本を書く時には、どう日程を決めて、どのくらいの時間で書くのでしょうか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

アマゾンでKindle本を出版したいと考えています。毎日会社に通いながら、忙しい中で書くことになります。新井さんは本を書くとき、どのように日程を組み立てているのでしょうか?

資料集めや目次づくり、執筆を進めるのに、一冊あたり何文字くらい、どのくらいの時間をかけるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

Kindle本なら、文字数は2万字ほど、期間は2カ月もあれば一冊書き切れます。商業出版だと半年から1年が一般的です。最初に決めるべきは、文字数よりも日程のほうです。

Kindle本、ぜひ最後まで形にしてください。ここで一冊書き切る経験は、そのまま本格的な商業出版にもつながっていきます。執筆でいちばん大切なのは、文章のうまさでも資料の量でもなく、最後まで書き切れるかどうかの一点です。

会社に通いながら書く以上、勢いだけでは途中で止まります。だからこそ、書き始める前に日程の決め方を整えておくと、最後までたどり着けます。文字数の目安・期間・つまずきやすい資料集め・そして会社員のいま本を出す意味まで、順番にお答えします。

日程は「最短」と「最低限」の二本立てで先に決める

まず日程の話からします。ここが、忙しい中で書き切れるかどうかを分ける一番の勘どころだからです。おすすめは、締め切りを一本ではなく二本立てで決めておくやり方です。

  • 最短日程:
    うまく進めば書き上がる、理想のゴール。「2カ月で初稿」のように、少し背伸びした目標を置きます。
  • 最低限の日程:
    何があってもここまでには出す、という最終ライン。「遅くとも4カ月後」のように、余裕を持たせた絶対の締め切りにします。

締め切りが一本だけだと、少しでも遅れたときに「もう間に合わない」と感じて、そのまま投げ出しがちになります。最短と最低限の二本を持っておけば、最短に届かなくても最低限までに着けばいいと思えて、苦しくなりすぎずに続けられます。

編集者がつく商業出版では、この日程は相手の進め方にも左右されます。著者の原稿をなるべく生かす編集者もいれば、何度も書き直しを求める編集者もいて、私自身、一冊に1年ほどかけたこともあります。一方Kindleは自分一人で完結するので、日程も自分で握れます。だからこそ、締め切りを自分で2つ決めておくことが効きます。

Kindleなら2万字・2カ月が現実的な目安

では、どのくらいの分量を、どのくらいの期間で書けばいいのか。Kindle本の場合、文字数は多くなくてかまいません。2万字ほどあれば、電子書籍として十分に一冊の体裁になります。紙の本のように何百ページも必要ない、というのが電子書籍の身軽なところです。

2万字という分量は、たとえば1日に1,000字ずつ進めれば20日で初稿に届く計算です。平日は通勤の行き帰りに構成を考え、週末にまとめて書く、といった進め方でも、2カ月あれば初稿は十分に見えてきます。実務でも、原稿そのものは早ければ2カ月ほどで書けるとされ、表紙や校正まで含めた全体ではもう少し見ておくのが一般的です。

書く道具も、いまは特別なものは要りません。Wordでも、無料のGoogleドキュメントでも、スマートフォンの音声入力でも、書きやすい手段で初稿を作れます。通勤中に話しかけて下書きを溜め、週末に整える、という人も増えました。

完成した原稿をKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)に登録すれば、審査を経て数日ほどで販売が始まります。道具より、毎日少しずつ進める習慣のほうが、ずっと結果を左右します。

資料集めは一気に。「10冊読んでから」では一生書けない

初稿が進まない人の多くは、書く前の準備で止まっています。とくに資料集めは、底なし沼になりやすい工程です。学ぶ必要があるときは、類書を一度にまとめて集め、短期間で一気に目を通してしまうのがコツです。だらだら何週間もかけないことが大事になります。

「10冊読んでから書こう」と考えていると、いつまでも一行目が書けません。準備が完璧に整う瞬間は、いつまで待っても来ないからです。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、起業を「案ずるより産むがやすし」と紹介しています。本を書くのもこれと同じで、頭の中で完成形を練り続けるより、まず初稿を最後まで書き切ってしまうほうが、ずっと早く前に進みます。

この「まず一周させる」考え方は、一冊を書く工程にもそのまま当てはまります。最初から名著を狙わず、材料を集めるリサーチ、とにかく初稿を書き切る検証、読み直して整える定着の三段階に分けてしまうと、肩の力が抜けます。完璧な原稿を一発で書こうとせず、まずは荒くても最後まで通すことを、最初のゴールに置いてください。

忙しい会社員のいま、本を出す意味

最後に、なぜ会社に通いながら本を書くことに意味があるのかにも触れておきます。一冊の本は、出来上がったあと、あなたの名刺代わりになって長く働き続けてくれるからです。

市場の追い風もあります。全国出版協会・出版科学研究所が『季刊出版指標』2026年冬号で示した数字では、2025年の電子出版市場は5,815億円で、前年より2.7%伸びました。このうち電子書籍(文字ものなど)は459億円で、こちらも1.5%の増加です。

紙の市場が縮むなかでも、電子出版市場全体と電子書籍(文字ものなど)が前年を上回っている事実から読み取れるのは、個人が一人で出せる電子書籍が、いまだに広がり続けている入口だということです。資金も在庫も要らず、勤めを続けながら一冊から始められる場所が、年々大きくなっています。

起業18フォーラムの会員に、湯川さん(仮名・40代)という方がいます。住宅設備メーカーで法人営業を続けながら、自分の交渉ノウハウをKindle本にまとめたいと考えていました。最初は独学で書き始めたものの、章をいくつも盛り込みすぎて構成がふくらみ、半年たっても初稿が仕上がらずにいたそうです。

流れが変わったのは、勉強会で受けた助言でした。「最初の一冊は二万字で十分。テーマを一つに絞りましょう」と言われ、湯川さんは内容を「初回訪問でのつかみ方」だけに絞り直しました。そのうえで、最短二カ月・最低限四カ月の二本立てで締め切りを引き直したそうです。

書き上げた一冊そのものより、大きかったのはそのあとの変化でした。本を読んだ人から「うちでも研修を」と声がかかるようになり、問い合わせの入り口が、これまでの飛び込み中心から「本を読んだ人からの相談」へと移っていったのです。営業先で渡す資料が一冊の本になったことが、効いていました。

本を書くという行為は、自分の経験を棚卸しして一本の筋に通す作業でもあります。書き上がった一冊は、売上そのものより、あなたが何の専門家かを静かに証明し続けてくれます。

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ポイント よくある質問

文字数・執筆時間・公開までの流れに答える質問集

起業前質問集

Q.Kindle本に最低文字数の決まりはありますか?

KDPに「これ以上でなければ出せない」という最低文字数の規定はありません。実務的な目安としては、1万5千字から2万字ほどあれば、一冊として読み応えのある分量になります。短くても、一つのテーマを最後まで解決できていれば十分です。むやみに長くするより、読者の悩みが一冊で片づくことのほうが大切になります。

Q.会社員でも、平日に書く時間はとれますか?

まとまった時間を一度にとる必要はありません。通勤の往復で構成を考え、昼休みに数百字、週末にまとめて書く、という積み重ねで初稿は進みます。1日1,000字を目標にすれば、2万字でも3週間ほどで初稿の形が見えてきます。大事なのは長く座ることではなく、毎日少しでも触れて、書きかけのまま放置しないことです。

Q.書き上げてから、実際に売れるまでどのくらいかかりますか?

原稿が完成したあと、表紙の用意とKDPへの登録を済ませると、審査を経て早ければ数日ほどで販売が始まります。審査にかかる時間は内容や時期によって幅がありますが、多くは数日以内に終わります。公開そのものは思ったより早いので、むしろ初稿を書き切るところに、いちばん時間と気持ちを使ってください。

今日できることは、書きたいテーマを一つに絞って、最短の締め切りと最低限の締め切りを、カレンダーに二つだけ書き込んでおくことです。日付が決まった瞬間、頭の中の構想は、ようやく前に動き出します。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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