記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「Voicyで発信してみたいけれど、審査に通る自信もないし、通ったところで自分が続けられる気がしない」。音声に興味を持った勤め人から、こんな声を聞くことがあります。
話すのは嫌いではない。伝えたいこともある。それなのに、申請ボタンの前で手が止まり、結局は人の放送を聞くだけで一日が終わってしまうのです。
足踏みの正体は、声の良し悪しでも話のうまさでもありません。「審査に通ること」をゴールにしてしまい、その先の「聞かれ続ける状態をどう作るか」が霧の中だからです。
この記事では、Voicyでの音声発信を会社の外の収入につなげていく順番を、続けることを軸に置いて整理します。
Voicyを起業準備に活かす全体像

Voicy(株式会社Voicyが運営)は、声だけで発信できる音声プラットフォームです。誰でも配信できるわけではなく、申請して審査を通ったパーソナリティだけが放送を持てる仕組みになっています。公式サイトでも審査制であることが示され、通過率はおおむね5%ほどと案内されています。狭き門であるぶん、放送全体の質が保たれているのが特徴です。
聞き手から収入を得る入口は、プレミアムリスナーという月額の仕組みです。これは応援したいパーソナリティに月ごとに支払い、限定の放送を聞ける有料のファンクラブのような機能で、Voicyの発表によると2025年2月から全パーソナリティが使えるようになりました。月額は各パーソナリティが自分で決められます。

ここで大切なのは、Voicyを「審査に受かるかどうかのゲーム」として見ないことです。審査はあくまで入口で、本当の山場は、放送を始めたあとに聞いてくれる人がだんだん増え、毎月の支払いを続けてくれる関係を作れるかどうかにあります。会社員の起業準備として見るなら、ここを最初から見据えておくほうが遠回りになりません。
市場の側も、声で届ける発信を後押ししています。矢野経済研究所の調査(2024年8月発表)では、2024年度の動画コンテンツビジネスの総市場規模は前年度比108.9%の9,880億円と予測されています。映像とともに、手元で気軽に作って届けられる発信の場が広がっているなかで、本業の専門知識を声で語れる人の出番は静かに増えています。
Voicyでの発信が向いている人・向いていない人

Voicyでの発信は、誰にでも同じように向いているわけではありません。優劣の話ではなく、自分がどちらのタイプに近いかで関わり方を選ぶと、無理なく続けられます。まずは続けやすいタイプから挙げます。
- 同じ話題を掘り下げられる人:
ひとつの専門分野について、毎回少しずつ角度を変えて語れる - 短い時間で話をまとめられる人:
通勤中に聞ける10分前後に、要点を収められる - 反応がなくても淡々と出せる人:
最初の数字が小さくても、決めた頻度で続けられる
逆に、次のような姿勢で始めると、息切れしやすくなります。
- 一気に有名になりたい人:
再生数の伸びを毎回気にして、すぐに疲れてしまう - 話題を毎回変えたい人:
分野が定まらず、聞き手が何の人か覚えられない - 完璧な放送を狙う人:
台本を作り込みすぎて、一本も公開できないまま止まる
後者に共通するのは、最初から大きな成果を一回でつかもうとしているところです。音声は、一本で跳ねる場所ではなく、同じ声を何度も聞くうちに信頼が積もっていく場所です。ここの見方を変えるだけで、関わり方はずいぶん軽くなります。
Voicyで聞かれ続ける人に共通する3つの考え方

起業18フォーラムで、Voicyをはじめ音声発信に取り組む会員さんを見ていると、聞かれ続ける人にはいくつかの共通点があります。大きく3つに整理できます。
1つ目は、最初から頑張りすぎないことです。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』には「継続可能ゾーン」という言葉があります。やる気に任せて高い目標を掲げるより、無理なく続けられる範囲に自分を置くほうが、結果として長く積み上がるという考え方です。
音声に当てはめるなら、毎日30分の放送を目標にして三日でやめるより、週に2回10分でいいから半年続けるほうが、ずっと多くの放送が残ります。続いていること自体が、聞き手にとっての安心になります。

2つ目は、誰に向けて話すのかを先に決めることです。「ためになる話をします」では、誰の耳にも引っかかりません。「同じ業界で働き始めて3年目の後輩に、現場で困りがちなことを話す」というところまで絞ると、話す内容も言葉づかいも自然と定まってきます。
3つ目は、聞いてくれた人とのつながりを放送の外にも作ることです。私のところには「放送は続けているのに、聞き手との関係がそこで止まってしまう」という相談がよく届きます。放送の終わりにコメントへの返事や次回の予告を添えるだけで、一度きりの聞き手が「また聞きたい人」に変わっていきます。
- 頑張りすぎない:
続けられる頻度を先に決めて、その範囲で出す - 聞き手を絞る:
「誰の何に答える放送か」まで決めてから話す - 関係を外にも作る:
返事や予告で、また聞きたい気持ちを残す
まずは、自分が一週間でも続けられそうな配信の頻度を、ひとつだけ決めてみてください。そのラインが見えると、何を話すか・誰に向けるかも、あとからついて決まってきます。
単発の再生から継続リスナーへ変わった会員さんの実例

起業18フォーラムにいる工藤さん(仮名・40代前半・女性・医療機器メーカーで品質管理職・夫と中学生の子ども1人)は、もともと話すことが好きで、Voicyの審査を通ってパーソナリティになっていました。最初は自己流で、思いついた話題をその日の気分で話していたそうです。
聞いてくれる人はいるものの、再生はその場で途切れ、一度聞いた人が次の放送に戻ってこない。半年たっても、聞き流される放送のまま手応えが出ませんでした。
転機になったのは、ある放送の感想として届いた「品質管理の話、もっと聞きたい」という一通でした。雑談には反応が薄かったのに、本業の専門の話には人が集まる。その差を、工藤さんは見過ごせなくなったのです。

変わり始めたのは、起業18フォーラムの勉強会で配信の見せ方を相談してからでした。「毎回話題を変えていては、何の人か覚えてもらえない」と整理され、放送を「品質管理の現場で新人がつまずくこと」に絞り直します。さらに会員仲間と互いの配信を聞き合う中で、続けられる頻度を週2回10分に決め、無理のない範囲で積み上げる形に変えていきました。
同じ話題の放送が並び始めると、聞き手の様子が変わってきました。毎回聞きに戻ってくる人が現れ、コメントでのやり取りも増えていきます。やがて「限定の放送も聞きたい」という声が出はじめ、工藤さんはプレミアムリスナーの仕組みを開きました。
15ヶ月目には毎月支払いを続けてくれるリスナーが定着し、新規の獲得より継続率の高さが収入を支えるようになっていました。今も会社員を続けながら、本業で得た知見を一本ずつ放送に変えています。
Voicyで起業準備を前に進める3つの行動

最後に、Voicyでの発信を起業準備として前に進めるための具体的な動かし方を3つ挙げます。どれも、申請の前からでも始められます。
1つ目は、続けて聞いている人の側に立って観察することです。自分が「また聞きたい」と思うパーソナリティを数人選び、何がその気持ちを生んでいるかをしばらく聞き手の目で見続けます。続けられている放送には、必ず共通の工夫があります。
2つ目は、続けられる頻度を最初に決めて、それ以上に広げないことです。やる気のある立ち上げ期ほど毎日配信を目標にしがちですが、まずは週に1〜2回で十分です。無理なく回せる頻度を先に決めておくことが、三日坊主で終わらせない一番の支えになります。
3つ目は、話す分野をひとつに絞っておくことです。本業で人より詳しいことを、後輩に教えるつもりで言葉にします。分野が定まっていると、聞き手が「この人はこれの人だ」と覚えてくれ、戻ってきやすくなります。
- 聞き手の目で観察する:
また聞きたくなる放送の工夫を見つける - 頻度を先に決める:
無理なく続けられる範囲に自分を置く - 分野を絞る:
本業の専門を、後輩に教えるつもりで話す
一本で跳ねることを狙うより、同じ人が毎月戻ってきてくれる関係を少しずつ太くしていくほうが、限られた時間でも続けやすくなります。起業準備として大切なのは、再生数を一度だけ伸ばすことよりも、聞かれ続ける状態を自分のなかに積み上げていくことです。

うまく話せるかどうかより、自分が続けられる形を見つけられるかどうかが、半年後の景色を分けていきます。まずは続けて聞いているパーソナリティを一人選び、何が自分を戻らせているのかを、一週間だけ聞き手の目で確かめてみてください。続けられない時期も、本業を持ちながら声を試せている恵まれた実験のときだと思います。
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