記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「起業すると70%は失敗する」という話を聞いたことがあるかもしれません。会社員の立場でそれを耳にすれば、二の足を踏むのは当然のことです。
でも少し待ってください。その数字の根拠を確かめたことはありますか? 実は、公的機関が発表しているデータは、一般に流布している「70%廃業説」とはまるで異なる内容を示しています。
この記事では、中小企業白書と帝国データバンクのデータをもとに、廃業率の正しい読み方をお伝えします。そして、数字を正しく理解したうえで、それでも「起業は怖い」と感じる本当の理由と、続けている人たちの共通点についても一緒に考えていきましょう。
「70%廃業」という数字の出所を調べてみた

「起業すると数年以内に70%が廃業する」という言説は、インターネット上に広く出回っています。ところが、この数字の一次出典を辿ろうとすると、どこにも明確な根拠が見当たりません。
中小企業庁が発行する「中小企業白書2017年版」によると、起業後5年の生存率は81.7%、10年後でも66.5%という数字が示されています。つまり、「5年以内に70%超が廃業する」というデータは存在せず、実際には5年後でも約8割が事業を続けているのです。
さらに帝国データバンクが2024年に発表したデータでは、廃業した企業のうち51.1%が「黒字廃業」であることが明らかになっています。廃業=失敗という図式は、そもそも成立しないのです。
- 「中小企業白書2017年版」:5年後生存率81.7%、10年後66.5%
- 帝国データバンク2024年:廃業企業の51.1%が黒字廃業
- 「70%廃業説」の公的一次データは存在しない
廃業の半数以上は「失敗」ではなく「選択」です。後継者不在・生活環境の変化・別の仕事への転換など、さまざまな理由で自ら事業を閉じた経営者が含まれています。
「廃業」のほとんどは失敗ではない

廃業という言葉には、どこかネガティブなイメージがつきまといます。しかし実態はそれほど単純ではありません。
帝国データバンクの調査では、廃業理由の上位に「事業の将来性への不安」「経営者の高齢化・健康問題」「後継者不足」が挙げられています。会社員が起業準備をしながら「途中で事情が変わって別の道を選んだ」ケースも、統計上は廃業にカウントされます。
- 廃業=倒産ではない(倒産は全廃業の数%未満)
- 自分の意志で閉じる「自主廃業」が大多数
- 黒字のまま事業を閉じるケースが廃業の過半数
「失敗が怖い」という不安の正体は、廃業率への恐怖というよりも、「周囲にどう見られるか」という評価不安であることが多いのです。この2つを切り離して考えるだけで、起業への向き合い方がかなり変わります。
3年間、廃業率が怖くて動けなかった田村さんの話

田村さん(仮名・43歳)は、東京都内のIT企業でプロジェクトマネージャーを務めるかたわら、長年「中小企業向けのシステム導入支援」での独立を夢見ていました。
スタート時の状況は月収42万円。転職歴もなく、安定した基盤がありましたが、その分「失うものが多い」という感覚が強く、ネットで「起業 廃業率」を検索しては「やっぱり無理だ」と結論づける日々を3年間繰り返していました。
転機は起業18フォーラムで行った「強みの棚卸し」でした。田村さんは20年近いキャリアを振り返るなかで、自分が得意なのは「システムの選定」よりも「現場担当者への説明と合意形成」だと気づいたのです。
その翌月から「起業準備」として、週末に知人企業のDX相談に月1回乗るところからスタートしました。6ヶ月後には月3万円の継続収入が生まれ、12ヶ月目には月15万円を超えました。現在は18ヶ月目。本業と並行しながら、月収が1.4倍になっています。
田村さんが後に語っていた言葉が印象的です。「廃業率を調べていた3年間、自分は一度も起業していなかった。怖かったのは廃業ではなく、最初の一歩だったのです」。
起業は「成功か失敗か」ではなく「続けるかやめるかだけ」

著書のなかで私はこう書いています。「起業は成功か失敗かという二択ではありません。続けるかやめるか。それだけです」。
この言葉は、廃業率データを正しく理解するとよりリアルに響きます。統計上「廃業」とカウントされる人の多くは、ある時点で「やめる」という選択をした人です。逆にいえば、続けている人たちに「特別な才能」があるわけではないのです。
起業18フォーラムで6万人以上の相談に向き合ってきた経験から言えることがあります。続けている人に共通しているのは、次の3点です。
完璧な準備を求めるより、最初の小さな実験を動かすことを優先する。収入ゼロの期間も想定済みで、焦らず続けられる設計をしている。そして何より、ひとりのお客様を大切にすることを最初の目標に置いている。この三つです。
「ひとりのお客様をつかまえれば9割成功」。この言葉を胸に刻んで、まず最初の1人に価値を届けることだけを考えてみてください。廃業率の心配は、その先でも遅くはありません。
ただし、貯金を全部つぎ込んでの「一か八か」の独立は、会社員のうちから準備を積み重ねる方法とは根本的に異なります。前者はリスクが高く、後者はリスクを最小化できます。

起業をあきらめさえしなければ、道は必ず拓けます。今夜、中小企業庁のサイトで中小企業白書のデータを自分の目で確かめてみてください。数字が変わったとき、きっと視界も変わります。まずは「廃業率70%という根拠は何か」を調べることから始めてみましょう。
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