記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
50代の会社員です。定年後を見据えて起業の準備を始めたいのですが、パソコンの細かい操作もSNSもずっと苦手なままで、正直なところ機械にめっぽう弱い自覚があります。
最近は何でもデジタルが前提のように言われていて、こんな私に起業準備なんて無理なのでしょうか?

● 回答
その引け目、私のところにも同じ年代の方から本当によく届きます。けれど先にお伝えしておきたいのは、デジタルが苦手なことと、起業準備が進められないことは、まったく別の話だということです。苦手なまま始めて、本業のほかに自分の収入の柱をつくれた方を、私は何人も見てきました。
機械が苦手だと感じている方ほど、「まず操作を覚えてから」と入口に高い壁を立ててしまいがちです。でも、順番が逆なのです。覚えてから動くのではなく、動きながら必要な分だけ触れていく。今日は、よくいただく不安をひとつずつほどきながら、デジタルが分からなくても踏み出せる準備の進め方を整理していきます。
「デジタルが苦手」は、思っているほど少数派ではありません
まず、ご自身を「機械に弱い特殊な人」だと思い込みすぎていないか、そこから見直してみてください。
総務省の令和6年(2024年)通信利用動向調査によると、13歳から69歳までの各年齢層でインターネットの利用率は9割を超えています。一方で、同じ調査ではスマートフォンの利用率が74.4%で、パソコンの46.8%を大きく上回っています。つまり、いまや多くの人が、難しいパソコン操作ではなく、手元のスマホで日々の用事を済ませているのです。
この数字が伝えているのは、「パソコンを使いこなせること」と「起業準備を進められること」は、もう同じ意味ではない、ということです。高性能なパソコンを前に身構える必要は、最初の段階ではほとんどありません。
苦手意識の正体は、たいてい「全部を自分でやらなければいけない」という思い込みです。そのぶん、どこを自分で触り、どこを人に任せるかを切り分けられれば、苦手なままでも前に進めます。次から、よくいただく具体的な不安に順番にお答えしていきます。
「ホームページを作れないと始められないのでは」への答え
立派なホームページを自力で組み上げる必要はありません。準備の初期に必要なのは、「あなたが何屋さんで、どう連絡すればいいか」が伝わる一枚の入口だけです。
いまは、入力するだけでお知らせのページが整う無料のサービスがいくつもあります。凝った見た目を目指すより、サービス内容と連絡先が読み手にきちんと届くことのほうが、最初はずっと大切です。その一枚さえあれば、知り合いに「こういう準備をしている」と伝える起点になります。
「SNSで毎日発信しないと売れないのでは」への答え
毎日にぎやかに投稿しなければ売れない、というのは思い込みです。とくに準備の初期は、見ず知らずの大勢に届けることより、すでにあなたを知っている人に声をかけるほうが、ずっと近道になります。
最初のお客様は、たいてい新しく出会う人ではなく、これまでの仕事や暮らしで縁のあった人の中から見つかります。SNSは、慣れてきてから必要な分だけ手をつければ十分です。苦手なものを入口に置いて、そこで止まってしまうのが、いちばんもったいないのです。
「難しい作業は、誰かに頼んでもいいのでは」への答え
これがいちばんお伝えしたい点です。苦手な作業は、無理に自分で抱え込まず、人に任せていい。これは怠けではなく、立派な経営判断です。
ページの細かな調整や画像の整えなど、自分がつまずく作業を、いまは一件いくらで引き受けてくれる人にお願いできます。自分は得意なこと、つまりお客様の悩みに向き合う中身の部分に時間を使い、苦手な操作はその道の人に回す。この割り切りができた人から、準備は軽くなっていきます。
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、人生で自由に動ける時間は約4500日しか残っていない、という4500日理論を紹介しています。その限られた持ち時間を、苦手な操作を一から覚えることにすべて注ぐのか、それとも自分にしか作れない中身に振り向けるのか。どちらが定年後につながるかは、考えてみる価値があります。
「結局、最低限は覚えないといけないのでは」への答え
すべてを覚える必要はありませんが、まったくのゼロというわけにもいきません。ただ、覚えるのは「自分の仕事で実際に使う一つか二つ」だけで十分です。
たとえば、お客様と連絡を取り合う手段と、簡単な見積もりを送る手段。この二つに絞れば、覚える範囲はぐっと狭まります。幅広く何でも使えるようになろうとせず、自分の商売の動線に沿って、必要なものだけに触れていってください。
苦手なまま始めて、9ヶ月でできることが一つずつ増えた都筑さん
起業18フォーラムの会員さんで、長く製造の現場にいた都筑さん(50代)も、まさに同じ入口で足踏みされていました。「パソコンの設定画面を開くだけで気が重くなる」と、ご自分のことを話してくれたのを覚えています。
転機は、起業18フォーラムの会員仲間と、苦手なツールを一緒に触ってみた日でした。一人で説明書とにらめっこしていた頃は一歩も進まなかったのに、隣で教わりながらだと、つまずく場所をその場で越えられたのです。そして勉強会で「デジタルは最小限でいい、苦手な作業は外注に回していい」と知ったことが、都筑さんの肩の力をすっと抜きました。
そこからの都筑さんは、現場で培ってきた段取りの知恵を、同じ業界の人に伝える形へ絞り込んでいきました。細かなページ調整は会員さんから紹介された人に任せ、ご自身は中身づくりに専念したのです。
数を一気に増やしたわけではありません。けれど、丁寧に一人ずつ向き合ううちに、9ヶ月目には相談に乗った相手が累計で延べ20名を超えていました。「あのとき、苦手だからと止まらなくてよかった」と、いまは穏やかに振り返っておられます。苦手を独りで抱え込まず、仲間に隣で教わりながら、任せられるところは任せた。違いがあったとすれば、その一点だけでした。
苦手なまま、今日から踏み出すために
ここまで読んでくださったあなたに、最後にお伝えしたいことがあります。デジタルへの苦手意識は、準備を止める理由にはなりません。むしろ、苦手だと自覚しているからこそ、何を自分でやり、何を任せるかを冷静に選べます。
覚えてから動こうとすると、いつまでも入口で足踏みします。だからこそ、順番を入れ替えてみてください。まずは詳しい人に隣で教わりながら、自分の仕事で使いそうなツールを一つだけ触ってみるところから始めてください。独りで説明書と格闘するのではなく、誰かに横で見てもらう。それだけで、つまずきの多くは越えられます。

デジタルが苦手な人ほど、最初から全部を覚えようとして入口で止まります。けれど、覚える範囲を仕事で使う一つか二つに絞り、苦手な作業を人に回せば、機械に弱いままでも準備は進みます。都筑さんがそうだったように、最初の一手を隣の誰かと一緒に踏み出せれば、そこから先は一つずつ動きはじめます。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
