記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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今回のマネ虎レポートは、京都・祇園の町家に演芸場を作りたいという36歳のお笑いタレントのお話です。

「マネーの虎」は、夢を持った志願者が5人の実業家(虎)の前でビジネスプランをプレゼンし、出資を勝ち取る番組です。今回の志願者はなんとプロのお笑いタレント。しかもMCを務める吉田栄作さんとはドラマやCMで共演した旧友関係。異例づくしの回ですが、虎たちがぶつけた本質的な問いかけは、起業を志す人間なら誰もが向き合うべきものでした。

- 堀之内九一郎(55歳当時)年商92億
株式会社生活創庫 代表取締役社長 - 南原竜樹(43歳当時)年商55億
オートトレーディングルフトジャパン株式会社 代表取締役社長 - 加藤和也(32歳当時)
株式会社ひばりプロダクション 代表取締役社長 - 岩井良明(43歳当時)年商12億
株式会社モノリス 代表取締役 - 高橋がなり(44歳当時)年商78億
SODクリエイト株式会社 代表取締役
この回には南原竜樹会長も出演されています。現在も精力的に事業を展開される、政治家でもある南原会長、虎ノ門・株式会社LUFTホールディングス事務所でのお姿です。

旧友・吉田栄作が見守るなか、36歳のタレントが虎の部屋に
番組は吉田栄作さんの珍しいナレーションで幕を開けます。
MCが志願者の旧友というのは異例です。吉田さんと森脇さんはドラマ・CMで共演した間柄。プロボクサーを夢見ていた森脇さんのパンチをミットで受けた思い出まで語るほどの関係で、当日は7〜8年ぶりの再会だったといいます。
入場した森脇健児さん(36歳)は、希望額1811万円、使い道は「京都の町家に劇場を作りたい」と述べました。
「本気なのか」―高橋がなりの最初の問いと南原の「知らない」発言

プレゼンが始まると、高橋がなり社長(44歳)がいきなり核心を突く質問をします。
タレントが番組に「出演」しているだけでは意味がない、という本音がにじんでいます。
続いて南原竜樹社長が率直に言います。「私、森脇さんのことを知らないんだ。簡単に紹介していただけませんか?」と。周囲の虎たちが「有名ですよ」と声を上げるなか、森脇さんは自己紹介を始めます。
17歳で松竹芸能に入り、演芸場から芸歴をスタートさせた森脇さん。かつてはテレビのレギュラーを多数持ち、吉田栄作さんと同じ時代を生きた人気タレントです。ただ東京での活躍から遠ざかり、現在は京都を拠点に活動しているといいます。
祇園の町家が異空間の劇場に・プレゼンの全貌

森脇さんが描くのは、京都・祇園の町家を利用した劇場です。古い木格子の外観のドアをガラッと開けると、全く別の異空間が広がる―それが京都の町家の魅力だと森脇さんは言います。
音楽から芸能まで幅広い主催者に対応する劇場を目指し、森脇さん自身がプロデューサーとして若いタレントを世に出していきたいというビジョンです。加藤和也社長がコンセプトを確認します。
森脇健児「そうですね」
京都でラジオを15年担当してきた森脇さんには、地元の「ぐつぐつしてる」(将来を目指して頑張っている)若者たちとのつながりがあります。うまくスターが出れば入場料を上げて黒字化したい、という収益イメージも語られました。
「儲ける気は全くない」―岩井良明の疑問に爆弾発言

虎たちが事業計画の詳細を問うなか、岩井良明社長が核心を突きます。
この問いに対し、森脇さんは驚くべき答えを返します。
出資を求めに来た番組でこの発言は、虎たちを困惑させるには十分でした。岩井社長が「投資をするということで言えば、その収支をもちろん考えなければいけない」と返すのも当然のことです。
その後、森脇さんはライブハウス経営者などに取材して作った事業計画書を提示します。ただし本人が「全くない」と認めるように、電卓を叩いて経営を考えてきた人間ではありませんでした。
森脇健児「全くないです」
南原竜樹「お金のことにも、こういった経営の組み立てにも参加してほしいということなんですね」
森脇健児「そうです」
数字の管理も経営の判断も、投資家(虎)にお任せしますという立場を明確にした形です。
コブクロとSMAPを育てたプロデューサーとしての実績

虎たちの懐疑的な視線が続くなか、森脇さんはプロデューサーとしての実績を語り始めます。
まず語ったのは、コブクロのエピソードです。京都で毎週土曜に3時間のラジオ番組を担当していた森脇さんは、当時ストリートで歌っていたコブクロを番組のコーナーに起用しました。
場所を告げないままゲリラライブを始め、最初は2人だけで行っていたものが毎週続くうちに、最終的には鴨川の出町柳の三角州に300人が集まるまでになったといいます。コブクロはその後、年末に大阪城ホールで2日間公演を行うほどのアーティストに成長しました。
さらに森脇さんはSMAPとの交流も語ります。デビュー前から一緒に食事をし、夢を語り合った仲。ジャニーズ事務所でデビューした彼らが4曲連続でオリコン1位を取れなかった時期、森脇さんが「ジャニーさんを信用しなアカンで」とアドバイスすると、それ以降は出す曲がすべて1位になったというエピソードです。
高橋がなりの「タニマチ論」―番組の本質を突く一言

コブクロ・SMAPの話を聞いた高橋がなり社長が、この回で最も核心を突く発言をします。
高橋社長の言う「タニマチ」とは、芸人や力士などを私的に支援するパトロンのこと。森脇さんが本当に必要としているのは経営パートナーではなく、プロデューサーとしての自分を信じて小屋を作ってくれる支援者であり、それはこの番組の趣旨とは根本的にズレているという鋭い指摘です。
加藤社長がフォローするように言いました。
そして南原社長が条件を口にします。
「経営者を連れてこい」という条件です。しかし森脇さん自身が経営に向いていないことを認めている以上、この条件が現実的に満たせるかどうかは不透明でした。
吉田栄作の「ぬるい」と虎たちの業界コネクション論

ここでナレーションに「森脇の無二の親友、栄作は何を思う」と入り、吉田栄作さんが心境を語ります。
親友だからこそ言える「ぬるい」という言葉。感情と番組MCとしての冷静さの間で揺れる吉田さんの複雑な表情が印象的な場面です。これに対し、堀之内社長が冷静に返します。
吉田栄作「そうですね」
堀之内九一郎「その話を聞いて、金出すわ、くれてやるわ、貸すわって、それを決める番組ですから。私は別に良いと思う。スターだろうと誰だろうとね」
さらに高橋社長は、タレントとしての森脇さんの可能性を前向きに語ります。自分の師匠・テリー伊藤氏がアイデアをポンポン出し、実際の段取りはすべて高橋社長が担うという形でうまくいっていたように、森脇さんにも「テリー伊藤のがなりさん」に相当するパートナーが必要だというのです。
南原竜樹「本当、がなりさんのおっしゃるとおり。テリーさんのがなりさん、森脇さんのがなりさんが必要なんですよね」
「タレントとしての知名度と業界コネクションは価値がある、それを活かせる経営実務者と組め」―虎たちが出した一つの答えです。
森脇健児の涙と堀之内の魂の言葉

岩井社長が「1811万円という金額が、以前の森脇さんにとっては小さなお金なんじゃないか」と指摘すると、森脇さんの感情が溢れ出します。
岩井良明「なんでですか?」
森脇健児「野望、、その東京にいまして、野球で言ったら肘壊れまして。車で言ったらガソリン切れまして。それから仕事ないですね。で、京都… やっぱり京都でデビューしましたから。京都って閉鎖的じゃないですか。閉鎖的な中でも自分がドラマ出たり、バラエティ出たり…京都の人ってすごい、頑張ったなって見てくれるんですね。で、帰って、何もなくなって帰りましてん… 京都の街が、僕を再生させてくれたんです。今、金はないんですよ。横にいる栄作さんとやってる時は、金貰ってました。今はないですよ。タレントなんで、僕は、アホだから、あっただけ使ってました」
「野球で言ったら肘壊れた、車で言ったらガソリン切れた」という比喩が、東京時代の挫折の深さを物語っています。かつて吉田栄作さんと並んで活躍した時代から一転、仕事もお金もなくなって京都に帰ってきたという告白に、スタジオに静寂が走りました。
この告白を受け、堀之内社長が深く共感しながら語りかけます。
自身も夜逃げを経験した堀之内社長だからこそ、言葉に重みがあります。「劇場を作るより、もう一度自分自身をスターにしろ」 この回で虎たちが森脇さんに伝えた最大のメッセージでした。
結果:ノーマネーでフィニッシュ

虎たちが判断を下し、吉田栄作さんが結果を告げます。
森脇健児「来てよかったですね」
堀之内九一郎「本当の森脇さんっていうのが、これで大衆に知られるかもしれない」
希望額1811万円に対し、誰一人として出資の意向を示さずノーマネーでフィニッシュ。それでも森脇さんは「来てよかった」と言い、堀之内社長の「本当の森脇さんが大衆に知られるかもしれない」という言葉が温かく場を包みました。
森脇健児のその後

この放送から20年以上が経過した現在も、森脇健児さんは関西を中心にタレント・ラジオパーソナリティとして活動を続けています。京都を拠点にした地域密着の活動は変わらず、地元では「京都のタレント」として長年親しまれています。
堀之内社長に「本業に打ち込め」と言われた通り、芸能活動を継続しながらラジオや地元テレビを通じて若いアーティストとの交流も大切にしています。「儲ける気はない」と言っていたプロデューサー気質の人柄も変わらず、京都の芸能シーンを陰から支え続けています。
まとめ:情熱と経営能力は別物である

この回で明らかになったのは、「夢を持つこと」と「それをビジネスとして成立させること」の間にある深い溝です。
森脇健児さんの京都への愛情やプロデューサーとしての実績(コブクロ・SMAP)は本物でした。しかし虎たちが求めたのは「経営者としての覚悟」であり、それが最後まで見えなかったことがノーマネーの最大の理由でした。
高橋がなり社長の「タニマチ論」は鋭い指摘です。アイデアと人脈を持つ人間と、経営実務を担う人間は必ずしも同一人物である必要はありません。しかしこの番組においては「私が経営します」という意志が前提なのです。
起業を考える人に問いたい一言があります。「あなたは夢を語っているのか、ビジネスを語っているのか」 この区別を、森脇健児さんの回は雄弁に示してくれています。
よくある質問(FAQ)

Q. 森脇健児さんが希望した1811万円の使い道は何だったのですか?
京都・祇園の町家を改装して演芸場(劇場)を作るための資金です。改装費や初期運営費として計画されていましたが、具体的な収支計画については虎たちから「経営の視点が弱い」と厳しく指摘されました。
Q. 吉田栄作さんが「ぬるい」と発言したのはどういう意味ですか?
森脇さんのプレゼン内容が、ビジネスとして成立させるための計画として不十分(甘い)だという意味です。吉田さん自身「彼がやろうとしていることは僕の夢のどっかでもある」と語りながらも、番組MCとしての立場から厳しく評価しました。旧友だからこそ言える正直な言葉でした。
Q. 高橋がなり社長が言った「タニマチ」とはどういう意味ですか?
「タニマチ」とは、芸人や力士などを私的に金銭支援するパトロンのことです。高橋社長は、森脇さんが本当に必要としているのは経営パートナーではなくタニマチ的支援者であり、「私が経営します」という意志を前提とするこの番組の趣旨とは合わないと指摘しました。
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