最初のお客様はどこにいる? 知り合いから始める準備の進め方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「商品はなんとか形になりそう。でも、それを最初に買ってくれる人を、いったいどこで見つければいいのか」。起業準備がある程度進んだ方から、この相談がいちばん多く届きます。広告を打つお金もなければ、フォロワーが何万人もいるわけでもありません。だからこそ、最初の一人で多くの人がつまずきます。

結論から言えば、最初のお客様は遠くを探しに行くのではなく、すでに縁のある近いところから順番に声をかけていくのが、いちばん確実です。その順番を、今日は4つの段階に分けて整理します。

ポイント なぜ「いきなり広く集める」とうまくいかないのか

遠い他人より、すでに縁のある近い人から始める理由

人脈

起業準備を始めたばかりの方の多くが、まずSNSのアカウントを作り、ストアカやココナラに商品を並べ、そして「待つ」という動き方をします。けれど、出しただけで人の目に触れて売れていくことは、ほとんどありません。

理由はシンプルです。あなたがまだ「何に詳しい誰なのか」を知らない相手は、お金を払う判断ができないからです。知らない人から急に商品を見せられても、人は財布を開きません。

ここで効いてくるのが、相手があなたを初めて知ったときに生まれる印象です。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、これを第一印象のさらに前段階として位置づけて整理しています。SNSの投稿一つ、メール一通の文面から、相手は「この人に頼んでいいか」を無意識に値踏みしています。だからこそ、あなたのことをすでに少し知っている人から始めるほうが、はるかに早いのです。

ポイント ステップ1:自分を知ってくれている人から声をかける

縁の深い順に思い浮かべて声をかける最初の一手

かつての人脈

最初にやることは、新しい誰かを探すことではありません。これまでの仕事や生活で縁のあった人を、あなたへの理解が深い順に思い浮かべることです。元同僚、取引先の担当者、前職でお世話になった人。その人たちは、あなたの人柄や仕事ぶりを、すでにある程度知っています。

ここで大切なのは、いきなり「買ってください」と切り出さないことです。売り込みの空気を出した瞬間に、近い相手ほど身構えて距離を取ってしまいます。まずは「今こういう準備をしている」と伝え、相手の反応を見るところから始めます。近況の共有として話すと、相手も構えずに聞いてくれます。

  • 連絡を取りやすく、あなたの仕事ぶりを知っている人
  • 過去に「ありがとう」と言い合えた関係の人
  • 同じ悩みを抱えていそうな立場の人

この三つに当てはまる人ほど、最初の一歩を一緒に踏み出してくれる可能性が高くなります。

ポイント ステップ2:一人に、有料で一件だけ引き受けてみる

無料の親切と有料の仕事を分ける最初のテスト

人脈

声をかけた中で関心を持ってくれた人がいたら、無料のお手伝いで終わらせず、少額でいいので必ずお金をいただいて一件だけ引き受けてみてください。ここがいちばんの分かれ目です。

無料の親切と有料の仕事は、まったくの別物です。お金が介在した瞬間に、相手の本音と、あなたの責任の質が変わります。「これなら払ってもいい」と言われるかどうかが、どんな市場調査よりも確かなテストになります。

日本政策金融公庫の2024年度の調査では、起業した人のうち従業員が本人のみという人が、起業家・パートタイム起業家ともに7割以上を占めています。多くの人が、たった一人で、小さな一件から事業を立ち上げているのです。最初から大きく構える必要はありません。

ポイント ステップ3:満足してくれた一人が、次の縁を運んでくる

満足した一人が次のお客様を連れてくる流れ

人脈

起業18フォーラムにいた永峰さん(仮名・40代後半・男性・法人営業職・妻と高校生の子2人)は、勤めていた頃に取引先との雑談で話した業務改善の知見を、その相手から「個人的に相談に乗ってほしい」と打診されたことがありました。きっかけは、その一言でした。

ただ、当初は手応えをつかみきれませんでした。良かれと思って提案を盛り込みすぎ、相手が本当に困っている一点がぼやけてしまっていたのです。転機になったのは、起業18フォーラムに参加し、勉強会で他の会員の提案を見て「自分の商品にはお客様の顔が一人も浮かんでいない」と気づかされたことでした。そこから、相手の困りごとを起点に商品を組み直していきました。

先輩会員に起業18フォーラムで相談しながらやり方を整えていくうちに、変化が起きます。最初の有料の一件を引き受けたのが準備開始から10ヶ月目、そこからは紹介が紹介を呼びました。18ヶ月目の今では、同じ悩みを持つ知人を自分から紹介してくれるお客様が続き、毎月2社の継続契約を抱えるまでになっています。金額の大小ではなく、「あの件ならこの人」と名指しで頼まれる関係に変わっていきました。商品より先に、信頼が次の縁を運んでくる。永峰さんが体感したのは、この順番でした。

  • 最初の一人に、ていねいに届けきること
  • 頼まれた範囲を、少しだけ超えて応えること
  • その満足が、次の紹介の入口になること

ポイント ステップ4:縁を「広げる」のは、土台ができてから

SNSや広告で広げるのは土台ができた後の段階

point

近い縁の中で何件か実績ができてから、ようやくSNSや発信で範囲を広げる段階に入ります。順番が逆になると、知らない人に届ける労力ばかりがかかって、最初の手応えが遠のいてしまいます。

最初のお客様は、探しに行くものというより、すでにある縁の中から見つけ直すものです。今日できることは、これまでの仕事で縁のあった人を一人だけ思い浮かべ、その人に「今こういう準備をしている」と一言伝えてみることです。

友人には売れたのに他人に売れないのはなぜ? 「身内の壁」を越える最初のテスト販売
● 質問 ITエンジニアです。半年前から、中小企業向けに業務効率化の相談に乗る小さなサービスを始めました。友人

不安を抱えながらも準備を続けられているなら、それは次の道に正面から向き合えているしるしです。私がこれまで見てきた限り、最初の一歩が小さい人ほど、その後は長く続いている印象があります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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