起業初期に使える補助金はどう探す? 小規模事業者持続化補助金から始める調べ方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業の準備を進めていると、「返さなくていいお金があるらしい」と補助金の話を耳にします。個人の起業準備でまず見るべきは、国の「ミラサポplus」、地元の商工会議所・商工会、お住まいの自治体の創業支援ページの3か所で、ここを回れば今の自分に使える補助金はだいたい把握できます。ただし補助金は年度ごとに中身が変わり、後払いというクセもあるので、「あるはずだから後で」と後回しにすると取り逃すこともあります。

私はこれまで、勤めながら起業準備に入る人を数多く見てきましたが、補助金でつまずく人にはある共通点があります。自分が何をやるかを決めていない段階で、「お金がもらえるかどうか」から入ってしまうことです。この順番を逆にするだけで、探し方の景色は大きく変わります。

ポイント 起業のお金は「返す」と「返さない」に分ける

返さないお金と返すお金、その仕組みの根本的な違い

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起業のときに使えるお金は、大きく「返さなくていいお金」と「返すお金」に分かれます。補助金と助成金は返さなくていいお金、日本政策金融公庫などの創業融資は返すお金です。この違いを最初に押さえておくと、探し方も使いどころも整理しやすくなります。

補助金と助成金は、原則として返済の必要がありません。そのぶん審査があったり、要件が細かく決まっていたりします。一方の融資は返す前提のかわりに、まとまった元手を早く用意できるのが強みです。

種類 返済 主な特徴
補助金 不要 経済産業省・自治体が中心。審査があり、採択されるとは限らない。後払い
助成金 不要 厚生労働省が中心。雇用に関するものが多く、要件を満たせば原則受け取れる
融資 必要 日本政策金融公庫など。返す前提だが、まとまった元手を早く用意できる

ポイント 補助金と助成金は仕組みがまるごと違う

管轄・採択方法・金額でわかれる2つの制度

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「補助金」と「助成金」は似た言葉ですが、管轄も採択の仕組みも別ものです。ざっくり言えば、補助金は経済産業省や自治体、助成金は厚生労働省が中心になります。

いちばん大きな違いは、採択のされ方です。補助金は予算の枠が決まっているため、申請しても採択されないことがあります。助成金は要件を満たしていれば原則として受け取れる、という性格の制度です。だから「補助金は当てにしすぎない、助成金は要件を先に確認する」と覚えておくと迷いません。

起業準備の段階でよく関わるのは、経済産業省・自治体系の補助金のほうです。助成金は従業員を雇ったあとに関係してくる場面が多いので、ひとり起業の入口では、まず補助金から見ていきます。

ポイント 起業初期の補助金は「国・地元・自治体」の3か所で探す

国・地元・自治体でわかれる探し方の3つの入口

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使える補助金を効率よく見つけるには、探す場所を国・地元・自治体の3つに分けると早いです。それぞれ得意な情報が違います。

国の情報は、経済産業省・中小企業庁が運営する「ミラサポplus」が入口になります。中小機構の「J-Net21」もつながっていて、全国の補助金や支援制度をまとめて検索できます。まずはここで、どんな制度があるのかの全体像をつかみます。

次に、地元の商工会議所・商工会です。あとで触れる小規模事業者持続化補助金は、申請の際に商工会議所や商工会の確認書類が必要になります。窓口で相談にも乗ってくれるので、地域の担当者と早めに顔をつないでおくと動きやすくなります。

そして、お住まいの自治体の創業支援ページです。市区町村や都道府県は、独自の創業補助金や家賃補助を用意していることがあります。よろず支援拠点は全国47都道府県に置かれていて、無料で相談できます。地域差が大きい部分なので、自分の住む場所の制度は必ず確認しておきます。

  • 国の全体像:
    ミラサポplusとJ-Net21で使える補助金をざっと把握
  • 地元の相談先:
    商工会議所・商工会に足を運び、担当者と顔つなぎ
  • 自治体の独自制度:
    市区町村・都道府県の創業支援ページとよろず支援拠点の確認

ポイント 小規模事業者持続化補助金は「開業してから」の制度

持続化補助金の金額と、見落としやすい対象条件

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補助金の代表格が、小規模事業者持続化補助金です。販路開拓、つまりチラシやホームページ、展示会などにかかった費用の一部を補助してくれる制度です。

中小企業庁が所管するこの補助金の一般型・通常枠は、第20回公募でも補助上限50万円、補助率は原則3分の2です。対象として認められる経費を50万円支出した場合、計算上の補助額は約33万円ですが、採択、対象経費の確認、実績報告を経て額が確定します。

起業初期の販路開拓を後押ししてくれる、心強い制度です。ただ、使ううえで必ず押さえておきたい注意点があります。

一般型・通常枠は、申請時点で公募要領に定める小規模事業者として事業を営んでいることが前提で、創業予定者の段階では申請できません。つまり「起業する前に補助金でお金を用意してから始めよう」という使い方はできません。開業届の提出だけで自動的に対象になるわけではなく、事業実態や所在地などの要件も確認します。

  • 後払いを忘れる:
    先に自分で全額を支払い、あとから補助を受け取る仕組み
  • 採択を前提に計画:
    予算枠があり、申請しても採択されない可能性
  • 開業前に使おうとする:
    一般型・通常枠は事業を営む小規模事業者向けで、創業予定者は対象外

ポイント 補助金は「方向が固まってから」使う道具

先にお金を探すと迷子になる理由と正しい順番

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ここまで探し方を見てきましたが、私が現場でいちばんお伝えしたいのは順番の話です。補助金から入ると、たいてい迷子になります。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、本当のリスクとは危険な状態に気づかないままでいることだと述べています。誰に何を売るのかが決まっていないうちに制度だけ探しても、自分にどれが合うのかを判断できません。補助金は、事業の方向が固まってから使う道具です。先に方向を決め、そのうえで「その一歩を後押ししてくれる制度はあるか」と探す。この順番だと、探し方に無駄がなくなります。

数字を並べてから動き出した本間さんの例

起業18フォーラムの会員に、40代で勤めながら起業準備を進めていた本間さんという方がいました。子育て中で、これから増えていく教育費に、漠然とした不安を抱えていました。

本間さんが動き出したきっかけは、派手な出来事ではありません。家計簿アプリで直近3年の月ごとの収支を並べてみたことでした。貯蓄率が少しずつ下がり続けているのが数字で見え、「このまま時間で稼ぐ働き方だけでは苦しい」と受け止めたそうです。

最初は本間さんも、補助金のサイトをいくつも見て回りました。ですが、自分が何をやるのかが決まっていないので、どの制度が使えるのか判断できません。手が止まったところで、起業18フォーラムの勉強会に参加しました。

勉強会で本間さんが持ち帰ったのは、補助金より先に「誰の、どんな困りごとを引き受けるか」を決めるという順番でした。そこから自分の経験を棚卸しし、まずは身近な人向けの手伝いを一件ずつ受けるところから始めました。方向が見えてきたあとで、地元の商工会議所に相談しました。開業して事業を始めてから、持続化補助金の申請にたどり着きました。

いまは月に数件の依頼が続くようになり、リピートで声をかけてくれる相手も出てきました。「補助金がもらえるかどうか」ではなく「続けられる仕事かどうか」で考えられるようになったのが、本人にとって一番の変化でした。補助金は、その歩みを一歩後押ししてくれる道具として、あとから役に立ちました。

ポイント 起業前の今日にできること

制度探しに入る前に踏んでおきたい最初の一歩

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補助金の情報は年度で変わりますし、地域によって使える制度もかなり違います。だからこそ、いきなり申請を目指すのではなく、まずは自分の地域に何があるかを知るところから始めます。

お住まいの自治体の創業支援メニュー一覧に、自治体のサイトで一度ざっと目を通してみてください。「創業支援」と地域名を合わせて検索すれば、たいてい見つかります。使える制度は地域差が大きいので、自分の足元を知っておくだけで、あとの動きが変わります。

ここで大事なのは、全部を理解しようとしないことです。今日は「どんな制度があるのか」という見出しを確認するだけで構いません。

やることが少し具体的になってきたら、商工会議所やよろず支援拠点の無料相談を使ってみます。窓口の人に「今こういう準備をしている」と一言伝えるだけで、次に見るべき制度を教えてもらえます。

起業準備で補助金は使えますか? 採択率データから見えてくる現実はどうなっている?
● 質問 起業準備に補助金が使えると聞いて気になっているのですが、補助金で本当に起業準備は進むのでしょうか?採

ポイント よくある質問

補助金についてよく寄せられる4つの疑問と答え

起業前質問集

Q.補助金と助成金、起業準備ではどちらから調べればいいですか?

ひとりで起業準備をしている段階では、まず補助金から見ておくと入りやすいです。助成金は従業員の雇用に関わるものが多く、人を雇う場面になってから関係してきます。国のミラサポplusで全体像をつかみ、気になる制度が出てきたら要件を細かく確認してください。

Q.補助金をもらってから起業するのは無理なのでしょうか?

「もらってから始める」という使い方は、基本的にできないと考えておくほうが安全です。小規模事業者持続化補助金のように、開業していない創業予定者は対象外という制度が多いからです。さらに補助金は後払いなので、先に自分で費用を払う必要があります。開業して事業を動かしながら、販路開拓の後押しとして使うのが現実的です。

Q.補助金の情報は、どのくらいの頻度で確認すればいいですか?

制度は年度ごとに内容や公募の時期が変わるので、準備を始めたら数か月に一度は見ておくと安心です。ミラサポplusや自治体の創業支援ページはこまめに更新されます。気になる制度があれば、公募期間を逃さないよう、商工会議所の担当者に相談しておくとよいです。

Q.補助金を当てにして起業の計画を立てても大丈夫ですか?

補助金は予算の枠が決まっていて、申請しても採択されないことがあります。当てにして資金計画を組むと、採択されなかったときに立ち行かなくなります。補助金はあくまで「もらえたら助かる上乗せ」と考え、自己資金や売上で回る計画を先に作っておいてください。

ポイント 補助金より先に決めること

起業初期の補助金の探し方と順番、この記事の要点

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起業初期の補助金は、国のミラサポplus、地元の商工会議所、自治体の創業支援ページの3か所を回れば、今の自分に使えるものが見えてきます。補助金と助成金の違い、そして後払いや採択という補助金のクセも、先に知っておくと慌てずにすみます。

そのうえで一番大切なのは順番です。お金の探し方より先に、誰に何を届けるのかという事業の方向を決める。方向が決まれば、補助金はその一歩を後押ししてくれる道具になります。

補助金は、慌てて今日申請を決めるものではありません。仕組みと順番を理解してから使っても、遅すぎることはありません。まずは自分の地域の創業支援ページを開き、どんな支援があるのかを調べるところから始めてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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