記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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エンジニアとして長く現場にいる方ほど、「自分の技術で独立できるのか?」という問いが頭をよぎる瞬間があります。
フレームワークの流行は数年で変わり、社内の評価軸は曖昧で、年齢を重ねるほど「次の一手」を考える時間が増えていきます。けれど、いざ調べ始めると情報が散らばっていて、何から手を付ければ会社を辞めずに収入の柱が増やせるのかが見えにくい。
この記事では、エンジニアの皆さんが今日から動き出すために必要な順序と判断軸を、起業18フォーラムの会員さんの事例を交えて整理します。
エンジニア経験はそのままで「名もなき強み」になる

流行の言語名より「どんな現場で何を直したか」が刺さる
エンジニアの起業準備で最初につまずくのは、「自分には特別なスキルがない」という思い込みです。最新フレームワークの習熟度や、githubのスター数を基準に自分を測ってしまうため、現場で長年積み上げてきた経験を過小評価してしまいます。起業の値段が付くのは「技術スタックの新しさ」ではなく「特定の現場の困りごとを早く正確に直した経験」のほうです。拙著『起業神100則』に「名もなき強み」という考え方が出てきます。本人は当たり前と思っている社内の動き方、業界知識、トラブル対応の判断こそ、社外に出ると指名買いされる武器になります。
直近の3年分で、社内外から「これはあなたに頼みたい」と名指しで来た仕事を10件書き出してみてください。「○○の障害対応」「△△業界の受発注バッチ」「××の権限設計」のように、業務領域と作業内容がセットで出てくれば、それがそのまま起業の最初の商品案になります。
市場側のデータ:エンジニア独立は「特殊なルート」ではない

「人手不足の業界」に独立側で参入する
数字の裏付けも見ておきます。ITフリーランス人口は2024年に約35.3万人となり、2028年には45万人超へ伸びる予測が出ています(INSTANTROOM「ITフリーランス及びフリーランスエージェント市場白書 2025」)。一方で経済産業省「IT人材需給に関する調査」では、2030年に最大約79万人のIT人材不足が試算されています(2019年調査の高位シナリオ)。つまり、エンジニアの独立は「特殊な人だけが選ぶ道」ではなく、すでに大きな市場のなかで通常の選択肢の一つになりつつあるということです。
- ITフリーランス人口:2024年約35.3万人・2028年45万人超見込み
- 2030年IT人材不足:最大約79万人(経済産業省2019年調査の高位シナリオ)
- フリーランスエージェント市場:2024年2,562億円、2028年4,300億円規模見込み(同白書)
数字を見て安心するためではなく、「需要側はあなたのスキルを欲しがっている」という事実を行動の燃料にするためです。必要なのは才能の証明書ではなく、最初の1人の顧客にたどり着く準備です。
起業準備の5ステップ:在職のまま月5万円までを設計する

いきなり退職せず、収入軸を積み上げる順序
エンジニアの起業準備でよくあるのが、「会社を辞めて時間を作ってから何をするか考える」という順番の転倒です。退職は資金と時間の最大カードを切る行為なので、商品の輪郭が見えてから使うべきカードです。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』では、売上ステージを「STAGE I(0〜1万円)→ II(1〜5万円)→ III(5〜10万円)→ IV(10〜30万円)」の4段階で設計します。エンジニアの起業準備は、まずSTAGE IIまで在職のまま到達させるのが現実的な道筋です。
- STEP1:指名された仕事10件の書き出し(業界×作業内容で具体化)
- STEP2:困りごとヒアリング20件(元同僚・社外勉強会・SNS関係)
- STEP3:モニター案件1件(友人会社・無料か低単価で実装+納品)
- STEP4:継続契約2社+スポット案件1件で月5万円を作る
- STEP5:開業届・請求書フォーマット・契約書ひな形の整備
STEP3のモニターは「ポートフォリオを作る」ためではなく、「自分の作業時間と顧客の支払意思のずれを把握する」ためにやります。見積もりが甘い、要件定義の打ち合わせが長引く、納品後の修正対応で利益が消える。これらの誤算を在職中に経験しておくことで、退職後にいきなり廃業率の話に直面せずに済みます。
経験タイプ別の起業アイデア:自分の現場から逆算する

「自分の現場の隣」で売れる商品の見つけ方
エンジニアの起業アイデアは、つい「最先端のSaaSを作る」「AI関連で勝負する」という方向に飛びがちです。けれど、最初の収入は「あなたが今いる現場の隣」で生まれることがほとんどです。経験タイプ別に並べると、商品の輪郭が見えやすくなります。
- 業務システム保守・社内SE出身:中小企業向けの基幹データ整備代行・Excel/GAS/Pythonの自動化請負
- Web系バックエンド:受発注・在庫・予約まわりの中規模SaaS連携実装、API連携代行
- フロントエンド:管理画面のリプレース・LP高速化・アクセシビリティ改善案件
- インフラ/SRE:中小企業のクラウド移行伴走・コスト最適化レビュー・障害対応スポット契約
- データ/機械学習:BI構築代行・売上分析ダッシュボード・需要予測のスモール導入
- マネジメント経験あり:CTO代行・技術顧問・PMO代行・採用面接同席(月5〜30万円の顧問契約)
アイデアを絞るための3つのチェック
候補が複数出てきたら、拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にある3つのチェックを使います。①一人で始められるか/②一人で続けられるか/③大きなお金がかからないか。この3つに「はい」と答えられる組み合わせが、最初の1年で続く起業準備のかたちです。エンジニアの場合、「在庫なし・月額5万円以内の固定費・初期投資30万円以下」を目安にすると、辞めずに走れる設計になります。
会員さんの実例:自己流SaaS開発から「絞り込み」で抜け出したKさん

自己流→学び→修正の道筋
会員さんのKさん(41歳・Web系SE 14年)は、最初は「いつかSaaSで月100万円」を目標に、退職後の半年間で個人開発の汎用SaaSをゼロから書き始めました。技術選定にこだわって設計をやり直すこと数回、リリース直前で機能を増やし続け、結果として半年間の売上はゼロ。生活費は貯金から取り崩していました。
その後、起業18フォーラムの勉強会で「商品を絞る」「先に顧客の困りごとから逆算する」という考え方に出会い、過去の現場で頼まれた仕事30件を書き出し直します。そこから絞り込んだのが、「中小製造業向け 受発注Excelの自動化代行(Python+VBA)」1サービスでした。元々の現場で何度も対応してきた領域であり、顧客側にとっても「相見積もりに出しにくい固有業務」だったため、口コミで広がりやすい構造が生まれます。
12ヶ月目で月5万円、18ヶ月目で月18万円の継続収入に到達。今は同業種の周辺業務に派生して、保守料月額の積み上げで安定した収入軸を作っています。Kさんが変えたのは技術ではなく、「誰の何を直すか」の解像度でした。
エンジニア特有の3つの失敗パターン

パターン①:作りたいモノを作り続けてしまう
エンジニアは「面白い技術」「気になる構成」が見つかると、つい手が動いてしまいます。しかし顧客が「ほしい」と言っていない機能を増やし続けると、どれだけコードが綺麗でも収入はゼロのままです。顧客の声で要件を増やすのと、自分の興味で要件を増やすのは似て非なる行為。「これは誰の困りごとを直しているのか?」を毎週問い直す仕組みを入れておきます。
パターン②:完璧主義によるリリース先延ばし
「テストカバレッジが足りない」「設計が美しくない」「ドキュメントが揃っていない」。そう言って数ヶ月リリースを伸ばすうちに、競合が先に出してしまうケースは珍しくありません。拙著『起業神100則』では「20点でOK」という考え方を出しています。最初に出すべきは完成品ではなく、顧客が「これなら払う」と即答できるレベルの試作版です。その後の改善は売れてから始めて遅くありません。
パターン③:クラウドソーシング単価の地獄
クラウドソーシングは案件供給が多い反面、価格競争が激しく、時給換算で1,000円を割る案件も少なくありません。最初の1件目をそこで取って実績にするのは構いませんが、メイン導線にすると体力が消耗してから抜けられなくなります。並行して、元同僚・前職の取引先・業界勉強会といった「あなたを名前で知っている関係」からの紹介ルートを育てるほうが、単価の天井が外れます。
- 顧客の声ではなく自分の興味で機能追加
- テスト・設計を理由にしたリリース先延ばし
- クラウドソーシングのみを集客導線にする
続けるためのマインドセット:技術の更新と起業の更新は別の運動

技術の話と商売の話を切り分ける
エンジニアは「いいものを作れば認められる」という文化のなかで育ちます。だから起業準備でも、技術の更新を続けていれば自然に売れるはずだと思いがちです。けれど起業活動は別の運動です。技術力は商品の質に効きますが、売上は「誰が・いつ・なぜ・いくらで」買うかの設計に効きます。この2つを区別できると、勉強と営業のどちらも止まらずに前に進めるようになります。
最後にもう一つだけ。エンジニアの方は、自分のキャリアで誰かを助けてきた手応えを、すでにたくさん持っているはずです。それを「コードの実績」ではなく「人の困りごとを早く確実に直した実績」として書き出し直すだけで、起業の地図はほとんど描き直せます。会社を辞めるかどうかではなく、隣の現場を一つ助けにいくところから、最初の1円が動き出します。
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