記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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会社を辞めて起業するなら、事業が失敗するパターンについて知っておき、未然に防ぐことが大切です。

起業後に倒産・廃業に至るケースには典型例があり、そうした事態を避けるための対策を講じておくだけでも、失敗のリスクを大きく下げることができます。
今回は、独立起業で失敗を招くパターンや、その回避策について詳しく見ていきましょう。
失敗を招くのはどんな理由?

理想と希望に燃えて会社を辞めて起業しても、必ずしも成功するとは限りません。実際、起業後まもなく会社を潰してしまう、あるいは事業の継続を諦めてしまうという起業家は多数います。
独立起業で失敗してしまうのは、次のようなケースです。
事前に市場調査を十分に行わない
自らのアイデアの正しさや思い描いている成功の形を信じ込み、市場調査を十分に行わないで起業し、失敗するというパターンは多くあります。
起業をする場合、自分が参入しようとしている市場の動向、規模、競合他社の数とそれぞれのシェアを正確に調査し、自分たちがどのような立ち位置で事業展開を行うのかを明確にしておく必要があります。
こうした調査が不十分のままだと、参入してから勝ち目のない大手企業と競合する、多数の競争相手がいて利益が上がらないといった事態に陥り、当初の計画通りに事業を運営できなくなってしまいます。
サラリーマン時代の人脈をあてにし過ぎる
会社員として作ってきたコネクションを頼って起業した場合、初めのうちは、お付き合いで取引してくれる人もいると思います。
しかし、そうした人とのつながりは、徐々に薄れていきます。影響力が下がれば、顧客離れが起こります。また、自分で立ち上げたサービスのクオリティが低ければ、リピートしてくれる可能性も低く、一周したら終わってしまうことになります。
新しい顧客を開拓しつつ、既存のお客様にクオリティの高いサービスを提供しなければならない。それ以外にも事務も雑用もいっぱいです。一人で起業するということは、それだけ大変なことなのです。
企業組織の慣習を引きずる
起業家の中には、起業後も、サラリーマン時代の仕事に関係することばかりに関心を持つ人がいます。たとえば、研究開発部門に所属していた人なら、起業すると製品開発ばかりが気になり、営業や財務などの重要な仕事が疎かになる場合があるのです。

かと言って、不得意な仕事を抱え込んで、業績が上がらないようでは話になりません。経理は税理士、営業は代理店やマーケティング会社をうまく活用するなど工夫し、弱点を補いながら経営をすることが大切です。
「大きく」始めようとする
独立起業する際、見栄を張って秘書を雇う、一等地にオフィスを借りるなど、余計な出費を重ねるケースが少なくありません。人によっては、社長になったということから、身なりにお金をかけ過ぎるケースもあります。
こうした「見栄」に出費し過ぎるのは、全くの無駄です。
起業時にお金を借り過ぎる
起業時に金融機関や知人に融資を受けすぎて、その利息の支払いや返済への対応に負われ、事業継続が難しくなる場合があります。
お金を借りられるということ自体は、信用があるという意味でも素晴らしいことですが、依存度が高くなると大変です。返済の負担が日々の事業運営を圧迫し、倒産・廃業のリスクを高めてしまいます。
失敗を回避する方法は?

では、上記の5つの失敗パターンを避けるには、どのような方法が考えられるのでしょうか? 以下で、順番に解説していきます。
起業前に市場調査を行う
必要に応じてマーケティングの専門家にも依頼したり、起業前にモニター販売をしてみるなど、市場調査は念入りに行いましょう。
特に、市場規模と将来性、競合企業の市場シェアは詳細にチェックして、起業した後に事業の成功・成長が見込めるのか、十分に検討しましょう。
ここでポイントになるのは、起業ありきで考えないということです。もし、事前の市場調査で思い描いていたような市場構造ではないことが判明したら、いったん会社を辞めるのは延期する必要も出てくるでしょう。
クオリティチェックを怠らない
売上を伸ばすには、新規開拓の営業力だけでなく、商品の改善に力を入れ、リピーターを確保することが重要です。
新規開拓については、サラリーマン時代のツテを頼って営業を行うだけでは、すぐに限界がきます。競合企業に勝る商品を開発し、質の高い情報発信を怠らずに続けることが、生存につながるでしょう。
経営に必要な知識を身につける
創業時は従業員も雇えず、外注費も無いため、自分で経理や広告、総務など幅広い役割をこなすことが求められます。
サラリーマン時代であれば、自分の専門領域以外の機能は、別の社員がやっていました。しかし、起業するとそのような分担はできません。
起業をするにあたっては、経営に関する幅広い知識を身に付けておくことが大切です。

見栄を張るのは軌道に乗ってから
良い立地にオフィスを構えたい、高収入を得たい、生活のステータスを上げたいといった望みは、起業家にとって強力なモチベーションになり得ます。それ自体は否定する必要はありません。
しかし、起業してすぐに、そのようなことにお金をかけることは控えましょう。事業が軌道に乗り、企業がある程度成長し、余裕が出てからにするべきです。
融資以外の資金調達を検討する
融資はできるだけ受けず、自己資金の比率を高めましょう。負担が少ない方が、倒産・廃業のリスクが当然小さくなります。
融資以外の資金調達方法には、退職金、車や株券などの資産の売却、クラウドファンディングなどもあります。様々な可能性を模索しましょう。
失敗を知り、事前に回避する努力を

独立起業に失敗する典型的なパターンとしては、事前に市場調査を十分に行わない、サラリーマン時代のコネをあてにし過ぎる、企業組織の慣習を引きずる、スタート時点から「大きく」始めようとする、起業時に融資を受けすぎる、などがあります。
こうしたパターンに陥らないように十分注意して、失敗を回避しましょう。
なぜ「パターンを知っていても」失敗するのか

帝国データバンク「2025年の倒産件数調査」によると、2025年の企業倒産件数は10,261件(前年比3.6%増)を記録し、2013年以来12年ぶりに年間1万件を突破しました。増加の中心はサービス業・小売業・建設業の中小企業です。「失敗するパターンがわかっていれば防げる」と思いたいところですが、現実はそう単純ではありません。
拙著『起業神100則』に「成果が出ないときの原因は『漠然』にあり」という考え方があります。具体的な数値目標がなく、「なんとなく起業したい」「いつか独立したい」という状態のまま動いていると、どんな知識も機能しません。失敗パターンを知識として持っていても、自分の行動に落とし込まれていなければ、同じ轍を踏むことになります。
起業18フォーラム代表 新井一の現場より:「相談者の方にどのパターンを気をつけるべきか話すと、多くの方が『それは知っています』とおっしゃいます。しかし知っているのと、行動を変えるのは別のことです。26年の支援経験で感じることは、失敗は知識不足ではなく、具体的な計画の不在から起きることがほとんどです」
「漠然」を防ぐための具体的な問いかけ
- いつまでに、月いくらの売上を目指すか数字で言えるか?
- 最初の顧客は誰で、どうやってアプローチするか具体的に決まっているか?
- 起業後に失敗したとき、最初にどうするかが決まっているか?
3つの問いに答えられない状態は「漠然」のサインです。答えが出てから動くのではなく、答えを出すために動いてみてください。小さな一歩が「漠然」を「具体」に変えます。
現場で見えた、もうひとつの落とし穴

ここまで紹介した5つのパターン以外にも、起業18フォーラムの支援現場では繰り返し目にする「失敗の前兆」があります。
- 「仲間と情報共有だけ」で終わる:勉強会・交流会に参加するだけで、実際の顧客へのアプローチが起きていない状態
- フィードバックを求めない:家族・友人に「どう思う?」と聞いて「すごいね」で満足する。実際の顧客候補への検証ゼロ。
- 「準備が完璧になってから」待機:名刺・ウェブサイト・資料が揃ってから動こうとして、永遠に始まらない
起業18フォーラムの会員Jさんは、40代前半・IT系会社員(既婚・子2人)で個人向けITコンサルとして起業準備を始めた方です。失敗パターンの知識はお持ちでしたが、スタートから3ヶ月は「サラリーマン時代の人脈頼り」のアプローチだけに集中しました。4ヶ月目に「具体的な数値目標がなかった」と気づき、月次売上目標と顧客リストを設定して動き直しました。起業から12ヶ月目に月収18万円・2社との継続顧客を持ち、会社員と両立しながら独立の準備を進めています。
失敗パターンを「知っている」から「防げている」状態に変えるには、「今週・今月・今四半期に何をするか」という具体的な行動リストが必要です。抽象的な「気をつける」は、時間が経つと消えてしまいます。
失敗パターンをリストアップしたら、そのまま「自分の行動に照らし合わせるチェックリスト」に変換してみてください。週に一度、見直す習慣をつけるだけで、リスクの察知力が大きく変わります。
よくある質問

Q.「人脈が少ない」と失敗しやすいですか?
- 人脈の「数」より「深さ」が重要。困ったときに電話してくれる人が3人いれば十分
- 人脈ゼロでも、SNS発信やコミュニティ参加で今日から始められる
人脈が少なくても、最初の一人を丁寧に満足させることで、口コミが広がります。スタートのハードルを下げることが先決です。
Q.「失敗を恐れすぎる性格」でも起業できますか?
- 失敗を恐れるのは「大きなリスクをとろうとしているから」。小さく始めればリスクは小さい
- 「最悪の場合、何が起きるか?」を書き出してみると、恐れが具体化されて対処可能になる
慎重な性格は、起業における「冷静なリスク管理能力」になります。慎重さは欠点ではなく、長期で続ける起業家の強みです。

失敗パターンを知ることは、地図を持って旅に出るようなことです。道に迷いそうになったとき、地図があれば軌道修正できます。知識を行動に変えることが、失敗しない起業への第一歩です。
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