記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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石垣島で起業したい。そんな声を起業18フォーラムでもよく耳にします。観光客が年間149万人を超え、移住人気も高く、会社員のまま二拠点で関わる人が増えている島です。けれど「移住すれば自由になれる」「島で何かやれば食べていける」という勢いだけで動くと、半年で資金が尽きるケースが少なくありません。
この記事では、石垣市の最新公的データ・移住補助金・特定創業支援等事業・国境離島の支援策を整理しつつ、会社員のまま石垣島に通い、関係人口として収入軸を作ってから移住を検討するという段階的なルートを、起業18フォーラム会員さんの実例とともに解説します。
石垣島で起業する意味と「島の固有性」

石垣島は東京(羽田)から飛行機で直行便約3時間半、那覇経由でも約4時間でアクセスできる距離にあります。羽田・成田・関空・中部などからの直行便があり、八重山諸島の玄関口にあたり、西表島・竹富島・小浜島・与那国島へも石垣港から定期船で渡れます。
石垣市の人口は2025年3月時点で48,974人(石垣市住民基本台帳)。一方、2025年の入域観光客数は過去最多の149万152人を記録し、観光消費推計額は1,274億7千万円に達しました(石垣市企画部観光文化課「令和7年12月入域観光推計」)。住民1人あたり年間およそ30人の観光客が来訪する計算で、これは全国の地方都市と比較して極端に高い「観光客対住民比」です。
もう一つ見落とされがちな点があります。石垣島は「特定有人国境離島地域」に指定されており、国の支援交付金の対象になる島です。これは観光地としての顔だけでなく、国境を守る島として国費による特別な事業者支援が受けられる地域でもある、ということを意味します。会社員のまま準備を進める場合、この支援枠を知っているかどうかで初期コストが大きく変わります。
観光繁忙期と閑散期の差が起業設計を分ける
石垣島の起業を考えるうえで、避けて通れないのが季節変動です。夏のハイシーズン(6月から9月)と、台風や寒気で観光客が落ち込む冬の閑散期では、観光関連の売上が大きく変動します。月間入域客数の波は数倍に達することもあります。
つまり「夏の3ヶ月で年商の半分以上を稼ぎ、冬は耐える」というキャッシュフローを最初に想定しないと、運転資金がもたなくなるのが島の現実です。拙著『起業神100則』に「収入の蛇口を1本に頼らない」という考え方が出てきますが、石垣島では特にこの発想が効きます。観光ガイド・体験プログラムのようなフロー収入と、オンライン教材・継続課金・コンテンツ販売のようなストック収入を最初から組み合わせて設計するかどうかで、3年後の景色が変わります。
- 東京から飛行機で約3時間半・年間149万人の観光地
- 住民人口48,974人に対し観光客比率が極端に高い
- 特定有人国境離島地域指定で国の支援対象
- 夏ハイシーズンと冬閑散期で売上が数倍変動
- 八重山諸島の玄関口として周辺離島へのハブ機能
石垣市の創業支援・移住補助金・国境離島施策

石垣市の創業支援は、市と石垣市商工会が連携して運営する仕組みになっています。中心となるのが特定創業支援等事業で、創業に必要な4つの基礎知識(経営・財務・販路拡大・人材育成)を継続的な創業支援セミナーや個別創業面談で学ぶ制度です。
特定創業支援等事業(登録免許税の半額軽減)
特定創業支援等事業の支援を修了し、市から証明書の交付を受けると、会社設立時のコストが大きく下がります。株式会社設立の場合、資本金の0.7%で計算される登録免許税が0.35%に軽減され、最低税額が15万円から7万5,000円に半額になります。合同会社設立の場合も、最低税額が6万円から3万円に減額されます(中小企業庁・産業競争力強化法に基づく軽減措置)。
そのほか、沖縄県融資制度の「創業者・事業継承支援資金」の自己資金要件緩和、沖縄県信用保証協会による創業関連保証が創業6ヶ月前から利用可能になるなどのメリットがあります。証明書は石垣市役所2階商工振興課が交付し、申請から発行まで数日程度です(石垣市商工振興課・電話0980-82-1533)。
沖縄県移住支援金/石垣市Uターン支援事業(令和8年度)
沖縄県の移住支援金制度では、東京23区の在住者・通勤者などが県内実施市町村へ移住して就業・起業する場合の支援枠があり、令和8年度(2026年度)の実施市町村に石垣市が含まれています(沖縄県公式発表・令和8年度実施市町村は石垣市・国頭村・東村・本部町・伊江村の5自治体)。ただし石垣市では市独自のUターン支援事業として、石垣市出身者などの追加要件が設けられているため、一般的な東京圏移住者すべてが対象になるわけではありません。
対象要件は、転入時期、転入先への5年以上の居住意思、就業・起業・テレワーク継続などの区分に加え、石垣市側の独自要件と予算状況で変わります。テレワーク勤務継続も制度上の類型には含まれますが、実際に使えるかは石垣市と沖縄県の最新要領で確認する必要があります。
このほか石垣市には、新婚新生活支援補助金など年度ごとに確認すべき生活支援制度があります。住民票を石垣市に移して要件を満たすと「沖縄県離島住民割引運賃カード」を取得でき、本島や周辺離島への移動費を抑えやすくなります。
特定有人国境離島地域社会維持推進交付金(雇用機会拡充事業)
石垣島は特定有人国境離島地域に指定されているため、国の交付金を活用した雇用機会拡充事業の対象地域でもあります。雇用機会拡充事業は、民間事業者が雇用増を伴う創業や事業拡大を行う場合に、設備投資資金や人件費、広告宣伝費などの運転資金を最長5年間支援する制度です(内閣府総合海洋政策推進事務局・有人国境離島政策推進室)。
全国の特定有人国境離島地域全体で、令和3年度までに本事業を活用した新規雇用累計は1,704人に達しています。これは「観光客向けではなく島で雇用を生む事業」を国が後押ししているという意味で、たとえばオンラインで本土の顧客に向けたサービスを石垣島から提供し、現地で1〜2人を雇用するモデルにも適用可能性があります。
何を売るかが固まっていない段階で複数の窓口を回っても担当者も判断ができないため、まずは「自分が何で食べていくのか」の方向性を固めることを先にしてください。
- 特定創業支援等事業(登録免許税15万→7万5,000円)
- 令和8年度沖縄県移住支援金/石垣市Uターン支援事業(石垣市出身者など市独自要件あり)
- 新婚新生活支援補助金(年度ごとに要件・上限額を確認)
- 沖縄県融資制度の自己資金要件緩和
- 特定有人国境離島地域雇用機会拡充事業(最長5年支援)
石垣島で会社員が始めやすいビジネス領域

石垣島で起業すると聞くと、観光ガイドやマリンアクティビティを思い浮かべる方が多いのですが、それは選択肢のごく一部です。会社員のまま準備する立場で見ると、もっと幅が広がります。
①リモートワーク継続型(本業を石垣島に持ち込む)
石垣島にはKLATCH Ishigaki(約100坪・2021年4月開設)、730 Work Life Cafe、いいオフィス石垣島、チャレンジ石垣島など複数のコワーキングスペースが2021年以降相次いで開設されました。高速WiFi・電話会議ブース・会議室・モニター貸出が揃い、東京の本業をそのまま続けながら家賃と生活コストを下げるルートが整っています。
会社員のまま週末や長期休暇で石垣島に通い、まずは月単位の滞在から始め、現地での生活感覚と仕事のペースを掴んだうえで、移住支援金やテレワーク関連の要件を確認しながら住民票を移す段取りを検討できます。本業の収入軸を保ちながら、副収入を島で育てる時間軸を確保できます。
②観光客向けの体験・コンテンツ業(フロー型)
シュノーケル・ダイビング・SUP・釣り・星空ツアー・離島ホッピングなど、観光客向けの体験プログラムは需要があります。ただし、これらは典型的なフロー型ビジネスで、シーズン依存が大きく、台風の連発で1週間売上ゼロという月も発生します。体験単価を上げて少数顧客で回す設計と、閑散期の運転資金を別の柱で確保する設計を最初に組まないと、夏稼いだ分が冬に消える構造になります。
③地域資源を活かしたストック型コンテンツ
地元の食材・伝統工芸・八重山文化を、本土の顧客に向けて継続課金やコンテンツ販売の形で届ける道があります。たとえばマンゴー・パイナップル・島ハーブの定期便、八重山ミンサー織の体験オンラインレッスン、移住希望者向けの有料コミュニティ運営など。島にいる時間が長くなるほど一次情報の蓄積が増え、本土の顧客に対して継続的価値を出せるのがこの領域の強みです。
④関係人口・二拠点居住からの段階的起業
いきなり移住して起業するのではなく、「東京で会社員を続けながら年に4〜6回石垣島へ通う」「現地で関係人口として活動しながら少しずつ顧客と地元のつながりを作る」という段階を経るルートが、もっとも失敗確率が低い設計です。移住支援金にもテレワーク勤務継続などの類型はありますが、石垣市の独自要件に合うかは別確認です。本業を捨てずに関係人口として準備する設計が現実的です。
「移住するか、しないか」の二択ではなく、「会社員を続けながら、関係人口として通う期間」を意図的に設計してください。
- リモートワーク継続型(本業を持ち込む)
- 観光体験・コンテンツ(フロー型・閑散期対策必須)
- 地域資源×本土顧客のストック型
- 関係人口・二拠点居住からの段階的移行
会員さんの実例:関係人口として始めた佐藤さん

起業18フォーラムにいた佐藤さん(仮名・30代後半・男性・東京都内のIT企業勤務・既婚で子1人)は、石垣島が好きで年に4〜5回プライベートで通っていた会社員でした。「いつか移住したい気持ちはあるが、家族の生活もあり踏み切れない。何から始めればいいかも正直わからない」状態で起業18フォーラムに参加されました。
転機は、勉強会で「収入の蛇口を1本に頼らず、フローとストックを組み合わせる」という考え方に出会ったときです。それまでは「移住して観光ガイドで食べていく」という発想しか持っていませんでしたが、自分の本業のITスキルと、石垣島に通って蓄積してきた地元情報を組み合わせる発想に切り替わりました。
具体的には、本業を続けながら週末に「石垣島・八重山移住検討者向けの有料オンラインコミュニティ」を立ち上げ、月額制で運営を始めたそうです。1人目の有料会員はSNSで石垣島の投稿を見ていた本土の会社員で、半信半疑で動き始めた8ヶ月目に有料会員数が30人を超え、月10万円の継続収入が会社員のまま安定するようになりました。現在14ヶ月目で月収13万円まで伸び、移住支援金やUターン支援事業の要件を公式窓口で確認しながら住民票の移し方を準備中です。
「いきなり移住しなくてよかった」と佐藤さんは話してくれました。会社員のまま、関係人口として2年かけたから、現地の協力者も顧客も準備できた。焦って退職していたら、たぶん半年で資金が尽きていた、と。
佐藤さんが最初に動いたのは「移住相談窓口」ではなく、「自分の本業の延長で島と関係を作るオンラインの仕組み」でした。何で食べていくかが固まる前に役所に相談に行っても、担当者も答えようがありません。島で起業するなら、収入軸の方向性を作ってから窓口を回るという順序を、今日からの行動指針に置き換えてください。

石垣島で起業する前に踏むべき順番

石垣島は観光客149万人・国境離島・移住人気という強い追い風がある一方、季節変動と離島ゆえの物流コスト・人件費上昇という現実が同居する場所です。「島に行けばなんとかなる」という勢いで動くと、運転資金が想定の倍速で溶けます。逆に、会社員のまま関係人口として2年通い、収入の方向性が固まってから要件に合う移住支援・特定創業支援・国境離島雇用機会拡充事業を組み合わせれば、初期コストは大幅に圧縮できます。
まず起業18フォーラムで「自分は何で食べていくか」「フローとストックをどう組み合わせるか」を整理することが最初の一歩です。方向性が見えてから、石垣市役所2階商工振興課で特定創業支援等事業の証明書取得を進め、沖縄県移住支援金/石垣市Uターン支援事業や新婚新生活支援補助金などの対象要件を確認する。この順番でなければ、それぞれの制度の力を十分に引き出せません。
一気に移住する必要はありません。お試し移住・期間限定滞在・テレワーク継続や住民票移行を検討する選択肢がある時代です。離島住民割引運賃カードを活用しながら、本業の収入軸を保ちつつ、島での仕事の芽を育てる期間を意図的に作ってください。起業18の動画とセミナーで全体像を掴むところから始めれば、補助金や支援施設の使い方は後から無理なく決まります。
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