【マネーの虎】ロンドン忍者寿司「スシニンジャ」武藤さんの結末!1560万円の挑戦とノーマネーの理由

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

今回のマネ虎レポートは、ロンドンのビジネス街で忍者スタイルの寿司移動販売を始めたいという37歳男性のお話です。

ロンドン

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令和版も大人気、今も色褪せることのない伝説「マネーの虎」。ビジネスを始めたい志願者が、成功社長(マネーの虎)5人を前に事業計画をプレゼンし、出資、または融資を勝ち取る番組です。コワモテ社長がブチ切れるシーンに、毎回ドキドキしっぱなしでした。

虎

<虎のプロフィール(当時)>
  • 堀之内九一郎(55歳当時)年商67億円
    株式会社生活創庫 代表取締役社長
  • 加藤和也(32歳当時)
    株式会社ひばりプロダクション 社長
  • 川原ひろし(42歳当時)
    株式会社なんでんかんでん 社長
  • 臼井由妃(45歳当時)年商23億
    株式会社健康プラザコーワ 代表取締役
  • 岩井良明(43歳当時)年商10億
    株式会社モノリス 代表取締役

ちなみに、当回には出演されていませんが、南原会長です。虎ノ門・株式会社LUFTホールディングス事務所にて。

南原竜樹

ポイント 志願者・武藤さんの登場

ロンドンで寿司を!という夢を持つ37歳

今回の志願者は武藤さん、37歳の男性です。

武藤さん「1560万円を希望いたします

吉田栄作さん「1560万円ですね。そのお金の使い道は?」

武藤さん「はい。ロンドンのビジネス街で、寿司の移動販売を始めたいと思います」

希望額は1560万円。ロンドンのビジネス街で忍者スタイルの寿司移動販売を展開するというプランです。

加藤社長から「なぜロンドンのビジネス街での宅配・移動販売を始めようと思ったのか」と経緯を問われると、武藤さんはこう語り始めます。

武藤さん「私、ロンドンに留学しておりました経験がございます。日本に帰りましたのが98年なんですけれども、その当時、回転寿司はまだブレイクという感じではなかったんですけれども、その後、日本に戻りまして、非常にロンドンでお寿司が流行っているというのを、現地の友達からも聞きますし、こちらのメディアでも拝見しまして。であれば、私が日本人として日本の寿司をもう一度ロンドンに持ち込みたいと考えました」

加藤社長「なるほど。これから参入するわけだ。いわゆるもうブレイクしているわけですよね。それでも参入したい?」

武藤さん「ただ、ランチタイムをメインに考えています。ランチタイムにビジネスマンへ移動販売でお届けしたり、オフィスの近くで販売したりするといったことが、今まではなかったんです」

「後発でも、ランチタイムの移動販売という切り口なら勝機がある」という読みのようです。

ポイント 「寿司忍者」の全貌プレゼン

忍者コスチュームで寿司を届けに行く

寿司のメニューについて聞かれた武藤さんは、こう答えます。

臼井社長「寿司のメニューはどんなものですか?」

武藤さん「内容はお店でも売っているもの、スーパーでも売っているお寿司と同じものでいきます。特に今回、主眼にしているのはメニューじゃないんです。日本を代表する寿司を持っていくために、ひとつのキャラクターを使ってみたいと思っています」

そこで登場したのが、斬新なコンセプトです。武藤さんは資料を取り出し説明しました。

武藤さん「えっとまぁこれはイメージなんですけれども……寿司忍者というコンセプトで、お寿司を届けに行く、また車で販売するというものです。人が忍者の格好をするということにしています。(車のデザインも)こういう人目を引く車がどんどん走り回る、ということです」

説明を聞いた虎から、思わず「面白いかもしれない」という声も出ます。ところが、すぐさま矛盾点への質問が飛び出しました。

岩井社長「なんか、武藤さんとお寿司が僕の中で全然合致しないんだけど…… 武藤さんが握るわけじゃないんだ?」

武藤さん「えっと、私がまあ握るというか……寿司ロボットが握ります

臼井社長「寿司ロボット!? じゃあ、中に人がいるんじゃないんだ(笑)」

川原社長「魚を切ったり、玉子作ったり、そういったものはどうなるの?」

武藤さん「修行は必要だと思っています。準備期間を2ヶ月ほどと思っておりまして」

臼井社長「2ヶ月? 2ヶ月でいいんですか?」

武藤さん「はい」

その言葉に加藤社長が怒りを見せます。

「なんかちょっと薄っぺらいんですよ、話を聞いていると。「2ヶ月で大丈夫です」、俺にはとても言えない。僕には言えない。1560万円でビジネスさせてくださいっていう時に言う言葉じゃない」

準備期間わずか2ヶ月。寿司ロボット任せのシャリ。それで1560万円を求めている。虎たちの目が厳しくなっていきます。

忍者

ポイント 職歴を問われる武藤さん

23歳から37歳まで、15年間の空白

岩井社長が、武藤さんの年齢を確認します。

岩井社長「今、何歳?」

武藤さん「37です」

岩井社長「今までの、学校卒業してからの職歴をちょっと教えていただけますか?」

武藤さん「わかりました。23歳で日本の大学(教育学部)を出ました。それから就職しまして、これはキャラクターグッズやコンサートグッズの企画・制作・販売をする会社でした。ここに1年いたんですけれども、1年で辞めさせていただきまして。そのときやめた理由が、海外に行きたいという気持ちがありまして、イギリスに渡りました。まずアートの専門学校に入りました。それで大学に入るためです。それからハートフォードという大学に3年間いまして。戻りまして1年間広告関連の仕事をして、次の2年間インターネット関連の仕事をお手伝いしました」

この時点で武藤さんは37歳。大学を出て15年が経っています。

ポイント 「インターナショナルな人間」とは何か?

虎たちの質問に答えられない武藤さん

堀之内社長が尋ねます。

堀之内社長「そのきっかけは何ですか?」

武藤さん「イギリスへ寿司を売りたいというきっかけですか? インターナショナルな人間になりたかったんです。その時、日本のアニメーションが海外で高く評価されていて、その監督さんがおっしゃっていたのが『インターナショナルになるためには、ナショナルでなければいけない』ということで、すごく感銘を受けまして。私もイギリスで生活していて、日本人であるということをポジティブに捉えることができた。であれば、日本人として日本の寿司をイギリスに持ち込みたいと」

加藤社長「ごめんね、いいですか? イギリスで何を得て帰ってきたんですか? そして何をしたかったんですか?

武藤さん「目的は…… インターナショナルな……」

岩井社長「だからわかんないんだろう、それじゃあ」

川原社長「まぁ語学でしょ、言葉がしゃべれるようになる、それぐらいだよね」

別の虎からも追及が続きます。

堀之内社長「武藤さんの言うインターナショナルな人間って、どんな人間ですか?

武藤さん「えーと、どこに出しても1人で生活していける、どの国に行っても生活していける人間、ということです」

加藤社長「それがインターナショナルな人間だという認識なんですか?」

武藤さん「はい。インターナショナルな人間になるためのツールとして(イギリス留学が)必要だったと考えています」

川原社長「で、なんでアート学校に行ったの?」

武藤さん「ものを作るということがやりたかったんです」

ここで、岩井社長が鋭い観察を口にします。

「あのね、クリエイティブって言いかけて、それをわざわざ『物づくり』と変えた。クリエイティブという言葉を言った後に『物づくり』に変えたあなたの顔が、僕たちのことをバカにしているんだよ」

言葉の置き換えの一瞬にさえ、虎は敏感に反応します。武藤さんはひとことも言い返せません。

ポイント 「ハートが伝わってパチっとくる」虎の体験談

英語ができなくても商売はできる理由

堀之内社長が、自分の経験を語り始めます。

堀之内社長「私もアメリカに会社があってね。商売やってるんですよ。で、英語もそんなに達者じゃありません。せいぜい『This is a pen』ぐらいです。通訳もいます。通訳はね、確かに言葉通り話をする。しかし心を通じさせることができない商売の。私は大事な時にはね、通訳を止めて、デタラメな内容かもしれません、でも話す。ハートが伝わってね、パチっといくんですよ。これがね、言葉なんです」

岩井社長は、武藤さんに向けてこう言い放ちます。

「それが君に全然ないんだよな。何にもない。何にもないから伝わるものがない。こんな奴とだけは絶対組みたくないと思っちゃうんだよね、悪いけど」

スタジオに重い空気が漂います。武藤さんはうつむくしかありません。

ポイント 暗転から急展開! 一人の虎が声を上げる

「他の人達は嫌ってるかもしれん、ぼくは好き」

全員が否定的な雰囲気になりかけたそのとき、番組のナレーションが入ります。

「しかし、このあと一人の虎が強力に後押しをする」

一人の虎が、にこりとしながら言いました。

川原社長「他の人達はあのさ、武藤さんのことを嫌ってるかもしれないけど…… ぼくは好き

少し場の空気が和みます。そして川原社長は、武藤さんが持参していたバッグを指さしました。

川原社長「そこの中には何が入ってるの?」

武藤さん「この中には、忍者の装束と…… あとエプロンが入っています」

川原社長「見たいよ、どんな格好でやるのよ」

武藤さん「はい」

武藤さんがバッグから黒い忍者衣装を取り出した瞬間、スタジオが少しざわめきます。

しかし岩井社長が、衣装を見ながら思わずつぶやきました。

「(忍者の格好で)やってる想像はつくんだけど…… 1年とか2年、武藤さんがこれを着続けてる想像が、僕にはできないんだよ」

武藤さんの継続力を信じることができなかったのです。

ロンドン

ポイント 「心が無いのさ」… 1年で会社を辞めた理由を問われる

自分本意の生き方が暴かれていく

岩井社長が話を続けます。

岩井社長「大学を卒業して1年で会社辞めたんですよね。その理由は何ですか?」

武藤さん「私は裏方でした。バンドであるとか、ミュージシャンの商品を作って、コンサートの前後で大声を出して売る、という仕事でした。メインじゃないんですよね。そこに来ているお客さんのメインは歌っている人たちであって、自分がメインではない。主役に回りたい、と思って1年でやめました」

岩井社長「でもね、その会社を新卒で入ったんでしょ。そういう仕事だってことはわかったわけですよね?」

武藤さん「企画制作という部分ではやりがいはありました」

岩井社長「あのさ、1年で辞めたことが全て悪いとは思わないんだけど…… そういうことを自分本意に考えて、僕はこういうことをやろうと思ったのにできなかった、もっとこんなことがしたい、だから一年でやめた。そこにもう、心が無いのさ。全然

武藤さん「まったくおっしゃる通りだと思います。それが今までの私の悪いところです」

岩井社長「長すぎる! もう37だろう。大学出てから15年経ってそれに気づいちゃ遅いんじゃないか」

武藤さん「遅いからこそ、この場を借りてやり直しをしたいと」

岩井社長「やり直したら治るんかな……」

武藤さん「やり直さざるを得ないんです。私は今まで本当に自分の夢を求めて探してたんです。これは僕のやりたいことじゃない、これはやりたくない…… と。でも探しているうちはダメだと思った。やりたいことというのは自分で作って、初めてそれへの執着心になり、エネルギーが湧いてくると……」

岩井社長「違う。全然違う。大反省してないんだって。今までの15年をダメだったから変えるって言ったらそうじゃない。君は人の心がわからないんだよ

武藤さん「人の心が……」

岩井社長「わからないから15年このままきたんだよ」

臼井社長「頭の良い人っていうのは学校の成績じゃないんですよね。いい大学を出てるからと言ってビジネスができるとは限らない。ハートなんですよ。日本的な発想から言えば、心がないと嫌なの」

15年分の批判が、一気に武藤さんに降り注ぎます。

ポイント 各虎の投資判断はノーマネーへ

夢を叶えてあげたいけれど、出せない

臼井社長が、しんみりとした表情でこう言いました。

臼井社長「どんなに未熟であっても、さらけ出してくれて心が見えてきたら、一緒にやりましょうよと言えるんです。夢を叶えてあげたいと思いましたけれども…… 申し訳ありません、出せません

川原社長「本当に寿司でやりたかったら、まず明日からでも寿司屋で働いて、そして3年でも勉強して、それから考える。残念ですけれど、ノーマネー」

唯一の理解者だった川原社長からも出資を断られた武藤さん。他の虎全員も首を縦に振らず、立会人の吉田栄作から宣告が下ります。

「この時点で、皆さんからの投資の合計額があなたの希望額に達しなかったので、今回はノーマネーでフィニッシュです」

出資総額0円。ノーマネーでフィニッシュとなりました。

武藤さん「本当にいろいろ貴重なご意見を頂きましてありがとうございます。人生やり直しさせていただきたい。このことを、私の人生の貴重な体験にしていきたいと思います。どうもありがとうございました」

何度も「ありがとう」を繰り返しながら、武藤さんはスタジオを後にしました。

ロンドン

ポイント まとめ:「心が無い」ならビジネスは成立しない

起業支援の視点から見えてくる教訓

寿司忍者というコンセプト自体は、おもしろいと思います。忍者は海外でも認知度が高く、インパクトのあるビジュアルで人目を引けます。ロンドンのビジネス街でランチ需要を取り込むという狙いも的外れではありません。実際に虎も「面白いかもしれない」と口にしていました。

しかし虎たちが問題にしたのは、プランの中身よりも武藤さん自身の姿勢でした。

準備期間わずか2ヶ月。寿司の修行経験なし。「クリエイティブ」を「物づくり」に言い換えた瞬間の表情。イギリス留学の目的を聞かれて答えられない。企画会社を1年で辞めた理由が「自分がメインでないから」。

これらの積み重ねが、虎たちに「この人は相手のことを考えていない」という印象を与えました。ビジネスで最も大切なのは、顧客・パートナー・投資家の気持ちを理解することです。それが伝わらなければ、どんなに奇抜なアイデアも空振りに終わります。

「インターナショナルな人間」というフレーズも印象的でした。しかし「どこに行っても1人で生活できる人間」という定義は、あくまで自分中心の視点です。ビジネスで求められるのは「どんな相手とも信頼関係を築けること」であって、それは自分の生存スキルとは違います。

人の心がわからないから15年このままきたという虎の言葉は、武藤さん個人への批判を超えた、普遍的なビジネスへの警告です。

ポイント よくある質問(FAQ)

Q. 武藤さんのビジネスプランのコンセプトは?
A. 「寿司忍者」というコンセプトで、忍者の格好をしたスタッフがロンドンのビジネス街でランチタイムに寿司を移動販売するというものです。寿司はロボットが担当し、キャラクターの独自性で勝負する戦略でした。

Q. 虎たちはなぜ出資しなかったのか?
A. ビジネスアイデアよりも、武藤さん本人への不信感が大きな理由でした。「人の心がわからない」「何にもないから伝わるものがない」と指摘されたように、相手の立場に立てない姿勢が最後まで変わりませんでした。準備期間わずか2ヶ月、修行経験なしという点も大きなマイナスでした。

Q. 応援していた虎もいたのか?
A. はい。川原社長が「他の人達は嫌ってるかもしれないけど、ぼくは好き」と言い、武藤さんのコンセプトを評価しようとしました。しかし最終的には出資を断念しています。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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