記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
ITエンジニアです。半年前から、中小企業向けに業務効率化の相談に乗る小さなサービスを始めました。友人2人が買ってくれて初売上は出たのですが、その後は知り合い以外に1件も売れません。SNSで告知しても反応はゼロです。
友人は付き合いで買ってくれただけで、商品に本当は価値がないのではと落ち込んでいます。身内以外のお客さまには、どうすれば売れるのでしょうか?

● 回答
「友人に売れた」と「他人に売れる」の間には、室内プールと海くらいの違いがあります。波のない場所で泳げた経験は無駄ではありませんが、海を泳ぐ練習は海でしかできません。あなたは今、ちょうどプールサイドから海を眺めている段階です。
まずお伝えしたいのは、落ち込む必要はないということです。友人への2件はお情けでも実力の証明でもなく、商品を他人に届く形へ直すための最初のテストデータです。データとして使い切れていないだけで、捨てる必要はまったくありません。
矢吹さんが9人に断られるまで
起業18フォーラムの会員さんに、IT系の開発職に就く30代の矢吹さん(仮名)がいます。矢吹さんも同じ場所でつまずきました。同僚と友人に業務改善のテンプレート集が売れて気をよくし、SNSと知人経由の紹介で9人に提案したものの、全員に断られたそうです。
断り文句はどれも丁寧でした。「よさそうだけど、今は要らないかな」。悪く言われるよりこたえた、と矢吹さんは振り返ります。商品を磨いたつもりが、磨くほど売れない。半年前のあなたとほとんど同じ状況です。
友人の1件と他人の1件は、買っている物が違う
何がまずかったのでしょうか。友人はあなたの人柄や努力を知ったうえで、半分は「あなた」を買っています。一方、他人は商品の説明文だけを見て、自分の困りごとが解決するかどうかだけを判断します。
友人相手では省略されていた「赤の他人への説明」こそが、実は商品の一部だったということです。商品力が低いのではなく、他人向けの説明と中身の絞り込みが、まだ一度も検証されていない状態だと捉えてください。
このとき、やりがちな勘違いが3つあります。
- 友人の1件をノーカウントにする:
何が響いて何が余計だったかを聞き出せる唯一の購入者を、恥ずかしさから放置してしまう - 同じ商品のまま告知だけ増やす:
中身を直さずに投稿の回数で解決しようとして、無反応の期間だけが延びていく - 数回の沈黙で「需要がない」と結論づける:
外れる前提を持っていないため、2〜3回の無反応で心が折れてしまう
9敗を先に予定へ入れてしまう
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』には、ビジネスの世界は「1勝9敗」ともいわれ、その1勝で過去の9敗を解消するのが醍醐味だという一節があります。他人への提案が9回外れるのは、実力不足の証拠ではなく、最初から織り込んでおく通常運転です。
これは個人の感覚論ではありません。中小企業庁の2024年版「小規模企業白書」でも、新規顧客や販路を開拓するうえでの課題として「開拓に必要な人材の不足」を挙げる事業者が4割を超えて最多でした。組織を持つ会社ですら、新しいお客さまの開拓には人手が足りないと苦労しています。
ひとりで始めたあなたの営業担当は、あなた1人だけです。だからこそ気合いではなく、打席の数で越えていきます。提案が断られるたびに、相手の断り文句を一言そのままメモへ残してください。9敗は、次の1勝の設計図になります。
最初の他人客が来るまで
矢吹さんの場合、変化のきっかけは、買ってくれた友人2人に送った感想アンケートでした。自由記述の欄に、こう書かれていたそうです。「正直、機能は半分で十分だった。それより最初の設定を代わりにやってほしかった」。
盛り込みすぎていたのは機能で、足りなかったのは手間の肩代わり。そこで矢吹さんは、テンプレートを半分に減らし、初期設定の代行を付けた最小プランを「お試し価格」として告知し直しました。検証のためのテスト販売です。
最初の月の申し込みは1件。それでも断り文句のメモと突き合わせて説明文を直し続け、7ヶ月目に、紹介ではなく検索経由の注文だけで初めて月3万円を超えました。金額より大きかったのは、「知らない人がお金を払ってくれた」という事実が自己不信を消してくれたことだと言います。
よくある質問
同じ段階の方から、よくいただく質問にお答えします。
Q.友人に買ってもらった後で感想を聞くのは、図々しくありませんか?
立派なアンケートを送る必要はありません。お礼に一言添えて、質問は1つだけに絞れば、相手の負担にもなりません。今夜、買ってくれた友人に「どこが一番役に立ったか」を1問だけ聞いてみてください。返ってきた言葉は、そのまま他人向けの説明文の材料になります。
Q.実績が友人2件しかありません。告知には何を書けばいいですか?
件数を書く必要はありません。他人が知りたいのは「何件売れたか」ではなく「自分の何がどう変わるか」です。友人2件の使われ方と変化を具体的に書けば、それは立派な実績紹介になります。完成度は20点でかまいません。出してから直すのが順番です。
知らない誰かに向けて告知文を1本、世に置いてみる。たったそれだけのことが、身内の壁の外側に立つ立派な第一歩になります。

今日できることは、商品が完成していなくてもテスト販売の告知を1つ出してみることだけで十分です。9敗のうちの1敗目を、早めに済ませてしまいましょう。
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