記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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勤めを続けながら起業準備を進めるとき、多くの方が最初の商品づくりで止まります。「人に出せる完成度になってから」と考えて、いつまでも世に出せないまま半年が過ぎてしまう。私のこれまでの起業支援の経験では、ここでつまずく方が本当に多いのです。
実は、最初に作るべきは「完璧な商品」ではなく「お試しの形」です。今日はその作り方を、順を追って整理していきます。
なぜ最初の商品は「お試しの形」でいいのか

最初から完成度の高い商品を目指すと、準備そのものが止まります。理由はシンプルで、完璧に整う瞬間は永遠に来ないからです。資料を作り込み、肩書きを増やし、相場を調べているうちに、肝心の「誰かに届ける」という一歩が後回しになります。
最初の商品は、売れる形になっていれば十分です。整っている必要はありません。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』でも、準備が完璧に整う瞬間は来ないという考え方を紹介しています。動きながら整えていくほうが、結果として早く形になります。
完成度は20点で出していい

ここで多くの方が「20点の商品なんて出せない」と感じます。気持ちはよくわかります。会社では8割の完成度でも上司に見せにくいものですから、それを商品にするとなれば、なおさら抵抗があります。
ただ、ここで言う20点は「手抜き」ではありません。相手の悩みに対して、自分なりの答えを一つ用意できている状態が20点です。体裁が整っていなくても、相手の役に立つ核がひとつあれば、それは試せる商品になります。完成度を上げる作業は、一人目のお客様の反応を見てからのほうがずっと正確に進みます。
- 体裁から作る:
ロゴやチラシの見た目を先に整えて中身が後回し - 機能を盛る:
あれもこれもと内容を増やして出せなくなる状態 - 相場に合わせる:
他人の完成品と比べて自分の試作を出せなくなる思考
これらは全部、出す前に止まってしまう典型のパターンです。完成度を上げる前に、まず「核がひとつあるか」を確認するほうが先です。
お試し商品を形にする3つの手順

お試し商品は、次の3つの手順で形になります。順番を守ると、迷いが減ります。
手順を一つずつ確認する
最初に「誰のどの悩みに答えるか」を一文で書きます。次に「その悩みに対して自分が出せる答え」を一つだけ選びます。最後に「相手が受け取れる小さな形」に落とし込みます。資料1枚でも、30分の相談でも、形は何でもかまいません。
- 悩みを一文で決める:
誰のどんな困りごとに答えるかを最初に言語化する - 答えを一つに絞る:
出せる答えを欲張らず一つだけ選んで核にする - 小さな形にする:
資料1枚や30分相談など相手が受け取れる単位に落とす
大切なのは、商品を完成させてから売るのではなく、小さく試しながら育てる順番です。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』では、売上ゼロから最初の一人を獲得する段階を、ほかの段階とは分けて考える必要があると整理しています。最初の一人に届けることと、たくさん売ることは、まったく別の作業だからです。
データで見る「小さく始める」の現実味

「小さく始める」と言われても、実際にはお金がかかるのではないかと不安になる方もいます。ここで一つ、公的な調査を見ておきます。
日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」(2024年11月公表)によると、開業費用が「250万円未満」と答えた人は20.1%を占めています。開業費用の中央値は580万円で、近年は少額化の傾向が続いています。
この数字が示すのは、お金をかけずに小さく始める人が一定数いるという事実です。そのぶん、勤めながら準備する人にとっても、いきなり大きな投資をしなくてよいという安心材料になります。最初のお試し商品なら、なおさら大きなお金は必要ありません。
実例:宮原さんが半年で一人目に届くまで

起業18フォーラム会員の宮原さん(仮名・40代後半・メーカーの品質管理職)は、勤めを続けながら起業準備を始めました。製造現場の改善ノウハウを商品にしたいと考えていたものの、最初の半年はほとんど動けずにいました。
宮原さんは当初、自己流で完璧な研修プログラムを作ろうとしていました。スライドを100枚以上用意し、資格まで取ろうとして、いつまでも世に出せなかったのです。準備すればするほど不安が増え、出すのが怖くなっていったと振り返っていました。
転機は、勉強会で「20点でいいから一人に試してもらう」という考え方に出会ったことでした。宮原さんはスライドを5枚に削り、知人の工場長に「30分だけ改善の相談に乗らせてほしい」と声をかけました。完璧な研修ではなく、小さなお試しの形に変えたのです。
その相談で、宮原さんは初めて手応えをつかみました。相手が本当に困っていたのは、宮原さんが用意していた内容とは別の点だったのです。完成品を作り込む前に試したからこそ、ずれに早く気づけました。
現在、宮原さんは勤めを続けながら、月数件の改善相談を受け、月5万円ほどの収入を得ています。最初の一人に届いた経験が、すべての出発点になりました。
- 核を一つに絞る:
改善の相談という得意領域だけに内容を絞り込んだ - 小さく試す:
研修ではなく30分相談という軽い形で一人に届けた - 反応で育てる:
相手のずれた期待に気づき内容を作り直していった
今日からできる最初の一歩

最初のお試し商品は、完成度ではなく「一人に届くか」で考えると軽くなります。立派な商品を作ってから動くのではなく、小さく試して反応を見ながら育てる。この順番にするだけで、準備は前に進みます。
宮原さんのように、最初の一人に届いた経験があれば、その先の景色は大きく変わります。今日できることは、あなたが答えられる悩みを一文だけノートに書き出してみるだけで十分です。その一文が、最初のお試し商品の核になります。

完璧を目指して止まるより、20点でも一人に届けるほうが、起業準備はずっと早く動き出します。
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