記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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同じ服を何着もまとめ買いする前には、まず1着だけ買って着てみるはずです。それなのにチラシとなると、最初の1回で1,000部を刷ってしまう方が多いようです。
ラクスルはチラシを10部から刷れて、印刷から新聞折込・ポスティングの配布までまとめて頼めます。少しだけ刷って反応を見る順番が、最初から取れます。
刷ったチラシが手元に残る理由は部数ではなく、配る前に決めていない一行のほうにあります。
ラクスルでできること

ラクスルは、ラクスル株式会社(RAKSUL INC.)が運営するネット印刷サービスです。名刺やパンフレットも扱っていますが、起業準備を始めた方が最初に触れるのはチラシとフライヤーだと思います。
2026年7月時点の公式サイトを見ると、チラシ印刷の定型サイズはA3からA7、B4からB8までがそろっています。定型に当てはまらない場合も、45×45mmから297×420mmまでのオリジナルサイズで注文できます。用紙は光沢紙・マット紙・上質紙などから選べ、厚さは58kgから135kgの範囲です。
ただ、ここに並べた仕様は他のネット印刷でも似たようなものがそろいます。ラクスルを起業準備の入口として見たときに効いてくるのは、別の二つです。
- 少部数から刷れる:
チラシは10部から注文でき、試し刷りの感覚で出せる部数 - 配布までまとめて頼める:
印刷で終わらず新聞折込とポスティングの手配まで同じ画面から申し込める仕組み
この二つがあるので、刷るところと配るところを別々に探す手間がかかりません。起業準備の段階では、その手間の少なさがそのまま着手の早さになります。
100部の料金と納期の目安

ラクスルのチラシ印刷は10部から注文でき、A4・片面カラー・マット紙標準90kgの100部は、5営業日出荷を選ぶと1,311円(税込)です。これは2026年7月時点で公式料金表に表示されていた金額で、用紙、納期、届け先などの選び方によって上下します。
納期は当日出荷から選べて、日数を長く取るほど料金は下がります。試し刷りのつもりなら、いちばん日数のかかる納期でも十分間に合います。
チラシに使ったお金がもったいないと感じる方には、開業費の扱いも先に伝えておきます。国税庁の質疑応答事例では、開業費は繰延資産にあたるとされています。その償却のしかたは、60か月の均等償却か任意償却のどちらかです。開業前に使った費用を記録しておけば、あとから経費に回す道が残ります。自分の場合にどこまで含められるかは、税務署や税理士に確かめてください。
100部という部数を見て、少なすぎると感じた方もいると思います。ここでの目的は集客ではありません。自分が書いた一行が相手に伝わるかどうかを確かめることです。まずは100部だけ刷って、顔と名前が分かる相手に手渡してみてください。
刷る前に決める一行

起業準備をしている方が最初に作るチラシには、よく似た特徴があります。裏面いっぱいに「できること」が並んでいて、いちばん上に「何でもご相談ください」と書いてあります。書いた本人は親切のつもりですが、受け取った側は自分に関係のある紙かどうかを判断できません。
チラシが在庫として残るのは部数のせいではなく、刷る前に自分は何屋さんかという一行が決まっていないからです。ここが決まっていれば、100部でも配り切れます。決まっていなければ、1,000部あっても行き先がありません。
- 何屋さんか:
受ける仕事を一つに絞った言い方 - 誰に渡すか:
顔と名前が思い浮かぶ相手 - 次に何をしてほしいか:
電話・メール・見学のうちどれか一つの動作
この三つが埋まらないうちは、デザインをどれだけ整えても紙は動きません。注文画面に進む前に、自分は何屋さんかを一行だけ紙に書いてみてください。
20点で出して反応を見る

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、商品やサービスを100点にしてから出すのではなく、20点の完成度で世に出すという考え方を紹介しています。100点になるまで待っていたら、いつまでも出せません。チラシもまったく同じで、完成させてから配るのではなく、配ってから直したほうが早く仕上がります。
順番はこうです。まず100部だけ刷ります。次に、顔と名前が分かる相手に手渡して、読んだあとの反応を見ます。最後に、聞かれた質問と誰にも読まれなかった項目をもとに一行を書き直し、また100部刷ります。
- 交流会で名刺を交換した相手:
顔と名前が一致していて渡す口実もある先 - 同業ではない近所のお店:
レジ横に置いてもらえるか直接聞ける先 - 前職で世話になった取引先:
仕事ぶりをすでに知っている相手
手渡しなら、相手がどこを最初に読んだかまで分かります。ポスティングや折込では、相手が読んだかどうかまで拾えません。100部を配り切るころには、直すべき一行が自分で見つかります。
折込とポスティングの違い

一行が固まってから先の話になりますが、ラクスルは配布まで同じ画面で頼めます。手渡し・新聞折込・ポスティングの三つを並べると、費用と届く相手がはっきり違います。
| 配り方 | 最少部数と費用の目安 | 届く相手 |
|---|---|---|
| 自分で手渡し | 100部・1,311円(5営業日出荷・印刷のみ) | 顔と名前が分かっている相手 |
| 新聞折込 | 1,000部・5,995円から(印刷+折込) | 新聞を購読している世帯 |
| ポスティング | 1,000部・7,898円から(印刷+配布) | 指定したエリアの建物 |
新聞折込は印刷と折込を合わせて最少1,000部・5,995円から申し込め、印刷から折込まで最短3日です。最短で動くのは一都三県と一部の地域に限られるので、自分の配りたい先が該当するかは注文前に確かめてください。
ポスティングのほうは最少1,000部・7,898円からで、一軒家だけ・集合住宅だけ・会社と店舗は除く、といった指定ができます。配るエリアは地図から選ぶ形です。
どちらを選ぶか迷ったら、届く相手の違いから考えると決めやすくなります。日本新聞協会の調べでは、2025年10月時点の新聞の総発行部数は24,868,122部、1世帯あたりでは0.42部です。折込は新聞を取っている家にだけ届く配り方だという前提で、部数を見積もることになります。
ポスティングなら、新聞を取っていない家にも届きます。そのかわり、受け取った人がその場で処分しやすい配り方でもあります。どちらが優れているという話ではなく、届けたい相手がどちらにいるかで決めます。
配る範囲は最初から広げないほうが得です。折込を試すなら、配布エリアを市区単位で一つに絞ってから部数を決めてください。いきなり広げると、反応がどこから来たのか分からなくなります。
1,000部刷って400部が残った理由

メーカーで営業事務をしていた内藤さん(仮名・40代前半)は、受発注と請求まわりの事務代行で起業準備を始めました。最初に作ったチラシには「事務代行いたします。何でもご相談ください」と書いてありました。
1枚あたりの単価が下がるからと1,000部を刷り、配布は頼まずに自分で近所の郵便受けへ入れていきました。2ヶ月かけて配れたのは600部で、問い合わせはゼロでした。残りの400部は箱に入ったまま、部屋の隅に置かれることになりました。
紙の中身を見直したのは、地元の異業種交流会に自分から3回続けて出たあとでした。別業種の経営者から「毎月、請求書の発行だけが止まる」と言われ、困りごとの言い方が自分のチラシとまるで違うことに気づきました。そのあと起業18フォーラムの勉強会で、ほかの会員さんが受ける仕事を一つに絞って書いた例に触れ、自分の紙は何屋さんの紙なのか分からない状態だったと整理がつきました。
書き直した一行は「請求書の発行と入金確認を、月まとめでお引き受けします」。今度は100部だけ刷り、交流会で名刺を交換した相手に手渡していきました。最初に契約になったのは2社です。14ヶ月目には、毎月続けて受ける先が11社になりました。
事務代行が本業になった今も、内藤さんが刷るのは100部ずつです。半年に一度は一行を見直して、そのつど刷り直しています。
最初に手渡す相手が思い浮かばないという方は、配り先の探し方から先に整理しておくと動きやすくなります。

よくある質問

Q.チラシは何部から刷れますか?
ラクスルのチラシ印刷は10部から注文できます。この記事で勧めている100部の金額も、用紙とサイズと納期の組み合わせで変わるため、注文前に見積もり画面で確かめてください。なお100部の場合は配布を頼めないので、印刷だけを注文して自分で配る形になります。
Q.100部だけ刷るのは割高になりませんか?
1枚あたりの単価で見れば割高です。ただ、配り先が決まらないまま1,000部刷って残すほうが、実際に出ていくお金は大きくなります。単価ではなく、配り切れる枚数で選んでください。
Q.新聞折込とポスティングはどちらから試せばいいですか?
届けたい相手で決まります。地域の世帯に広く知らせたいなら新聞折込、建物の種類まで指定して届けたいならポスティングです。どちらも最少1,000部からなので、その前に100部の手渡しで一行を固めておくと無駄が出ません。
Q.急いで刷りたいときは何日くらいで届きますか?
最短では当日出荷を選べます。日数を長く取るほど料金は下がるので、急ぎでなければ余裕のある納期のほうが安く済みます。新聞折込は印刷から折込まで最短3日と案内されていますが、最短で動くのは一都三県と一部の地域に限られます。配布日が決まっている場合は、締切から逆算して余裕を持って入稿してください。
一行を決めてから100部を刷る

ラクスルの少部数印刷と配布のまとめ手配は、起業準備の段階では安く刷るための仕組みではありません。刷る前に決めきれていない一行を、軽い負担で何度も試すための仕組みです。
まずは100部です。刷る前に、自分は何屋さんかを一行だけ決めてください。決まったら100部だけ刷って、顔と名前が分かる相手に手渡します。相手の反応をもとに一行を書き直し、また刷ります。この往復を2回か3回まわしたころには、折込やポスティングに出しても通用する紙になっています。
何屋さんかが書いてある紙は、渡した相手の机の上に残ります。その一行を決めてから、注文画面を開いてみてください。
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