記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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本を何冊も読み、セミナーの案内が届くたびに申し込み、SNSで同業らしき発信者を片っ端からフォローしたものの、机の上に積み上がるのは情報ばかりで、最初の一歩がまだ出ていない。そんな状態に、心当たりはないでしょうか。
情報収集が止まらなくなる一番の原因は、量の多さではなく、SNS・本・有料セミナーという性質の違う3つの窓口を同時に開けたままにしていることにあります。窓口を1つに絞り、読み切る期限を先に決めるだけで、集める段階から動く段階へ進めます。
この記事では、情報源ごとの向き不向きと、SNS・本・有料セミナーをどんな順番で使えばよいかの判断軸を整理します。
情報だけが増えて足が止まる理由

情報を集めている間は、頭の中で「前に進んでいる感覚」だけが膨らんでいきます。
しかし実際に手を動かした回数を数えてみると、ゼロのままということが少なくありません。
中小企業庁の2020年版中小企業白書では、起業に関心を持つ人・起業の準備を進める人・実際に起業する人のいずれもが減少傾向にあると指摘されています。関心を持つだけの段階から、実際の準備や行動へつなげられている人はさらに少ないということです。
問題は情報の量そのものではなく、SNS・本・有料セミナーの3つを同時に開いたまま、どれか1つに絞る優先順位も期限も決めていないことです。
SNSは今この瞬間の空気を知るのに向いていますが、断片的で体系立った知識にはなりにくい媒体です。本は逆に、腰を据えて全体像を学べる一方、目の前の疑問にピンポイントでは答えてくれません。有料セミナーは講師に直接質問できますが、費用と時間がかかるぶん、疑問がぼんやりしたまま参加すると「聞いただけ」で終わりがちです。
梶原さんが1年かけて気づいたこと

住宅設備の卸売会社で営業事務を担当する梶原さん(仮名・30代後半)は、起業準備を始めてからおよそ1年、本を読み、セミナーの案内が届くたびに申し込み、SNSで同業らしきアカウントを日々チェックする生活を送っていました。
ある夜、去年つけていたノートを整理していた梶原さんは、1年前の同じ月に書いた「今年こそ動き出す」という一文を見つけてしまいます。
1年経っても、書いてある内容も、実際の行動も、何も変わっていなかったのです。
気づきをそのままにせず、梶原さんは起業18フォーラムの勉強会に参加し、そこで「情報を集める窓口は、疑問の具体度で選んでいい」という考え方を教わりました。疑問がまだ漠然としているうちはSNSと本で足り、疑問が1点に絞れてから初めて有料の場を使う、という順番です。
勉強会のあと、梶原さんはSNSのフォローを大幅に減らし、読みかけだった本を1冊だけ選んで最後まで読み切りました。
勉強会から8ヶ月目には、迷いながら眺めるだけだった案件のうち1件を、実際に見積もりまで進められるようになっていました。この絞り込みの考え方は、30代でも50代でも変わりません。
SNS・本・有料セミナーで向いている場面の違い

SNS・本・有料セミナーは、同じ「情報収集」という言葉でくくられがちですが、向いている場面はまったく別物です。役割の違いを先に押さえておくと、窓口を選ぶときに迷いにくくなります。
- SNS:
最新動向の把握に向く一方、体系的な学習には不向きな情報源 - 本:
全体像の把握に向く一方、自分固有の疑問には答えにくい情報源 - 有料セミナー:
個別質問に向く一方、疑問を具体化してから使うべき情報源
3つを同時に追いかけると、それぞれの良さを打ち消し合ってしまいます。今の自分の疑問が漠然としているのか、一点に絞れているのかを先に見極めることが、窓口を選ぶ最初の判断材料になります。
情報収集を「ステージ0」として区切る

2017年に刊行された拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、起業準備を「好きなことを見つける」「強みにする」「発信する」「起業して成功させる」という4つの段階に分けて進める考え方を紹介しています。
同書では、起業のアイデアは外部の情報を集め続けるだけでは見つからず、自分の内面にある「好きなこと」や過去の経験を掘り起こすところから生まれるという考え方を紹介しています。情報収集そのものは否定されていませんが、そこで足を止めたままでは次の段階には進めません。問題は、その情報収集に「ここまで」という区切りがないまま続いてしまうことです。
この4段階の手前に、情報収集そのものを「ステージ0」として置き、期限を区切ってしまうのが実践的です。
「本を1冊読み終えるまで」「セミナーに1回参加するまで」のように、終わりの条件を先に決めておきます。区切り方の基準はシンプルで、疑問がまだ漠然としているうちはSNSと本で足りますが、疑問が「これさえ分かれば決められる」というところまで絞れたら、そこから初めて有料のセミナーや専門家への相談に進みます。
順番を逆にして、疑問が固まる前に高い費用の場へ飛び込むと、聞きたいことがぼやけたまま終わってしまいます。
今週から情報源を1つに絞る進め方

やり方は難しくありません。今使っているSNS・本・有料セミナーの候補を紙に並べ、今の自分の疑問に一番近いものを1つだけ選びます。残りは「今週は使わない」と決めるだけで十分です。
セミナーに参加する場合は、当日までに「これだけは持ち帰る」という疑問を1つだけ書き出しておくと、質問がぶれません。
本を選んだ場合も同じで、途中で他の本に目移りせず、1冊を最後まで読み切ることを優先します。
情報源を1つに絞ることは、情報を減らすことではありません。
同じ情報を、より深く使い切る作業だと考えてください。
この絞り込みを1週間だけ試してみると、これまで漠然としていた疑問の輪郭が、少しずつはっきりしてくるはずです。

よくある質問

Q.情報収集はSNS・本・有料セミナーのどれから始めればいいですか?
費用のかからないSNSと本から始めて十分です。手元の疑問が漠然としているうちに有料の場へ進むと、聞きたいことが定まらないまま時間だけが過ぎてしまいます。
Q.情報収集にかける期間の目安はどれくらいですか?
拙著で紹介している4段階の手前に、情報収集を「ステージ0」として1~2か月程度で区切ってしまうのが目安です。区切りを決めないまま続けると、次の段階に進むタイミングを自分で見失います。
Q.有料セミナーや専門家への相談に申し込むタイミングの見極め方は?
「これさえ分かれば決められる」という疑問が1つに絞れた時が申し込みどきです。疑問が複数あるうちに参加すると、話を聞いても持ち帰れる答えが散らばってしまいます。
Q.情報ばかり集めてしまう自分を責めるべきですか?
責める必要はありません。情報収集そのものは起業準備の土台であり、問題は量ではなく区切りがないことだけです。窓口を絞って期限を決めれば、同じ熱心さがそのまま行動力に変わります。
今日からできる情報源の絞り方

今日決めることは1つだけです。今使っているSNS・本・有料セミナーのうち、これから1週間はどれか1つだけを続けると決めてください。複数を同時に追いかけるより、1つを最後まで使い切るほうが、疑問の輪郭は早くはっきりします。
情報を集めすぎてしまうのは、それだけ真剣に自分の起業準備と向き合っている証拠です。窓口を絞り、期限を区切るというひと手間を加えるだけで、その熱心さはそのまま前に進む力に変わります。
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