相模原市で起業するなら? 支援制度・産業構造から逆算するロードマップ

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

相模原で起業を始めたいと考えている方が、いま増えています。リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)が橋本駅付近に予定されており、市の産業構造も製造業・ロボット産業を軸に変化のただ中にあるからです。横浜・川崎の沿岸都市とは異なり、相模原は内陸の政令指定都市で、職住近接で動きやすい地の利があります。

とはいえ、いきなり「会社を辞めて店を出そう」は危険です。地元で起業した方の多くは、会社員のままスタートして、相模原市の支援制度を活用しながら少しずつ軸を作っています。この記事では、相模原で起業するメリット・支援制度・向いているビジネスアイデア・会員さんの実例・最初の一歩までを順に整理します。

ポイント 相模原で起業するメリット・地域ならではの強み

内陸政令市・リニア新駅・職住近接の3つの追い風

相模原

相模原市は神奈川県北部に位置する人口約72万人の政令指定都市です。横浜・川崎が沿岸の国際都市・工業都市として知られるのに対し、相模原は内陸型の住宅都市と製造業集積が共存する独自のポジションにあります。八王子・町田・橋本といった近隣エリアとも経済圏が重なり、東京都心への通勤者が多いのも特徴です。

相模原市の発表によると、製造業の従業者数は3万8,567人で第2次産業全体では全従業者の20.6%を占め、事業所数は1,836に上ります(相模原市「令和7年度 産業の概要」)。金属製品・一般機械の組立型業種と素材系業種の集積度が高く、BtoBの法人取引が日常的に動いている地盤です。さらに、JR東海による中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」が橋本駅付近に計画されており、駅周辺の街区開発が同時並行で進んでいます。

相模原で起業する際の3つの強み
  • 製造業集積を背景にしたBtoB需要と試作受注の機会
  • 橋本駅周辺のリニア関連再開発による事業者向け需要
  • 東京都心通勤も可能な職住近接の生活コスト

相模原に住みながら都心の会社に通っている方にとっては、通勤時間こそが朝晩30分の学習枠を確保しやすい時間帯です。地元に根を張りつつ、東京都心の顧客にもオンラインで届ける二刀流が現実的に組めるのが、横浜・川崎にはない相模原ならではの強みです。

ポイント 相模原市の創業支援制度・補助金・インキュベーター

特定創業支援・産業振興財団・融資制度の3層

相模原

相模原で起業するときに知っておきたい制度は大きく3層に分かれます。それぞれ「いつ」「何に」使うものか、特徴を整理します。

①特定創業支援等事業(市の認定制度)

相模原市では「創業支援等事業計画」を国から認定を受けて運営しており、要件を満たした方には特定創業支援等事業による証明書が発行されます。証明書を受けると、相模原市創業支援融資制度の利用者負担率が0.7%以内から0.5%以内に引き下げられ、株式会社・合同会社の設立時の登録免許税が資本金の0.7%から0.35%に減免されます(相模原市公式)。資金調達と法人化のコストが下がる仕組みです。

②相模原市産業振興財団の創業セミナー

公益財団法人 相模原市産業振興財団が運営する「創業実践セミナー」は、全6回セットで参加費3,000円(税込)と良心的な価格設定です。相模原市内在住・在勤・在学の方、または相模原市内での創業を考えている方が対象になります。さがみはら起業・創業サポートNaviという公式情報サイトに最新の開催情報が集約されています。

③創業支援融資制度

市と金融機関が協力して提供する制度融資で、市が利子の一部を負担することで比較的低利な融資が受けられます。前述の特定創業支援等事業を併用すると、利率がさらに下がる仕組みです。

  • 特定創業支援等事業の証明書取得(融資・登録免許税の優遇)
  • 産業振興財団の創業実践セミナー受講(全6回・3,000円)
  • さがみはらロボット導入支援センターによる成長産業情報
  • 相模原市創業支援融資制度(市と金融機関の協調融資)

ただし、これらの制度は「何を売るか」の方向性が固まったあとに使う道具です。融資もセミナーも、商品の輪郭がぼんやりしたまま申請しても得られる効果は限定的です。先に方向性を整え、仮の商品で小さく売ってみてから、その実績を持って制度の窓口に行くのが賢い順序になります。

ポイント 相模原で起業に向いているビジネスアイデア

製造業×サービス・リニア周辺需要・地域密着の3軸

相模原

相模原市の産業構造を踏まえると、起業のアイデアはおおむね3つの方向に集約されます。「製造業×サービス系」「リニア・橋本駅周辺需要」「地域密着の生活サービス」です。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に出てくる「3つのチェック」は、地域で起業ネタを選ぶときに役立ちます。①一人で始められるか/②一人で続けられるか/③大きなお金がかからないか、の3つすべてに当てはまる事業から始めるのが一年目の鉄則です。逆に1つでも欠けると、初年度に資金繰りや時間の壁にぶつかりやすくなります。

①製造業×サービス系

相模原は製造業の従業者数が3万人を大きく超え、卸売・小売・飲食を除けば最大の従業者集積分野です。会社員時代に培った業務効率化・QC手法・CAD図面読解・購買知識といった経験は、町工場や中小製造業の現場改善コンサルとして外販できます。スタート時は知人経由で1社の小さな改善案件を引き受けるところから始めるのが現実的です。

②リニア・橋本駅周辺需要

中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の開業時期は現時点では未定ですが、橋本駅周辺では街区開発がすでに進行しています。建設関係者向けの会議室・ワークスペース予約代行、開業景観の写真・動画コンテンツ販売、新駅ビジネスホテル滞在者向けのオンラインコンシェルジュなど、「インフラ完成より前から動いておくと先行者になれる」テーマが集まる地域です。

③地域密着の生活サービス

相模原は子育て世代の流入が続くベッドタウン要素も持ちます。共働き家庭向けの家事代行マッチング、シニア向けスマホ家庭教師、英語のオンライン家庭教師など、地元から「会社員のまま」始めやすい業態が選べます。在宅ワークと両立しながらお試しで動かせるのも魅力です。

  • 初期投資100万円以上の店舗開業や物販在庫の積み上げ
  • 製造機械・設備の自社所有(先に外注で回す)
  • 未経験ジャンルでのいきなりのフランチャイズ加盟

NGリストにあるような「いきなりお金がかかる起業」は、相模原に限らず初年度の撤退率を押し上げる要因です。「3つのチェック」のいずれかが欠けるアイデアは、最初の1年は見送るのが安全策になります

ポイント 会員さんの体験談|相模原で動き出したAさんの事例

電機メーカー設計職から町工場改善支援への展開

相模原

起業18フォーラムの会員Aさんは、40代後半で相模原市中央区在住の電機メーカー設計職の男性です。妻と中学生の子どもの3人暮らしで、会社員月収45万円。会社員を続けながら何かを始めたい、という相談でした。

Aさんがまず取り組んだのは、朝晩30分の時間枠を確保することでした。出勤前30分でビジネスの基礎学習、夜30分で動画教材の視聴と振り返りメモの記録という生活リズムです。4ヶ月目に、知人が経営する町田市の小さな町工場から「設計図面のレビューを月1回お願いしたい」と声がかかり、無償で2回手伝ったあと月2万円の顧問契約に切り替わりました。これが最初の1円目になります。

9ヶ月目に相模原商工会議所で配布されていたチラシをきっかけに、起業18フォーラムへ会員登録。13ヶ月目には相模原市産業振興財団の創業実践セミナーを受講し、特定創業支援等事業の証明書も取得しました。18ヶ月目に合同会社を設立し、登録免許税の減免を受けて法人化。月次収入は22万円に届き、現在は会社員を継続しながら土日の現場訪問と平日夜のオンライン相談を組み合わせる体制で稼働しています

Aさんが意識していたのは、いきなり大きく始めずに「町工場1社」「月2万円」から実績を積み上げる順序です。会社員給与という安定収入を抱えながら、相模原という地の利と自分の業務知識を組み合わせて軸を太くしていく。これが地方政令市での会社員起業の王道パターンになります。

ポイント 相模原で起業を始めるなら、まず起業18フォーラムから

基礎学習が先・補助金や支援施設は方向確定後

ここまでで、相模原市の地の利・支援制度・向いているアイデア・会員さんの事例を見てきました。最後に、これから動き出す方への順序の提案です。

相模原市産業振興財団のセミナーや特定創業支援等事業は強力な制度ですが、入り口の段階で行政窓口に直行しても、起業の全体像が頭に入っていないと得られる情報を活かしきれません。多くの方は「制度の使い方」を学びに行くつもりが、結局は概論レベルの話を聞いて帰ってくるパターンに陥りがちです。

そこで現実的な順序は、まず起業18フォーラムの動画やセミナーで会社員起業の全体像と基礎を学び、自分の方向性が見えてきたら相模原市の補助金・支援施設・融資制度を道具として使う、という流れです。最初の3ヶ月は「何を売るか」を絞る学習に投資し、その上で4ヶ月目以降に相模原市産業振興財団へ相談に行くと、相談内容が一気に具体的になります

会社員のまま起業するのは本当にできますか?
● 質問 会社員のまま起業するという方法に興味があるのですが、本当にそれで起業できるのか半信半疑です。 周りを

地元の地の利を活かしながら、会社を辞めずに無理のない歩幅で進む。相模原は、その歩み方が現実的に成立する政令市です。今日できる最初の一歩は、朝晩30分の時間枠を1週間確保し、自分が「人より少しだけ詳しいテーマ」を紙に書き出してみることから始まります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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