記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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2024年、日本語教師に国家資格ができました。「登録日本語教員」という肩書きが生まれ、これで道が開けると考えて養成講座に通い始めた人も少なくありません。
認定日本語教育機関で認定対象の課程を担当する教員には、原則として登録日本語教員の資格が求められます。ただし、一定の要件を満たす現職者などが2029年3月末まで教えられる経過措置があります(Cルートのみ2033年3月末まで)。学校に雇われずに食べていくなら、オンラインで特定の学習者に絞って個人契約を積むほうが、勤めを続けながら無理なく始められます。
「資格を取ったのに、待っているのは非常勤の掛け持ちなのか」。同じ不安を、これまで何人もの相談者から聞いてきました。その不安には、はっきりした根拠があります。
資格を取っても「非常勤の壁」が残る理由

文部科学省が公表した2024年度の日本語教育実態調査によると、国内の日本語教師は50,309人です。このうちボランティアが53.1%、非常勤が33.3%、常勤が13.6%でした。
この調査では、教師の職務別構成でボランティアと非常勤の比率が高く、常勤は13.6%でした。独立を考えるときは、資格だけでなく、どの働き方で収入を作るかも分けて考える必要があります。
ただ、学ぶ側の裾野は広がっています。同じ調査では、日本語学習者は294,198人でした。厚生労働省の外国人雇用状況によると、日本で働く外国人は2025年10月末で2,571,037人となり、過去最多を更新しています。職場で日本語学習を必要とする人もいる一方、教える側にはボランティアや非常勤が多いのが実情です。
- 資格さえ取れば道が開ける:
登録日本語教員は認定機関の認定対象課程で原則必要だが、独立の収入を約束するものではない - 常勤の空きを待てばいい:
常勤は13.6%にとどまり、非常勤やボランティアの比率が高い - 学校に所属しないと生徒は集まらない:
オンラインなら学校を通さず、特定の学習者と直接つながって教えられる
「学校に雇われる」と「個人契約」は別の道

日本語教師で独立するとき、道は大きく2つに分かれます。学校に雇われて教えるか、学習者や企業と個人で契約して教えるか。この違いを分けて見ておくと、自分の進む先が決めやすくなります。
| 見るところ | 学校に雇われる | 個人契約で教える |
|---|---|---|
| 教える場所 | 認定日本語教育機関 | オンラインや企業の現場 |
| 資格の位置づけ | 認定対象課程では原則必要(経過措置は2029年3月末まで、Cルートのみ2033年3月末まで) | 法律上は必須ではない |
| 収入の決まり方 | コマ単価・時間給 | 自分で値づけできる |
| 始めやすさ | 採用枠の空きが要る | 1件から試せる |
| 相手の選び方 | 学校が割り当てる | 教えたい相手を選べる |
どちらが上ということはありません。ただ、少しずつ試せるのは、明らかに個人契約のほうです。認定日本語教育機関の認定対象課程と違い、そこに該当しないオンラインの個人指導や企業内研修では、この制度により登録日本語教員が必須とされているわけではありません。ただし、契約先が資格や経験の条件を設ける場合はあります。
小さな世界で一番になる絞り込み

個人契約でうまくいく人に共通するのは、教える相手を一点に定めていることです。「外国人に日本語を」ではなく、「誰の、どの場面の日本語か」まで狭めていきます。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、小さな世界で一番になるという考え方を紹介しています。日本一を目指すのではなく、東京一、千代田区一と絞り込んでいく。日本語教師なら、たとえば「IT企業で働くベトナム人エンジニアが、会議で発言するための日本語」まで狭めると、そこにはもう競い合う相手がほとんどいません。
あなたが教えたい相手を、まず一人だけ思い浮かべてみてください。顔が浮かぶくらい具体的な相手が決まると、教える中身は自然と絞れていきます。
- 技能実習生の生活日本語:
来日直後に必要な、買い物や役所での受け答えだけに特化する - 外国人エンジニアの会議日本語:
専門用語ではなく、意見を言う・確認する言い回しに絞る - 留学生の面接日本語:
アルバイトや進学の面接で困る場面を集中して練習する
勤めながら個人契約を1件だけ試す

起業18フォーラムの会員に、戸倉さん(40代・メーカー勤務)という方がいます。日本語を教えることに関心があり、勤めながら養成講座に通っていました。ただ、日本語学校の求人を見るほど、気持ちは沈んでいったそうです。常勤の募集はごくわずかで、多くが非常勤の時間給だったからです。
転機は、その求人票の読み方を変えたことでした。学校の募集ではなく一般企業の求人に目を移すと、「外国人社員の日本語指導をお願いできる人」を個別に探している中小企業がいくつもありました。採用してもなお現場が困っている理由に、自分の出番が隠れていたのです。
とはいえ、気づいただけでは商品になりません。戸倉さんは起業18フォーラムの勉強会で、「誰の、どの場面の日本語か」を絞る設計を学び直しました。あれもこれも教えようとしていた最初の案を捨て、IT系の中小企業で働く外国人エンジニアが会議で発言するための日本語、という一点に狭めていきました。
最初の1社が決まってから、教わった社員の紹介で契約先は3社に増えました。今も勤めを続けながら、月に数件の企業レッスンを担当しています。派手な独立ではありません。それでも、コマ単価を待つ非常勤とは違い、値づけも相手も自分で決められる働き方に変わりました。
資格は独立の免許ではなく信頼の裏づけ

ここまで読んで、「では資格は要らないのか」と思われたかもしれません。そうではありません。登録日本語教員は、認定機関の認定対象課程で原則必要となる資格であり、個人契約でも学びを示す材料になります。
ただ、それは独立して稼ぐことを保証する免許ではない、という距離感を持っておくと、道の選び方を誤りません。資格を取るという目標と、食べていくという目標を、いったん別々に置いてみることが大切です。
まず今日できるのは、自分の資格や学びが「どの働き方でどう通用するか」を、一か所だけ確かめることです。文部科学省の登録日本語教員のページで、資格が求められる場面とそうでない場面を、一度読み分けてみてください。

よくある質問

Q.登録日本語教員の資格がないと、日本語は教えられないのでしょうか?
いいえ、そうとは限りません。認定日本語教育機関の認定対象課程では原則として資格が必要ですが、2029年3月末まで(Cルートのみ2033年3月末まで)一定の経過措置があります。また、その課程に該当しないオンラインの個人指導や企業内研修では、この制度上の必須資格ではありません。ただし、契約先が独自の条件を設ける場合があります。
Q.会社に勤めながらでも、日本語教師として個人契約を始められますか?
始められます。オンラインの個人レッスンや企業向けの研修は、平日の夜や休日に合わせやすい働き方です。まずは1件だけ引き受けて、続けられるかどうかを確かめるところからで十分です。
Q.英会話講師と日本語教師では、独立のしやすさに違いはありますか?
教える相手が異なります。日本語教師は、留学生や技能実習生、日本で働く外国人社員が相手です。2024年度の国内の日本語学習者は約29.4万人でした。相手の場面を絞りやすいぶん、個人契約の切り口を見つけやすいのが特徴です。
Q.経過措置の期限までに資格を取れないと、独立は難しくなりますか?
認定機関で教える道を選ぶなら、多くのルートで経過措置が終わる2029年3月末(Cルートのみ2033年3月末)までの動きは意識しておきたいところです。ただ、個人契約でオンラインや企業向けに教える道は、その期限に縛られません。焦って資格だけを急ぐより、誰に教えたいかを先に決めるほうが近道になることもあります。
今日からの一歩

大きな独立宣言は要りません。学校に雇われて教える道も、学習者や企業と個人で契約して教える道も、どちらも立派な選択です。どちらを選ぶにしても、出発点は「自分は誰の役に立てるか」を知ることにあります。
日本語を教えてきた経験は、学校の外に出したときにこそ、本当の値段がつきます。資格の勉強を重ねてきたあなたなら、怖がらずに一度、自分の看板で教えてみてもいい頃です。
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