記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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絵を描くのが好きで、LINEスタンプを作ってみたい。まずは小さく自分の商品を世に出してみたい。そう考えて登録画面まで進んだものの、「これって本当に稼げるのかな」と手が止まっている方は少なくありません。私のところにも、イラストや手書き文字が得意な会員さんから同じ相談がよく届きます。
今日は、スタンプを「作って並べて終わり」にしないための考え方を整理します。
LINEスタンプを起業準備の入口として見る

まず公式の仕組みを正しく押さえる
LINEスタンプは、LINE Creators Marketに登録すれば一人で出品できます。LINE Creators Marketの公式情報によると、クリエイターへの分配金はアプリ内課金の手数料を差し引いた金額のおよそ半分、販売価格に対して実質35%という水準です(2020年3月以降)。審査は1〜3営業日で結果が通知され、通れば自動的に販売が始まります。まずは公式の分配の仕組みを正しく押さえてから、商品の広げ方を考えてみてください。
数字だけ見ると、120円のスタンプが1個売れて手元に残るのは数十円です。だからこそ、スタンプ1種類の売上を当てにするのではなく、その先にどう商品を広げていくかをはじめに決めておくことが大事になります。
多くの人がスタンプを「並べて待つ」で止まる

出品まではたどり着く方が多いのですが、そこから先で止まってしまうケースをよく見かけます。スタンプを登録し、販売ページが公開され、あとは売れるのを待つ。この「並べて待つ」状態のまま数か月が過ぎ、ダウンロードが伸びずにあきらめてしまう。これがいちばん多い止まり方です。
スタンプを作る力と、それを必要な人に届ける力は別ものです。作る側に集中していると、届ける動きが後回しになりがちです。私のこれまでの起業支援の経験でも、ここでつまずく方がとても多いと感じています。
- 並べて待つだけ:
出品して販売ページが公開された時点で満足し、その後の告知をしない - 本数で勝負しようとする:
反応を確かめないまま新作スタンプだけを増やし続ける - 次の商品を考えていない:
スタンプ単体の売上だけを見て、広げ方の設計がない
商品の4つのカタチでスタンプの次を描く

ここで役に立つのが、拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』で紹介している商品の4つのカタチという考え方です。商品は大きく分けて、モノを渡す、やってあげる、教える、場や機会を提供する、の4つのかたちに整理できます。
LINEスタンプは、このうち「モノを渡す」にあたります。完成したデータを買ってもらう商品です。スタンプ作りで止まる方は、この1つ目のカタチだけで戦おうとしているのです。
同じイラストの腕を別のカタチに移す
スタンプを描けるということは、イラストを形にする力をすでに持っているということです。その力は、ほかの3つのカタチにそのまま移せます。
- やってあげる:
店舗や個人事業主のためにオリジナルのLINEスタンプや似顔絵を制作する受注の仕事 - 教える:
スタンプの作り方・申請の手順・審査の通し方を初心者に教える講座やマニュアル - 場や機会:
スタンプ作りに挑戦したい人が集まって作業や相談をする小さなオンラインの集まり
スタンプという1つ目の商品を入口に、やってあげる・教える・場へと広げていくと、収入の柱が一本ではなくなります。
会員さんの実例:並べて待つから自分から告知へ

メーカーで事務職をしている真鍋さん(仮名・40代)は、趣味で続けていた手書きイラストを生かして、最初の年にLINEスタンプを3種類作りました。出品はできたものの、ダウンロードは月に数件で止まっていました。本人いわく、新しいスタンプを描き足すことばかり考えていて、それを誰にどう知らせるかは何も決めていなかったそうです。
転機になったのは、起業18フォーラムの会員同士の交流のなかで、別の会員さんから「自分で告知していますか」と聞かれたことでした。並べて待っているだけだったと気づいた真鍋さんは、まず勤め先以外の知人やSNSのつながりに「こういうスタンプを作りました」と自分から伝え始めました。
並べて待つのをやめ、身近な人へ自分から声をかけるところから動かしてみてください。
そこから、知人が経営する小さなカフェ向けにオリジナルスタンプを作る仕事が1件入りました。「やってあげる」のカタチへ最初の一歩を踏み出した瞬間です。その後は同じように個人店からの制作依頼が続き、スタンプ単体ではなく受注の仕事として収入が立つようになりました。1年が過ぎたころには、月に5万円ほどの収入になっていました。スタンプを並べて待っていた時期と比べると、ずいぶん景色が変わったと話しています。
最初の一歩を踏み出すために

LINEヤフーの公表によると、LINEの国内月間利用者数は1億人に達しています(2025年12月末時点・自社調べ)。それだけ多くの人が毎日触れている場だからこそ、スタンプは自分の作ったものを世に出す入口として向いています。
商品づくり全体の地図としては、中小企業庁『2025年版 中小企業白書・小規模企業白書』(2025年4月閣議決定)でも、コストを削る戦略は限界を迎え、付加価値を高める経営への転換が必要だと指摘されています。スタンプという1点で価格を競うより、自分の腕を別のカタチに広げて付加価値を作る発想は、この方向とも重なります。
ただ、出口を1つ目のカタチだけに固定しないことが肝心です。スタンプを描けるなら、その腕で誰かのために作る、作り方を教える、挑戦する人の場をつくる。広げ方はいくつもあります。
いきなり全部を始める必要はありません。まずはスタンプを1種類でも出品して、それを身近な人に自分から知らせてみる。今日できることは、出品した自分の商品を一人に伝えてみるだけで十分です。そこから次のカタチが見えてきます。

ひとつのカタチで止まらず、自分の腕を別のかたちにも移していく。その視点を持てれば、スタンプ作りはきっと起業準備の確かな第一歩になります。
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