記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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伝説の番組「マネーの虎」で、ネットアイドル(地下アイドル)が、パフォーマンスを披露した伝説回をご記憶の方は多いでしょう。吉田栄作さんが途中退席してしまうという波乱の展開になりました。
今も語り継がれる人気番組「マネーの虎」とは?
「マネーの虎」とは、2001年10月から2004年3月まで、約2年半ほど、日本テレビで放映された超人気番組です。起業家になりたい志願者が、虎と呼ばれる大物起業家の前でプレゼンを行い、融資や出資を依頼します。その額の合計が志願者の希望額に達したら「マネー成立」となり、お金を受け取れるという企画です。
大物起業家を納得させる企画やプレゼン能力、人間性が問われますから、虎たちから怒りを買う志願者も多く、今も語り継がれるたくさんの名場面、神回が存在します。
今回の志願者、高橋さんは「日本の芸能界を変える芸能プロダクション」「もう1個の業界」を作りたいと言い、「今の芸能プロダクションはタレントを育てていない。それがエンターテインメントを落としている」と主張します。
人気のある俳優さんや女優さんは、見た目はとても魅力的だが、芝居という意味で言うとまだ役者にはなっていないと思う。ここを変えていかないと、今後の日本の芸能エンターテイメントの世界は、もう先がないと思うことから、この企画を発想している。
志願者は具体的には、やり直しの効かない緊張感のある「ライブ」をメインに持っていき、人材を育てたいと言います。「箱(ライブ会場・ステージ)」を用意して、そこで毎日のようにライブ活動を行いながら、本物のプロに育成するというプラン。イメージとしては「8時だよ全員集合」のドリフターズで、彼らはライブで磨き上げられてきたからこそ、あらゆる芸能活動でびくともしない実力があるというのです。
高橋さんの経歴
高橋さんは、プレゼン当時、芸能プロダクションで働いた経験はありませんでした。13歳の時からローリングストーンズなどのビッグバンドに憧れ、ミュージシャンになろうと決意。その後、プロデューサーという職業の存在を知り、日本第一号のプロデューサーになることを目指すようになりました。そして、スタジオミュージシャンとして活動しながら、音楽やプロデュース、芸能界の勉強を積み上げました。
その経歴を説明した後に、驚きの発言が飛び出します。
「ネットアイドル」という言葉や、劇場を用意して日々ライブ活動を見せて育成するという、その後に大爆発したビジネスモデルを語り始めたのです。
- 堀之内九一郎(55歳当時)年商67億
(株)生活倉庫 代表取締役社長 - 安田久(40歳当時)年商18億
(株)エイチ・ワイ・ジャパングループ 代表取締役 - 加藤和也(31歳当時)
美空ひばりの長男・音楽プロデューサー - 川原ひろし(38歳当時)
行列のできる有名とんこつラーメン店 - 文野直樹(42歳当時)年商71億
イートアンド(株)代表取締役社長
この放送回では出演されていませんが、南原会長とのツーショットです。
驚きのプレゼン内容! しかし虎、そして吉田栄作さんが・・・
この「ステージを用意する」という部分に反応したのは、芸能プロダクションを経営していた加藤和也氏でした。「母、美空ひばりが最後にやりたかったことだ」と共感します。その他の虎たちも、このプランに対して、プロとして完成した「宝塚歌劇団」をイメージし、興味を持っている様子が映し出されています。
「このステージでなければ、そのアイドルグループを見ることができない」というビジネスモデルです。
しかし雲行きが・・・
高橋さんは、2年ほどの期間、アイドルをライブに出しながら、プロになるための育成を行う予定だと言いました。そして、そのプレゼンの場でアイドルのパフォーマンスを見せたいと言ったのです。そのアイドルたちはまだトレーニング中であり「まだ全然だめ」なレベルであるのにも関わらず・・・。
この辺りから、場の雰囲気が悪くなっていきます。
早すぎたアイドル企画
「まだ全然だめだと考えている人たちに、ここで披露させるのか?」と、虎たちは一斉に反応し始めます。ここで進行役である吉田栄作さんが「2年の育成を考えているなら、そこまで出すべきではないのでは?」と反論するように口を挟みます。
令和になりまた流れは変わっていますが、その後の芸能界では、ASAYANのモー娘。そしてAKB劇場と、アイドルのオーディションから成長過程を見せることが当たり前になりました。しかし、昭和~平成初期では「とんでもないこと」だったのでしょう。まさに「早すぎた」企画でした。
吉田栄作さんが退場! そして・・・
そして、吉田栄作さんが退場されました。今では当たり前の「未完成アイドル」ですが、当時は完成されたものを披露することが当たり前だったからです。同じ夢を見る者として許せなかったのでしょう。
アイドル達が登場し、歌と踊りを披露しました。しかし、このパフォーマンスはあまりにお粗末なものでした。
虎たちがどのくらいの準備をしたのか尋ねるとわずか1日。大勢の中から選ばれたアイドルであることにも疑問を持たれることになります。素人の中であるとしても、もっと素質のある人は多いだろうと。また、不完全でないのであれば、プロデューサーとしてこの場に出すべきではなかっただろうと。
川原社長がひとこと。
「久しぶりにあんな下手くそな演技見たよ」
当初共感してくれていた加藤社長も・・・
「あまりバカにしないでください。この業界」
超低レベルなパフォーマンスだったが・・・
この放送では、登場したアイドルたちのダンスがあまりにも実力不足であったため、高橋さんのプロデュース力にも疑問を感じられてしまい、また、その後に出た発言「お金を貰いに来たわけではない。一緒に夢を見てくれる36番目の人を探しに来た」という発言が失望を買ってしまった結果、ノーマネーとなりました。
もしここで、アイドルたちがもう少し高度なパフォーマンスができていたら、展開は全く違ったかもしれません。その後のAKBの歴史が変わった可能性もあります。高橋さんのビジネスモデルは、秋元康さんが創り出した「箱(AKB48劇場)」で成長を見せながらファンを獲得していくスタイルに通じるものがありました。
非常に惜しかったですね。
参考:AKB48劇場とは?
「AKB48劇場」をご存知でしょうか? 東京秋葉原にあるドン・キホーテ秋葉原店の8階に劇場は存在します。
秋葉原は「オタクの聖地」であり「若者のエネルギーがあふれている街」です。アイドルにはぴったりの場所でしょう。劇場は250名定員で椅子席は145席。ステージは客席に近接しているのが特徴となっていて、メンバーに手が届くほどの距離です。
今や当たり前となった「会いに行ける」「ファンが育てる」というコンセプトで成功を納めたのがAKB48です。
おわりに
マネーの虎の神回「アイドルプロデュース企画」は、残念ながらノーマネーでした。「未完成のパフォーマンスを見せるべきか否か」今となってはアリのことが、当時は受け入れられなかったのです。
それにしても、もう少し、ちょっと良いダンスができていたら・・・、と思いますね。
次の時代のアイドルのカタチは、どう進化していくのでしょうか? 新しいビジネスモデルが楽しみです。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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