65歳で再雇用も終了、年金をもらいながら小さく起業準備はできる?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

来年65歳で、再雇用の契約も満了になります。年金は受け取れる年齢になりましたが、それだけで安心とは言い切れず、何より一日中やることがない暮らしが想像できません。

年金をもらいながら、無理のない範囲で小さく起業の準備を進めたいのですが、こんな年齢から始めても大丈夫でしょうか。年金が減ってしまうことはないのでしょうか?

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● 回答

できます。むしろ、年金という土台がある65歳からの起業準備は、現役世代より気持ちの面で楽に始められます。生活費を稼ぎ切る必要がないぶん、最初から「月5万円」という低い目標で十分に成り立つからです。大きく稼いで独立する話ではありません。年金に少し足して、社会とのつながりを保ちながら自分の裁量で動く。その規模なら、体力にも年金にも無理をさせずに準備を進められます。

私自身も、再雇用の満了を控えた方々の相談を数多く受けてきました。多くの方が口にするのは「お金よりも、行き場がなくなるのが怖い」という本音です。順番に整理していきましょう。

そもそも65歳からの就業は、もう珍しくない

まず前提として、定年や再雇用の満了後に働き続ける人は、いまや特別な存在ではありません。総務省統計局が2025年に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の就業者数は930万人で、就業者全体に占める割合は13.7%と、いずれも過去最高を記録しています。

この数字を「みんな生活が苦しいから」とだけ読むのは早計です。相談の現場で会う方々の多くは、生活のためというより、培ってきた経験を生かす場や、人と関わる時間を求めて動いています。だからこそ、雇われる形にこだわらず、自分で小さく始めるという選択肢が現実味を帯びるのです。

気になる「年金は減るのか」への答え

結論から申し上げます。会社などに雇われて厚生年金に加入しながら働くと、給与や賞与の額によっては年金の一部が止まる仕組み(在職老齢年金)があります。一方で、自分で事業を営んで得る事業所得だけで、直ちに在職老齢年金の停止対象になるわけではありません。小さく起業して得た収入については、給与として雇われる場合とは分けて考える必要があります。

金額の基準は制度改正で変わっていきます。ですから「いくらまでなら大丈夫」という数字を覚えるより、「厚生年金に加入して働く給与・賞与が判定の中心になる」という構造を押さえておくほうが安全です。正確な自分の年金額や扱いは、年金事務所や「ねんきんネット」で確認できます。準備の入口で一度確認しておくと、安心して動けます。

  • 給与収入(雇われて働く):
    厚生年金加入+一定額超で年金の一部が停止する場合あり
  • 事業所得(自分で小さく起業):
    給与とは別枠で確認。厚生年金加入の働き方とは分けて考える
  • 確認の窓口:
    年金事務所・ねんきんネットで自分の受給額と扱いを確認
ステップ1:稼ぐ額ではなく「月5万円の上限」を先に決める

準備の出発点は、目標額を高く置かないことです。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、月5万円の小さな起業について「今の仕事を辞める必要もなく、大きな投資もいらないので、うまくいかなければいつでもやり直せる」という考え方を紹介しています。

この「月5万円」という線引きには、もう一つ大事な意味があります。月5万円と月10万円の間には、ひとりで無理なく回せるか、人の協力や仕組みが必要になるかという境界があります。たくさんの人の手を借りないと回らないビジネスは、もう月5万円規模の手軽さを越えています。65歳からの準備では、まずこの境界の手前、つまり自分ひとりで完結する範囲に絞ると、体力にも生活にも負担をかけずに済みます。

ステップ2:これまでの仕事を「教える・相談に乗る」に変換する

次に、何を売るかです。ここで無理に新しいスキルを身につける必要はありません。長く続けてきた仕事の経験そのものが、いちばん元手のかからない商品になります。

たとえば、起業18フォーラム会員の鵜飼さん(仮名・60代後半)は、金融機関に長く勤め、嘱託としての再雇用も満了を迎えた方でした。最初は「専門知識といっても、もう現役の制度には詳しくないし」と、自分の経験を低く見ていらっしゃいました。転機になったのは、年金の相談で訪れた年金事務所の相談会で、同年代の人たちが「お金の話を誰に聞けばいいか分からない」とこぼしているのを耳にしたことです。

そこで鵜飼さんは、若い世代に向けた家計やお金の付き合い方の相談を、対面と少人数の勉強会の形で始めました。準備に10か月かけ、現在は月5.5万円ほどの収入になっています。大きな額ではありませんが、年金に上乗せされる5.5万円は、暮らしにも気持ちにもちょうどよい余白を生んでいます。

ステップ3:体力と相談しながら、小さく試す

最後のステップは、いきなり形を整えず、小さく試すことです。65歳からの準備で現役世代と違うのは、体力という変数を必ず計算に入れる点にあります。週に何日、一日に何時間なら無理なく動けるか。そこを先に決めてから、商品の規模を合わせていきます。

鵜飼さんも、最初から教室を構えたわけではありません。知人ひとりの相談に無料で乗るところから始め、相手の反応を見ながら少しずつ形にしていきました。完璧な準備が整うのを待つより、20点の状態でいいので、まず身近なひとりに試してみてください。そのひとりの反応が、次に進む方向を教えてくれます。

  • 稼ぎ切る目標ではなく、年金に上乗せする月5万円から設計
  • 新しい資格より、長く続けた仕事の経験を商品にする
  • 体力に合う稼働日数・時間を先に決めてから規模を合わせる
  • 知人ひとりへの無料相談から、反応を見て少しずつ形にする

年金という土台があるからこそ、65歳からの起業準備は焦らずに進められます。お金のためだけでなく、社会とのつながりや、自分で決めて動く手応えを取り戻すための準備でもあるのです。

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来年65歳を迎えるいまは、不安よりも準備に向く時期です。まずは自分の年金額を一度確認し、月5万円の範囲で何ができそうか、一行だけ書き出してみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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