人脈ゼロから起業準備を始める|紹介がつながる関係の育て方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

技術や知識には自信がある。でも「売る」「人を集める」となると、急に足が止まる。起業準備を進める方から、この相談をよく受けます。やりたい気持ちはあるのに、頼める相手も、声をかけられる知り合いもいない。今のあなたは、たぶんそんな場所にいます。

ただ、最初に一つだけお伝えしたいことがあります。人脈は、起業準備を始める前にそろえておくものではありません。準備を進める過程で、紹介が紹介を呼ぶ形で少しずつ育っていくものです。今日は、知り合いが少ない状態から「紹介される人」になるまでの順番を、4つの段階で整理します。

ポイント 人脈は「集めるもの」ではなく「育つもの」

交流会で名刺を増やすより先に整えておきたい土台

人脈

人脈がないと感じると、多くの方がまず交流会やイベントに足を運びます。名刺を配り、連絡先を交換し、その数が増えると安心します。けれど、そこで得た関係から仕事につながることは、ほとんどありません。

理由はシンプルです。一度会って名刺を交換しただけの相手は、あなたが「何に詳しい誰なのか」を知らないままだからです。知らない人に、人は仕事を頼みません。本当に効くのは、数の多い弱いつながりではなく、あなたの仕事ぶりを少しでも知っている濃いつながりのほうです。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、起業準備で大切なのは特別な行動ではなく、毎日30分でも自分の知見を外に出し続けることだという見方を示しています。一回会って終わりの関係を増やすより、あなたという人を継続的に見てもらうほうが、信頼はゆっくり、けれど確かに積み上がります。

ポイント ステップ1:今ある縁を、濃さの順に思い出す

遠くを探す前に手元の縁を棚から下ろす作業

人脈

最初にやることは、新しい誰かを探すことではありません。これまでの仕事や生活で縁のあった人を、あなたへの理解が深い順に思い出すことです。前職の同僚、取引先の担当者、世話になった先輩。その人たちは、あなたの人柄や働きぶりを、すでにある程度知っています。

ここで大切なのは、いきなり売り込まないことです。買ってほしいという空気を出した瞬間に、近い相手ほど身構えて距離を取ります。まずは「今こういう準備をしている」と近況として伝え、相手の反応を見るところから始めます。

  • あなたが何を頑張ってきたかを、一緒に見てきた人
  • 近況を話したとき、否定せず面白がってくれそうな人
  • その人自身が、別の誰かをよく紹介している顔の広い人

とくに三つ目の「人をつなぐのが好きな相手」は、あとで紹介の連鎖を生む起点になりやすい人です。遠い人脈を探す前に、すでに手元にある縁を棚から下ろすことが先です。

ポイント ステップ2:知っていることを、毎日少しずつ外に出す

発信を通じて、向こうから見つけてもらう側に回る準備

人脈

縁を思い出したら、次は「見つけてもらう側」に回る準備です。今の仕事で当たり前にやっていることの中から、人が意外と知らない小さな知見を一つ選んで、短い文章にして外に出してみます。長文も毎日も要りません。朝か晩の30分で、一つ書けば十分です。

なぜこれが効くのか。発信を続けていると、思いがけない人から「それ、もう少し聞きたい」と反応が返ってくることがあります。自分では当たり前すぎて価値を感じていなかった知識が、別の誰かにとっては喉から手が出るほど欲しいものだったりします。この一週間、今の仕事で「これ、意外とみんな知らないな」と感じた知識を一つだけ、短い文章にして出してみてください。

ここで気をつけたいのが、周りの反応です。新しいことを始めると、必ず「会社員なのに大丈夫なの」と水を差す人が現れます。その声に揺さぶられると、せっかくの発信が止まります。応援してくれない人とは少し距離を置き、続けられる環境を自分で選ぶことも、準備のうちです。

ポイント ステップ3:紹介は「満足した一人」から連鎖する

数の多さより一人の満足が次の縁を運んでくる仕組み

人脈

起業18フォーラムにいた立花さん(仮名・40代後半・男性・電機メーカーの技術職・妻と高校生の子)は、人付き合いが得意なほうではなく、起業準備を始めた当初は「自分には紹介してくれる人脈なんてない」と感じていました。交流会で名刺を配ってみても、その場限りで終わり、誰の記憶にも残らない感覚があったそうです。

転機は、起業18フォーラムの勉強会で「無理に人に会いに行くより、続けて見てもらう接点を一つ持つほうがいい」と助言されたことでした。そこから立花さんは、勤め先で当たり前にやっている設備保全のちょっとした工夫を、週に二、三回、短い文章で発信し始めます。最初の反応はほとんどありませんでしたが、半年ほど続けた頃、以前の取引先の担当者が投稿に気づき「ずっと読んでいた」と連絡をくれました。

準備開始から10ヶ月目、その担当者から初めて有料の相談を受け、12ヶ月目を迎えた今では、発信を見続けてくれていた数人が折にふれて相談を寄せてくれる関係になっています。声をかけて回るのではなく、続けて発信する自分を相手が覚えていてくれる。立花さんが手に入れたのは、追いかけなくても向こうから思い出してもらえる、ゆるくて長い接点でした。数を追っていた頃には決して訪れなかった変化です。

  • 会いに行くより、続けて見てもらう接点を持つこと
  • 反応がなくても、発信の手を止めないこと
  • 覚えていてくれた一人からの相談を、起点にすること

ポイント ステップ4:紹介が回り出す前に知っておきたい数字

これまでの勤務経験そのものが信用の土台になる裏づけ

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人脈がないと焦る方に、一つ知っておいてほしい数字があります。日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査によると、開業した人の97.9パーセントが勤務経験を持ち、勤務年数の平均は20.8年にのぼります。さらに開業費用の中央値は580万円と、年々小さくなる傾向にあります。つまり、ほとんどの起業は、勤め先で積み上げてきた長い経験の延長線上で、小さく始まっています。

この数字が意味するのは、あなたが会社で積み上げてきた仕事ぶりや人間関係そのものが、起業準備における最初の信用の土台になるということです。ゼロから人脈を作るのではなく、これまで一緒に働いてきた人の中から、あなたを少しでも知っている一人を思い浮かべるところから始めてください。

お客さんから自然に紹介をもらえるようになるには何が必要ですか?
● 質問 起業してからSNSや広告で集客しようとしているのですが、なかなかお客さんが増えません。紹介で顧客を増

紹介は、数を集めようとすると遠ざかり、目の前の一人を満足させようとすると近づいてきます。順番さえ間違えなければ、知り合いが少ない今の状態は、何ら不利ではありません。私がこれまで見てきた限り、最初の縁が小さい人ほど、その後の関係は長く続いている印象があります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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