起業準備が止まる会社員に共通する失敗パターン|3つの原因と処方箋

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業準備が止まる会社員には、26年間の支援現場で見てきた中で共通するパターンが3つあります。才能の問題でも、時間の問題でも、センスの問題でもありません。設計の問題です。

中小企業庁の「2024年版中小企業白書」によると、2022年度の開業率は3.9%、廃業率は3.3%でした。この数字を見て「起業は難しい」と感じる会社員は多いですが、廃業した企業の多くに共通しているのは「市場が小さすぎた」「資金管理が甘かった」よりも手前の問題、すなわち設計段階でのズレです。

起業準備を始めた会社員が途中で止まるとき、同じ構造が繰り返されています。

ポイント 失敗パターン①:顧客像が「全員」になっている

顧客を絞らないと誰にも刺さらない構造

会社員

公的機関の起業セミナーに行っている方で、「全然うまくいかない」と相談にくる方の8割以上が、このパターンに当てはまっています。

「働きたい女性のためのキャリアコーチング」「忙しい社会人向け英語レッスン」「健康が気になる方への食事アドバイス」。これらはすべて、対象が広すぎて誰にも刺さりません。

「対象を広くすれば、多くの人に届く」という感覚は逆です。対象が広いほど、誰も「自分のことだ」と感じません。

51歳・IT系会社員(プロジェクトマネージャー)のBさんは、転職や独立を10年間考え続けながら公的機関の起業セミナーや相談を利用していました。月収52万円と単身赴任という状況の中、起業18フォーラムに参加したのは49歳のときです。最初に設計した起業準備の活動は「ITコンサルタント」でした。対象顧客は「IT導入を検討している企業」という設定でした。

起業18でのやり方に沿って、「ITコンサルタント」を「中小製造業向けのExcel業務効率化支援」に絞り直したとき、Bさんが転機を迎えました。Bさんの本業の現場には、製造業のクライアントが多く、Excelの属人化で困っているという具体的な課題を肌で知っていました。

顧客像を絞るための問いかけ

  • 「その活動で一番助けてあげたいのは、どんな状況にある、何歳くらいの人か?」
  • 「今すぐその人の名前と顔が思い浮かぶか?」
  • 「その人は今、何に困っていて、どんな言葉で検索しているか?」

顧客像が一人の顔で浮かぶようになったとき、発信も提案もまったく変わります。Bさんは顧客像を絞り直した後、11ヶ月目に最初の受注が入り、継続取引へと発展しました。

ポイント 失敗パターン②:「準備が完成してから動く」という設計

完成を待つほど動き出しが遅れる構造

会社員

「もう少し勉強してから」「資格を取ってから」「ホームページが完成してから」。起業準備が止まっている会社員が最も多く口にするフレーズです。

この設計の何が問題かというと、「準備の完成」が永遠に来ない構造になっているからです。勉強すれば「まだ足りない」という感覚が出てきます。資格を取れば「次の資格が必要」と思います。ホームページを作れば「もっと改善が必要」と感じます。

著書『会社で働きながら6カ月で起業する』(ダイヤモンド社)の中で、「25点→50点」という考え方を提示しています。完璧な商品やサービスを目指して100点になってから出すのではなく、20~25点前後の状態で実際の顧客に届けて反応を見ることで、初めて「本当に必要な改善点」がわかります。

「準備が完成してから動く」という設計は、顧客不在の改善ループに入る設計です。50点で出して、顧客の反応で70点に磨く。これが起業準備の正しい設計です。

  • ホームページは最初なくていい(名前と連絡先があれば十分)
  • 資格は後から取ればいい(先に顧客の反応を見ることが先決)
  • 「完璧な準備」が完成する前に、まず1人の顧客と話す

起業準備は「準備してから動く」ではなく、「動きながら準備する」という設計に変えることで、最初の収益が出るタイミングが半年以上早まります。

ポイント 失敗パターン③:「収益化」より先に「ブランディング」を考える

ブランドより先に収益の設計が必要な理由

50代

「まずSNSでブランドを作ってから」「フォロワーを集めてから」「認知を広げてから」。いずれも、起業準備で止まる会社員に非常に多い設計ミスです。

ブランディングや認知拡大は、すでに収益の基本設計が固まっている人が「さらに広げるための手段」です。収益がゼロの段階でSNSのフォロワーを増やすことに時間を使っても、フォロワーが増えても収益につながらないという状況が続きます。なぜなら、「誰に何を提供し、いくらで買ってもらうか」という設計が未完成のまま発信しても、受け取る側が「何をお願いしていいかわからない」のです。

収益設計の確認3点(ブランディングの前に整えること)

  • 誰に:顧客が一人の顔で浮かぶレベルまで絞れているか
  • 何を:具体的なサービス内容・所要時間・提供方法が決まっているか
  • いくらで:金額が決まっていて、実際に口頭でその金額を言えるか

この3点が整っていない状態でSNSや発信を始めても、認知が広がるだけで収益につながりません。逆に、この3点が整った状態で知人10人に話すだけで、最初の収益が生まれることは珍しくありません。

ポイント まとめ:設計を直せば、すぐ動き出せる

起業設計の失敗パターンと修正の方向性

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中小企業庁の2024年版中小企業白書が示す廃業の実態は、「起業は難しい」というメッセージではありません。設計段階でのズレを早く修正した事業ほど、長く継続できるというデータとして読むべきです。

3つの失敗パターンと修正の方向

  • ①顧客像が全員→ 一人の顔が浮かぶまで絞る
  • ②準備が完成してから→ 50点で出して動きながら磨く
  • ③ブランディングが先→ 収益設計(誰に・何を・いくらで)を先に整える

起業設計で詰まっているなら、才能不足を疑う前に、この3パターンに当てはまっていないかを確認してみてください。修正は、今日からでもできます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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