記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
週末に始めたサービスで、少しずつお客さんは来てくれます。ただ、みんな一度きりで終わってしまい、二度目がありません。
毎週、新しいお客さんを探し続けていて、正直しんどいです。もっと広告を出して新規を増やすしかないのでしょうか?

● 回答
新規を増やすしかない、と思い込んでいませんか。実はその発想が、しんどさの入口になっています。
足りないのは新規の数ではなく、一度来た人がもう一度来る理由です。ここを取り違えると、集客の努力がすべて使い捨てになります。毎週ゼロから人を探す状態は、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。注ぐ量を増やす前に、まず穴をふさぐほうが早いのです。
「客が足りない」の中身をほどく
相談を受けていて気づくのは、単発で終わる方ほど「集客できていない」と言うことです。でも数えてみると、来店やお申し込み自体は毎週きちんとあります。足りていないのは入口ではなく、その先の帰り道です。
私はこれまで延べ6万人の起業準備の相談と向き合ってきましたが、初受注のあとで止まる人には、ある共通点があります。商品を「一回売り切り」で設計していて、二回目に来てもらう場面を最初から用意していないのです。だから、いいお客さんが来ても、その場かぎりですれ違って終わります。
新規2割・リピート8割で考える
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』では、売上を伸ばす人の顧客の内訳を紹介しています。新しいお客さんが2割、もう一度来てくれる人が8割、という比率です。単発で疲れている人は、この比率がちょうど逆になっています。
順番も大事です。リピートの仕組みは、事業が大きくなってから足すものだと思われがちですが、逆です。再来の導線は、いちばん先に作っておくものになります。入口だけ広げて出口を作らないと、通り抜けるお客さんが増えるだけで、手元には何も残りません。
- 売って終わりの設計:
一回のサービスで完結し、次に会う口実がない - 連絡先の未取得:
来てくれた人と、あとで連絡を取る手段を持っていない - 新規だけを数える癖:
今週の新しい客数ばかり見て、戻ってきた人の数を数えていない
羽鳥さんが比率を逆にした話
起業18フォーラムの会員さんで、羽鳥さん(仮名・40代前半・女性)という方がいます。手仕事のサービスを週末に始めて、お客さんは来るのに二度目がない、とこぼしていました。始めたころは自己流で、来た人に丁寧に対応して、あとは次のお客さんをSNSで探す。それをひたすら繰り返していたそうです。
転機は、フォーラムの勉強会で一人の会員さんから言われた一言でした。「その人、なんで二回目に来ないか、聞いてみたことありますか」。羽鳥さんは、はっとしたと言います。来なかった理由を、想像で「値段かな、場所かな」と決めつけていて、本人に確かめたことが一度もなかったのです。
そこで羽鳥さんは、過去に一度だけ来てくれた人に、売り込みではなく近況を尋ねる連絡をしてみました。すると「また来たかったけど、次いつやっているか分からなかった」という声がいくつも返ってきたそうです。来ない理由は、満足度でも価格でもなく、単に次の案内が届いていなかっただけでした。
それからは、来てくれた人に次回の予定を必ず一言添え、月に一度だけ近況を送る形に変えました。半年後には、売上の中身が新規中心から、戻ってきてくれる人が過半を占める形に入れ替わっていきました。本業の月収の半分ほどを、この事業から得られるようになっています。新しい人を探す時間はむしろ減ったのに、収入は増えたという逆転が起きたのです。
面白いのは、常連さんが増えると紹介が動き出したことです。何度も足を運んでくれる人が、勝手に友人を連れてきてくれる。羽鳥さんは値段を上げたわけでも広告を増やしたわけでもなく、一度きりで終わっていた関係を、続く関係に置き換えただけでした。
単発が普通、だからこそ再来を作る
日本政策金融公庫が2026年2月に公表した「2025年度 起業と起業意識に関する調査」では、週の労働時間が短いパートタイム起業家の月商は、50万円未満が91.5%を占めていました。週末や夜だけで始める人の大半は、小さな規模から出発しているということです。
だからこそ、少ないお客さんを一度きりで手放していると、いつまでも規模が上がりません。今日できることは、過去に一度だけ来てくれた人を1人思い出し、その人に売り込みではなく近況を尋ねる連絡をしてみることです。「次いつやっているか分からなかった」という声が返ってきたら、それが再来導線の欠けていた一本目になります。
広告を足す前に、すでに一度あなたを選んでくれた人がいます。その人ともう一度会う理由を作るほうが、見知らぬ誰かを新しく振り向かせるより、ずっと近い距離にあります。
よくある質問

Q.一度買えば十分な商品でも、リピートは作れますか?
作れます。同じ商品を二度売る必要はありません。買ったあとに困る場面を先回りして、次の商品や相談の窓口を用意しておけば、関係は続きます。売り切りに見える商品ほど、買ったあとのフォローが空いていることが多いです。
Q.連絡先を聞くのが売り込みっぽくて気が引けます。どうすれば?
次の案内を送りたいから、と目的を正直に伝えれば十分です。来てくれた人の多くは、次にいつやっているか分からないだけで、案内が届けば喜んで戻ってきます。聞かれて嫌がる人は、もともと戻らない人なので、気にしなくて大丈夫です。

お客さんが続かないのは、あなたの腕のせいでも集客不足でもありません。続く仕組みを、まだ作っていないだけです。その一本を今日引いておけば、来週から探す相手の数はきっと減っていきます。
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