指しで引き受けられるか、その一点にかかっています。
今日できることは、自分が一番ていねいに向き合えるお客様を一人だけ思い描き、その人に何と言えば届くかを、施術メニューの言葉に一行だけ落とし込んでみることです。資格をすべてそろえてからでなくて構いません。一人の相手を決めることが、次の単価を教えてくれます。

アイリストは、資格が横並びの世界です。だからこそ、その先にある「あなたならでは」を言葉にできた人から、価格を比べられる側ではなく、名指しで選ばれる側へと静かに回っていけます。
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