記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
Amazonマーケットプレイスを使った、古本のせどりを考えています。ブックオフで100円で見つけた本をいざ調べてみると、すでに1円で売られていることが多く、始める前から心が折れかけています。それでも何か方法はあるのではと諦めきれません。
古本せどりで利益を残すには、どこを変えればいいのでしょうか?

● 回答
1円本を避け、価格が崩れにくい「小さな棚」に絞り込めば、古本せどりでも利益は残せます。「全ジャンルを安く拾う」発想をやめて、買い手が値段で迷わないジャンルに棚を移すことが、儲からない状態から抜ける一番の近道です。
ブックオフの100円コーナーが1円になっている。この状況を見て「もう遅い」と感じる気持ちは、よく分かります。実際、価格差で稼ぎやすかった時代と比べれば、ただ安い本を拾って高く売る、という単純な勝ち方は通用しにくくなりました。大手リサイクル店もネット相場を見て値付けしているため、誰でも気づく「お宝」は仕入れ段階ですでに値段に織り込まれています。
ただ、それは「古本せどりが終わった」という話ではありません。勝てる場所が移っただけです。今日はその移った先を、順番に見ていきます。
なぜ100円本が1円になるのか
1円で売られている本には、共通点があります。発行部数が多く、誰でも仕入れられて、ほしい人より売りたい人のほうが多いジャンルだということです。話題になったビジネス書や人気作家の小説が、その典型になります。
こうした本は、出品者が値下げ競争を始めると一気に底値まで落ちます。Amazonでは本を売るたびに販売手数料15%とカテゴリー成約料154円(税込)がかかり(料率は公式の最新案内でご確認ください)、配送料も出ていきます。手元に残るどころか赤字になる価格帯でも、在庫を現金化したい人が出品を続けるため、1円という値段が成立してしまうのです。
つまり1円本は、あなたのリサーチが甘いから見つかるのではありません。誰もが同じ棚に殺到した結果、価格が崩れ切った場所だというだけです。だとすれば、打ち手は一つ。崩れていない棚を選び直すことになります。
「安く拾う」から「崩れない棚を取る」へ
ここで考え方の軸を変えてみてください。拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』では、起業を「陣取りゲーム」という言葉で表しています。広い場所で全員と戦うのではなく、すでにお金が流れている小さな一画を選んで、そこで一番を取るという発想です。
古本せどりに当てはめると、こうなります。全ジャンルの安い本を浅く拾うのは、誰もが入ってくる広い池で釣りをするようなものです。釣果は出品者の数に反比例して減っていきます。これに対して、買い手が値段より「在庫があるかどうか」で動くジャンルに絞れば、同じ池でも自分の取り分が残ります。
具体的には、絶版の専門書、特定分野の図鑑や画集、古い技術書、限られた読者に向けた洋書などです。これらは新刊で手に入らず、ほしい人は値段が多少高くても買うため、1円競争が起きにくい棚になります。冊数は出ませんが、1冊あたりに残る利益が違います。
- 誰でも仕入れられる人気書を浅く広く狙う:
出品者が多く値下げ競争に巻き込まれ、手数料を引くと赤字 - 話題になった直後のベストセラーに飛びつく:
中古供給が一気に増え、数か月で底値まで落ちやすい - 利益計算をせず「安いから」で仕入れる:
販売手数料・成約料・送料を引いた手残りが見えていない
避けるべきは、この3つです。逆に言えば、ここを外すだけで仕入れの精度はかなり上がります。
仕入れる前に「手残り」を1冊ずつ出す
絞る方向が決まったら、次は数字です。古本せどりで利益を残している人は、棚の前で必ず手残りを計算しています。売値から販売手数料、カテゴリー成約料、送料、そして仕入れ値を引いて、いくら残るかを1冊ごとに確かめてから買うわけです。
Amazonには無料の料金シミュレーターがあり、売値を入れれば手数料の概算が出ます。最初のうちは、手残りが300円を超える本だけを仕入れる、と自分でラインを決めておくと、1円本に手を出さずに済みます。このひと手間を飛ばすと、売れているのにお金が増えない、という古本せどりで最も多い行き詰まりに入ってしまいます。
もう一つ、回転の速さも見てください。いくら利益が残る本でも、半年売れなければFBAの保管手数料がかさみ、現金が在庫に変わったまま動きません。1か月から2か月で売り切れる見込みの本を選ぶのが、無理なく続けるコツになります。
仕入れを「人にやってもらう」発展形もある
もう少し先まで考えるなら、自分で店をまわって探す形から、仕入れの一部を人に頼む形へ広げる道があります。たとえば、高齢の店主がひとりで営む街の古本屋さんと組み、ネット販売の部分だけを引き受ける。あるいは蔵書を整理したい人から、まとめて買い取らせてもらう。
店頭に並ばない本にアクセスできれば、それだけで競争相手の少ない棚を持てます。これも、誰もが入れる池の外に自分の漁場をつくるという、陣取りの一つの形です。すぐに始める必要はありませんが、絞り込みが軌道に乗ったら検討する価値があります。
物販という土俵の「いま」を数字で見る
棚を絞る話の前提として、物販そのものの状況も冷静に押さえておきましょう。日本政策金融公庫が2024年11月27日に公表した2024年度新規開業実態調査では、開業した業種はサービス業が29.2%で最多、医療・福祉15.7%、飲食店・宿泊業14.5%と続き、小売業の割合は前年度より低下しています。
ここから読み取れるのは、店を構えて仕入れて売る形の小売・物販が、開業の主流から外れつつあるという事実です。在庫を持ち、価格競争にさらされやすい商売は、起業の入口としては選ばれにくくなっている。古本せどりの1円競争も、この大きな流れの一部だと考えると腑に落ちます。
では物販はやめるべきか、というと、そう単純でもありません。同じ小売・物販でも、誰もが扱える商品を安く回す形は厳しく、扱える人が限られる棚は残ります。この記事でお伝えしている「絞り込み」は、逆風の中で残っている側に立つための具体策です。データが示す傾向と、棚を絞るという打ち手は、同じ方向を向いています。
1円本に埋もれた人が、棚を絞って抜け出すまで
起業18フォーラムにいた海野さん(仮名・40代前半・男性・電機メーカー資材調達職)は、最初は独学で古本せどりを始めた方です。週末にブックオフをまわり、安い本を片端からスマホで調べては仕入れていました。けれど半年たっても、売れてはいるのに手元のお金はほとんど増えません。1円や数十円の本ばかりで、手数料と送料を引くとほぼ残らなかったからです。
変わり始めたのは、フォーラムの勉強会で他の会員さんの仕入れノートを見せてもらったことでした。その人が扱っていたのは絶版の機械系専門書ばかりで、冊数は自分の半分以下なのに、1冊の手残りが桁違いだったのです。「自分は誰でも拾える棚で消耗していた」と気づいた海野さんは、勉強会で陣取りゲームの考え方を教わり、棚を絞り直すことにしました。
選んだのは、前職の資材調達で日常的に触れていた技術書と工業系の規格関連書籍です。どこに価値があるか、どの版が探されているかが体感で分かる分野でした。フリマや古書市で見つけては、手残りを1冊ずつ計算して仕入れる。冊数を追うのをやめ、「探している人がいる本だけ」を扱うように変えていきました。
はじめて数か月で、月の販売冊数は前より減りました。それでも手元に残る利益は逆に増え、何より同じ本を探す常連の買い手が少しずつついたそうです。今は、専門学校や中小メーカーの担当者から「この分野の本があったら教えてほしい」と声がかかるようになり、仕入れた本がほぼ売れ残らない状態になっています。安く拾う作業から、詳しい棚を任される立場へ。海野さんはそう振り返っていました。
- 誰でも拾える棚は出品者の数だけ取り分が減る
- 自分の経歴で目利きできる分野が「勝てる小さな池」になる
- 冊数より1冊の手残りと、売れ残らない回転を見る
- 常連がつくと仕入れた本が探される側に変わる
「やめ際」もあらかじめ決めておく
絞り込みを試しても手応えが出ないときのために、引き際も先に決めておくと安心です。古本せどりは在庫を持つ商売なので、ずるずる続けると現金が本の山に変わってしまいます。
たとえば「3か月やって、手残りが毎月の小遣い分に届かなければ別の形を考える」といった具合に、期間と金額の線を1本引いておく。この線がないと、損切りの判断が感情に引っ張られ、売れない在庫を抱えたまま時間だけが過ぎていきます。引くこと自体は失敗ではなく、次の打ち手に資金と時間を回すための前向きな判断です。
古本せどりは、絞れば残せる商売であると同時に、絞っても合わないなら早く見切れる商売でもあります。両方を最初から持っておくのが、在庫リスクのある物販と長く付き合うコツになります。
仕入れを人に任せる発展形について、街の古本屋さんとの提携を考えている方は、こちらの記事も参考になります。

今日できることは、いつものブックオフで「自分の前職で値打ちが分かる棚」を1か所だけ眺めてみることです。1円本の山から目を上げると、まだ崩れていない一画が見えてくるはずです。
よくある質問

Q.Amazonとメルカリ、古本を売るならどちらがいいですか?
- Amazonは検索で見つかりやすい反面、販売手数料15%とカテゴリー成約料154円(税込)がかかる
- メルカリは販売手数料が一律10%で、出品の手軽さが利点
- 探されやすい専門書はAmazon、写真で魅力が伝わる本はメルカリと使い分ける手もある
どちらか一方に決め切る必要はありません。手数料の最新の数字は各社の公式案内で確認したうえで、扱う本のジャンルに合う販路を選んでください。専門書のように「探されて買われる」本はAmazon、状態や装丁が魅力になる本は写真で訴求できるメルカリが向きやすい、という違いがあります。
Q.古本せどりの利益率は、どのくらいを目安にすればいいですか?
- 手数料・送料・仕入れ値を引いた「手残り」で考える
- 1冊あたりの手残り300円を当面の足切りラインにする
- 冊数より、売れ残らない回転の速さを優先する
利益率の数字だけを追うより、1冊ごとの手残り額と回転を見るほうが現実的です。料金シミュレーターで手残りを出し、当面は300円を超える本だけを仕入れると決めておけば、1円本に時間を取られずに済みます。
転売や仕入れの転換に悩んだら、ひとりで抱え込まずに同じ立場の仲間に相談してみてください。同じ池で消耗していた人ほど、棚を絞る話に深くうなずいてくれるものです。
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