記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「起業しよう」と思ってパソコンの買い替えを考えたとき、最初にぶつかるのが「Macか、Windowsか」という問いです。
家電量販店の比較表を眺めても、スペックの数字が並ぶだけで、自分にはどちらが合うのか見えてこない。そんな手が止まる感覚を、いま味わっている方は多いと思います。

私は26年にわたって会社員のセカンドキャリアを支援してきましたが、パソコン選びで長く悩む方ほど、実は「何の仕事に使うのか」がまだ決まっていないことが少なくありません。道具から入ると、迷いはかえって深くなります。
結論からお伝えすると、MacかWindowsかは、スペックを比べる前に「誰のどんな困りごとを、自分は解決するのか」を先に決めれば、ほとんど自動的に絞り込めます。
この記事では、2026年時点の最新スペックと価格をふまえたMacとWindowsそれぞれの強み、そして買う前に決めておくべき「順番」を、現場の目線で整理します。最初の道具選びで後悔しないための判断軸を持ち帰ってください。
パソコンを選ぶ前に決めるべきこと

いきなりMacとWindowsの比較に入りたくなる気持ちは、よく分かります。けれど、その前にひとつだけ立ち止まってほしいことがあります。それは「自分は何の仕事をするのか」です。
動画編集を受託するのか、オンラインで講座を開くのか、ネットショップを運営するのか。やることが決まれば、必要なソフトが決まり、必要なソフトが決まれば、MacかWindowsかは半分以上決まります。パソコンは目的を実現する道具であって、道具から事業が決まるわけではありません。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、起業の準備で何をそろえるか分からなくなる人に向けて、まず必要なのは「名刺と請求書」で、それ以外は後からでいいという考え方を紹介しています。同じことが機材にも言えます。誰の何の困りごとを解決するかという設計図が先で、立派なパソコンはその後です。
実際、私が見てきた中では、開業前に20万円超のハイスペック機を買ったものの、結局やったのは見積書づくりとメール対応だけ、という方もいました。逆に、手持ちの古いノートで小さく始め、動画編集の仕事が増えてから必要な性能を見極めて買い替えた方のほうが、無駄なく前へ進んでいます。
- 先に決めること:
誰のどんな困りごとを、自分は何で解決するのか - 次に決まること:
その仕事に必要なソフト・周辺機器 - 最後に決まること:
ソフトと予算に合うMacかWindowsか
今日できることは、スペック表をいったん閉じて「私は誰の何を解決するのか」を1行で書き出してみることです。その1行が、あなたに必要なパソコンを静かに教えてくれます。
Macで起業するメリット

設計図が描けたうえで、まずMacの強みを見ていきましょう。いまのMacは、すべてApple独自のチップ(Apple Silicon)を積んでいます。2026年3月に発表されたMacBook Air(M5チップ搭載)は、13インチが18万4,800円から、15インチが21万9,800円からと、Appleの公式サイトで案内されています。かつてのインテル製チップを積んだMacは、すでに販売を終えています。
安定して動き、長く使える
持ち運びの最中に壊れにくいか、急に動かなくならないか。起業すると、トラブルの一つひとつが収入の機会損失に直結します。私自身は長くWindowsを使ってきましたが、大事なセミナーの直前に起動しなくなり、肝を冷やした経験が何度もあります。
その点でMacは、OSとハードを同じApple社が作っているぶん、動作の安定感に定評があります。寿命の面でも、適切に使えば5年から7年は現役で使えるとされ、初期費用は高くても長い目で見れば割安になりやすいのです。
デザインや動画の仕事と相性が良い
Macのディスプレイは発色が美しく、フォントの見え方も印刷物に近いと言われます。実際にはWindowsのハイエンド機でも遜色はありませんが、デザインや動画編集、写真の現像といった見た目が成果物そのものになる仕事では、Macを選ぶ方がいまも多数派です。本体のデザイン性が高く、外で開くときに気分が上がるという声もあります。
AI機能とプライバシー保護
Appleは利用者のプライバシー保護を強く打ち出しており、外部からの追跡を制限する仕組みが標準で備わっています。生成AIの機能「Apple Intelligence」も日本語に対応しており、M1以降のチップを積んだMacで使えます。文章の要約や書き直しなどをMac上で使えるため、対応機種かどうかは購入前に押さえておいてください。
Windowsで起業するメリット

続いてWindowsの強みです。現行のWindows11を積んだパソコンは、価格の幅が広く、選択肢の多さがそのまま武器になります。
初期費用を抑えやすい
Windowsパソコンは多くのメーカーが作っているため価格競争が働き、同じくらいの性能でもMacより安く買えるケースが目立ちます。起業の最初は、できるだけ手元の現金を残しておきたい時期です。とにかくコストを抑えて始めたいなら、Windowsが現実的な選択肢になります。
法人取引とソフトの互換性
取引先となる企業の多くはWindowsを使っています。書類の受け渡しで、ファイルがうまく開けないといった小さなつまずきが起きにくいのは、互換性の高いWindows側です。会計ソフトや業務ソフトもWindows対応のものが多く、複数人でパソコンを共有する場面でも扱いやすいでしょう。Officeを日常的に使う仕事なら、なおさらWindowsが有利です。
デスクトップを母艦にしやすい
これは私の経験からの実感ですが、事務所には高性能のデスクトップを一台置いておくと、仕事がぐっと進めやすくなります。オンラインの打ち合わせやセミナーでは、有線でネットにつなぎ、複数の画面を並べられるデスクトップのほうが安定します。部品を組み合わせて性能と価格を調整できる点でも、デスクトップはWindowsに分があります。

これは私の事務所の母艦にしているデスクトップです。3台のモニターと、セミナー用のペンタブレットをつないでいます。手前にあるのはレッツノートで、このほかにもMacBookやiPadなど、用途に合わせて複数の機種を使い分けています。つまり、最後は「どちらか一方」でなくてもよいのです。
2026年に外せないAIパソコンとサポート終了の話

ここ1、2年で、パソコン選びには新しい論点が二つ加わりました。起業のために新しく買うなら、知っておいて損はありません。
AIパソコンという新しい選択肢
一つ目は、AI処理を本体側で行う「AIパソコン」の登場です。Windows側では「Copilot+ PC」という新しい区分が生まれました。これはAI専用処理装置(NPU)が毎秒40兆回以上の演算性能を持ち、メモリ16GB以上を積んだ機種を指します。
対応するのは、AMDのRyzen AI 300シリーズ、インテルのCore Ultra 200Vシリーズ、クアルコムのSnapdragon X系などです。文章生成や画像処理の一部を、ネットにつながなくても本体で動かせるのが特徴です。
Mac側でも前述のApple Intelligenceが同じ役割を担います。今すぐAIをバリバリ使う予定がなくても、これから数年使う一台を選ぶなら、こうしたAI対応の有無を一度確認しておくと安心です。
Windows10のサポートは終了している
二つ目は、中古や型落ちを安く買うときの注意点です。Windows10は2025年10月14日にサポートが終了しており、延長セキュリティ更新に登録していない端末は通常のセキュリティ更新を受け取れません。延長セキュリティ更新は2026年10月13日までの一時的な延命策です。
顧客の情報を扱う事業用のパソコンとして、安いからとWindows10機を選ぶのは避け、Windows11に対応した機種を選んでください。
業種と予算で見る選び方の早見

ここまでをふまえて、自分はどちらかを判断するための軸を整理します。冒頭の設計図、つまり「何の仕事をするか」と「いくらまで出せるか」の二つで、答えはかなり見えてきます。
- デザイン・動画・写真の仕事:
発色と業界標準でMacが選ばれやすい - 法人取引・事務・会計が中心:
互換性とコストでWindowsが無難 - とにかく初期費用を抑えたい:
価格の幅が広いWindows - 長く一台を大事に使いたい:
寿命と安定性でMac
もし、まだ仕事の中身が固まっていないのなら、無理に高い一台を買う必要はありません。手持ちの機種や中古のWindows11機で小さく始め、仕事が増えて必要な性能が見えてから、本命を買い替える。この順番がいちばん失敗しにくいやり方です。
動画編集の受託で買い替えた桑名さん

起業18フォーラムの会員さんに、桑名さん(仮名)がいます。会社員をしながら、知人に頼まれて結婚式のムービーを作ったことをきっかけに、動画編集の受託を始めた方です。
最初に相談に来られたとき、桑名さんは「動画をやるならMacの高い機種を買うべきでしょうか」と、購入の話から切り出しました。私はまず「いくつ仕事の依頼が来ているか」をうかがいました。そのときの受注は、知人経由の2、3件です。そこで、いきなり買わず、手持ちのWindowsノートでそのまま続けてみることをおすすめしました。
転機が来たのは、知人の紹介が次の紹介を呼び、月に5、6本の編集依頼が安定して入るようになった頃でした。そこで初めて、書き出しの待ち時間が長くて困るという、具体的な不満が出てきたのです。やる仕事と必要な性能がはっきりしてから、桑名さんは編集に強いMacへ買い替えました。
テスト期を経て依頼が積み上がり、副収入は月19万円ほどになりました。期間にして1年です。桑名さんは「最初に高い機種を買っていたら、仕事が続くか分からないまま大金を払うところでした」と振り返ります。道具を仕事に合わせた、という順番が効いた例です。
こうした「小さく試してから本格化する」進め方は、パソコン選びに限らず起業準備の全体に通じます。無理なく準備を進める手順は、こちらの記事で整理しています。

道具にお金をかけるのは、設計図が固まってからでも遅くありません。
よくある質問

Q.迷ったらどちらを選べばいいですか?
仕事の中身がまだ固まっていないなら、価格の幅が広く取引先と互換性の高いWindows11機から始めるのが無難です。デザインや動画が主軸になると決まっているなら、Macを選んでください。
Q.中古や型落ちで安く買っても大丈夫ですか?
性能が足りていれば問題ありませんが、Windowsの場合はWindows11に対応した機種を選んでください。サポートの終了したWindows10機を事業用に使うのは、セキュリティの面でおすすめしません。
Q.MacとWindowsの両方を持つのは無駄ですか?
無駄ではありません。私自身も用途で使い分けています。ただし最初から2台そろえる必要はなく、まず一台で始め、必要が出てから増やすので十分です。
Q.Officeを使いたいのですがMacでも動きますか?
Mac版のOfficeがあるので動きます。ただし細かな表示のずれが起きることはあるため、Officeでの書類のやり取りが多い仕事なら、Windowsのほうが安心です。
おわりに
MacとWindowsには、それぞれ違った強みがあります。どちらが正解かは、スペックの数字ではなく、あなたが何の仕事をするかで決まります。
パソコン選びで手が止まっている本当の理由は、機種が分からないからではなく、事業の中身がまだ固まっていないからであることが多いものです。だからこそ、比較表を閉じて「誰のどんな困りごとを解決するか」を先に決めてください。それが決まれば、必要なパソコンはあなたを待っていたかのように絞り込めます。
満足感や、これで頑張れるという気持ちも、道具選びの大切な要素です。けれど、まずは今日、自分の事業を一行で書き出すところから始めてみてください。
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