記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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海中道路を渡ればエメラルドグリーンの海と養殖いかだが広がり、車を10分ほど戻せば大型トラックが行き交う工業団地に着く。うるま市は、そんな対照的な二つの顔を車で行き来できるまちです。
うるま市で起業を考えるなら、人口127,540人(うるま市人口統計・2026年7月1日時点)のこのまちに広がる中城湾港新港地区の製造業ネットワークと、海中道路でつながる離島の観光需要という、性格の異なる二つの土台を組み合わせて考えるのが近道です。
那覇のベッドタウンとして語られることが多いうるま市ですが、経済特区に指定された工業団地と、観光客が行き交う離島の両方を実際に抱えている点で、沖縄本島の他の街とは事情が違います。この二つの土台をどう組み合わせるかによって、うるま市で仕事を作る道筋は大きく変わります。
うるま市はどんな街か 中城湾港の製造業集積と離島観光が同居する構造

うるま市は沖縄本島中部に位置し、人口127,540人(男性63,890人・女性63,650人・うるま市人口統計・2026年7月1日時点)を抱える沖縄県内でも規模の大きい市です。那覇市への通勤圏でありながら、独自の産業基盤を持っている点が見落とされがちです。
市の西側には中城湾港新港地区を中心とする国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区という経済特区が広がり、製造業や物流業の企業が集まっています。一方で市の東側には全長約4.75キロメートルの海中道路が延び、平安座島・宮城島・伊計島・浜比嘉島という四つの離島を結んでいます。
この二つの顔を同じ市内に持っているからこそ、「うるま市で起業する」と一言でいっても、狙う客層によって考え方はまったく違ってきます。
うるま市で起業を考えるなら、製造業クラスター向けの事業と離島観光向けの事業のどちらに軸足を置くか、あるいは両方をどうつなぐかを、最初に見極めることが欠かせません。那覇のベッドタウンという見え方だけで判断すると、この二つの需要を見落とします。
製造業集積が生む需要 中城湾港新港地区という土台

中城湾港新港地区を中心とする国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区は、沖縄振興特別措置法に基づく経済特区です。対象事業や設備などの要件を満たし、沖縄県知事による事業計画の認定を受けた事業者は、国税・地方税の優遇措置の対象となる場合があります。
製造業では食品加工や水産加工の企業が目立ち、物流業では那覇港や中城湾港を経由する貨物を扱う企業が集まっています。工場や倉庫が集まるということは、そこで働く人・出入りする業者・急な依頼に応える下請けなど、地元の会社員でも入り込める需要が日々生まれているということです。
- 税制の優遇:
対象事業・設備や県知事による事業計画認定などの要件を満たす場合に、国税・地方税の措置 - 低利融資:
沖縄振興開発金融公庫による設備投資・運転資金向け融資(要審査) - 市の創業・事業者支援:
制度内容、対象、募集期間は年度ごとに異なるため、現在募集中の公募を確認
工業団地全体を客層にしようとせず、まず自分が関われる一社・一業種の困りごとから考えてみてください。製造業の集積地では、規模の大きい会社ほど「小さすぎて自社では対応しきれない」作業を外に出したがっている場合があります。
海中道路が結ぶ4つの離島観光という土台の実情

海中道路は与勝半島と平安座島を結び、そこからさらに宮城島・伊計島・浜比嘉島へと橋が続いています。津堅島へは平敷屋港からフェリーで約30分、高速船で約12分です。
津堅島はにんじんの産地として知られ、収穫期の1〜5月には島全体がにんじん畑になります。浜比嘉島では2022年7月、旧中学校を活用した地域交流拠点施設「HAMACHŪ(はまちゅー)」に「LivingAnywhere Commons」が開設され、ワーケーションや移住希望者の受け入れを行っています。
その一方で、うるま市の島しょ地域(平安座島・宮城島・伊計島・浜比嘉島・津堅島)の人口は、2007年(平成19年)から2018年(平成30年)の約11年間で約25%減少していると、うるま市人口ビジョン(改訂版)で示されています。観光で人が訪れることと、そこで暮らしながら仕事を続けられる人が増えることは、別の課題だということです。
離島観光という土台は、景色を見せるだけでは仕事として続きません。訪れる人と、そこに関わり続ける人の両方をどう作るかが、離島側の起業ではいつも問われます。
工場を狙うか島を狙うかの二択を超える発想

うるま市で起業を考える人の多くは、「製造業クラスターを狙うか、離島観光を狙うか」という二択で立ち止まります。ですが、この二つは競合する選択肢ではなく、どちらも「うるま市にしかない需要」という同じ土俵の別の面にすぎません。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、広い市場全体を狙うのではなく、特定の客層や業種に絞り込み、その小さな世界で一番の存在になる考え方を紹介しています。うるま市のように性格の異なる二つの需要がある街ほど、この絞り込みが効いてきます。
- 製造業特化型:
中城湾港新港地区の特定業種(食品加工・水産加工など)に絞った資材調達・梱包・検品代行などの下請けサービス - 離島観光特化型:
津堅島や浜比嘉島など特定の島の、特定の客層(ワーケーション滞在者・リピーター観光客など)に向けた案内・体験サービス - 掛け合わせ型:
工業団地で働く人向けに、休日は離島へ足を延ばすツアーや商品を案内するなど、二つの需要を橋渡しするサービス
うるま市で起業を考えるなら、製造業クラスターと離島観光のどちらか一方を選ぶのではなく、そのうちのどこか一点に絞り込んで深く関わることが、埋没しない道になります。両方を薄く狙うより、どちらかの現場に足を運び続けるほうが、結局は早く形になります。
会員事例 東江さんが工業団地で見つけた一番の商機

東江さんは、中城湾港新港地区にある食品加工会社で生産管理を担当する40代前半の男性会社員です。仕事柄、地区内の複数の食品加工・水産加工の会社と資材のやり取りをするうちに、どの会社も梱包資材の細かい発注ロットに悩んでいることが気にかかっていました。
ある日、付き合いの長い資材卸の担当者と昼食に行った際、思い切って「うちの発注のやり方、正直どう見えてる?」と聞いてみました。返ってきたのは、地区内のほかの食品加工会社からも似たような愚痴をよく聞くという話でした。気になった東江さんは、別の水産加工会社の工場長にも同じ質問を投げてみると、案の定「小ロットを急な納期で対応してくれる梱包資材の業者がいない」という同じ答えが返ってきました。
その気づきをどう形にすればいいか分からず、東江さんはしばらく動けずにいました。流れが変わったのは、起業18フォーラムの勉強会に参加し、他の会員から拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』の「小さな世界で一番になる」という考え方を教わったことでした。工業団地全体を相手にするのではなく、食品・水産加工向けの冷蔵対応梱包資材という一点に絞る決断は、この勉強会での話し合いを経て固まったといいます。
絞り込んだ東江さんは、まず自社の取引先1社に小ロット即日対応の梱包資材卸を試験的に提案しました。最初の契約は月3万円ほどでしたが、口コミで依頼が広がり、契約から1年ほど経った今では取引先が9社に増え、月商は当初の約10倍まで伸びています。工業団地の中の、ごく限られた業種にしか通用しない話だからこそ、他社が入り込みにくい立ち位置になったのです。
うるま市商工会と特定創業支援等事業の使い方

うるま市の創業支援等事業計画は、中小企業庁が所管する産業競争力強化法に基づく国の認定を受けています。証明書の対象になる特定創業支援等事業は、うるま市商工会が連携創業支援事業者として創業相談窓口を開いており、琉球ミライ・コザ信用金庫・沖縄海邦銀行も連携先に名を連ねています。
証明書の対象になるには、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野について、原則1か月以上にわたり週1回程度を4回以上受ける継続支援が条件です(うるま市公式ホームページ公表)。証明書の交付を受けると、法人設立時の登録免許税の軽減など、いくつかの優遇に使えます。
うるま市の補助制度や支援事業は年度ごとに募集内容が変わるため、事業開始前に市公式サイトの公募一覧を確認します。要件が細かく決まっているため、まずは自分が考えている事業の方向性をうるま市商工会に話してみるところから始めるのが近道です。
ここまで、うるま市の製造業と離島観光という二つの土台を見てきました。開業前にどれくらいの元手が必要かで迷っている場合は、あわせて補助金の探し方も確認しておくと安心です。

よくある質問

Q.うるま市で起業するとき、最初に相談すべき窓口はどこ?
まずはうるま市商工会に、自分が考えている事業の方向性を話してみるのが分かりやすい入口です。製造業クラスター向けか離島観光向けかによって案内できる支援内容も変わるため、方向性を決めてから相談すると話が早く進みます。
Q.うるま市の特定創業支援等事業を受けるための条件は?
創業予定または創業後5年未満で、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野について、原則1か月以上にわたり週1回程度を4回以上の継続支援を受けることが条件です。支援を受けた最終日から1年以内に証明書の交付申請を行います。
Q.海中道路でつながる離島で、観光に関わる仕事を始められる?
始められます。浜比嘉島には地域交流拠点施設「HAMACHŪ(はまちゅー)」内にワーケーション受け入れの仕組みがあり、津堅島はにんじんなど特産品を軸にした観光需要があります。ただし島しょ地域の人口は2007年から2018年の約11年間で約25%減っており、観光客を呼ぶことと、そこで暮らしながら仕事を続けることは分けて考える必要があります。
Q.うるま市は那覇のベッドタウンと言われるが、独自の起業チャンスはある?
あります。中城湾港新港地区の経済特区に集まる製造業・物流業の企業と、海中道路でつながる離島の観光資源は、うるま市に暮らしているからこそ気づける需要です。ベッドタウンという見え方の裏にある、この二つの現場を知っている人ほど、地元で事業の切り口を見つけやすくなります。
起業18フォーラムの勉強会から始める次の一歩

うるま市は、製造業クラスターと離島観光という、性格の異なる二つの土台を同時に持つ珍しい街です。選択肢が多いからこそ、最初にやることはうるま市商工会の窓口を訪ねることではなく、自分がどちらの現場に、どの一点で関わっていくかを、起業18フォーラムの勉強会で一度整理することです。
方向性が見えてきたら、うるま市商工会に「特定創業支援等事業の相談はできますか」と一本問い合わせてみてください。窓口は、行き先が決まった人にとってこそ、力になる場所です。
地図の上では那覇のベッドタウンに見えるうるま市も、工場と海の両方を知っている人には、もう一つ別の顔で見えてきます。
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