オンライン秘書は資格なしでも始められる? 最初の1社はどこから探せばよいか

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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秘書室や営業事務を長く続けてきた方は、自分の仕事を「誰でもできる事務作業ですから」と前置きしてから話し始めます。相談の場で何度も聞いてきた言い方です。ただ、オンライン秘書(オンラインアシスタント)として外から仕事を受けるとき、報酬に効くのは資格の有無より、社内でどこまで任されていたかという範囲です。

矢野経済研究所の調査では、秘書業務を含むオンラインアシスタントサービスの市場は2024年度に425億1,500万円まで伸びています。ところが、その「どこまで任されていたか」を自分の言葉で書ける方は多くありません。

ポイント オンライン秘書の市場でいま買われているもの

市場規模と伸び率から読み取れる発注側の事情

オンライン秘書

矢野経済研究所が2025年10月に公表した「オンラインアシスタントサービス市場に関する調査」によると、この市場の2024年度の規模は事業者売上高ベースで425億1,500万円、前年度比20.1%増でした。2025年度は506億7,000万円、2029年度には895億円に達すると予測されています

この調査が対象にしている業務は11分野あります。人事、経理、総務、秘書、営業事務、マーケティング・広告運用、Webサイトやネットショップ・SNSの運用、デザインや動画の制作、電話代行、カスタマーサポート、その他です。秘書業務が独立した1分野として数えられている点が、この職種を考えるときの出発点になります。

数字が伸びている背景には、発注する側の事情があります。人が採れない中小企業が、正社員を1人増やす代わりに、外の人へ業務を部分的に預ける。この置き換えが進んだ結果です。

ここで見落とされがちなのが、発注側が買っているものの中身です。相談を受けていて何度も出てくるのは「細かく説明しなくても動いてくれる人がほしい」という言い方でした。オンライン秘書の報酬は、任された範囲の広さと、引き継ぎに要する相手の手間の少なさに連動して動きます。作業の件数を並べても、この二つは伝わりません。

ポイント 級より先に整理したい任された範囲

秘書検定の受験者数と単価が連動しない理由

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「秘書検定を取ってからのほうがいいでしょうか」。この質問はとても多いのですが、順番としては逆になります。

公益財団法人 実務技能検定協会が公表した第138回(2026年2月8日実施)の秘書検定は、2級と3級を合わせて9,858名が受験し、7,342名が合格しました。この人数だけで、資格が採用時の差になるかどうかは判断できません。応募するときは資格名だけでなく、実際に任されていた業務の範囲も併記します。

発注側が見ているのは「担当できる範囲」

登録要件は運営会社や案件によって異なります。事務職・営業事務・秘書・バックオフィスでの実務経験を条件に挙げ、必須資格を設定していない募集もあります。応募前に、その時点の募集要項を確認します。

拙著『起業神100則』では、資格や肩書きの形になっていない経験を「名もなき強み」と呼んで紹介しています。会社の中では当たり前すぎて名前がついていない仕事ほど、外に出したときに値段がつきやすくなります。秘書や事務の経験は、その典型です。

ポイント 任されていた仕事を4つの層に分けて捉える

任された範囲を4層に分けて値段に変える見方

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秘書や事務の仕事は、外から見ると「事務全般」の一言でまとめられてしまいます。日程を押さえるところまでなのか、取引先との一次対応まで持っていたのか、請求の起票や部内の手順づくりまで触っていたのか。この差が時間あたりの報酬に出ますので、自分がやってきたことを次の4つの層に分けて捉えてみてください。

  • 第1層(手を動かす仕事):
    データ入力、資料の体裁づくり、備品の発注など、やり方が決まっている作業
  • 第2層(判断が入る調整):
    役員の予定の優先順位づけ、会議室と出席者の再調整、急な変更の連絡順の判断
  • 第3層(社外との直接のやりとり):
    取引先への一次対応、来客対応、請求や支払いの問い合わせ処理
  • 第4層(仕組みをつくった経験):
    定型文の型づくり、引き継ぎ資料の整備、部内の手順を新しく決めた経験

値段が変わるのは、第2層から上です。第1層だけを並べた自己紹介は、どの応募者ともほぼ同じ形になります。逆に、第3層と第4層の具体例を1つずつ示せると、契約の話がまったく違う入口から始まります。

募集要項を読むときは、第3層と第4層に当てはまる自分の経験があるかどうかから確認してください。順番を逆にすると、要項に並んだ言葉へ自分を寄せてしまい、いちばん値段のつく部分が抜け落ちます。

ポイント 最初の1社に届く3つのルートと単価の決まり方

登録・直接受注・紹介の3ルートと単価の違い

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仕事の受け方は大きく3つに分かれます。優劣の話ではありません。単価の決まり方と、求められる準備が入口ごとに違います。

入口 仕事の来かた 単価の決まり方 向いているタイプ
運営会社に登録 会社側が案件を割り当てる 月10時間などの稼働プランで決まる 実務の型を先に体験したい方
クラウドソーシングで直接受注 自分で応募して選ばれる 案件ごとの提示額と交渉で決まる 得意な業務をすでに絞れている方
前職や知人からの紹介 相手から声がかかる 任せたい範囲を聞いてから決める 第3層・第4層の実績がある方

最初の1社としては、運営会社への登録がいちばん壁が低くなります。利用企業向けの料金は、会社、契約期間、業務内容、サポート範囲によって変わります。利用企業が支払う料金と登録者が受け取る報酬は別の条件なので、登録者向けの募集要項や報酬条件を直接確認してください。

注意したいのは、登録型の場合、受け取る報酬がその金額をそのまま反映するわけではないことです。会社が案件の獲得と管理を担うぶん、配分は当然変わります。それでも、自分で営業しなくてよい期間を買えると考えれば、最初の入口としては十分に意味があります。

3つのルートは順番に使ってよい

登録から入って実務の型をつかみ、その間に第3層・第4層の実績を1つずつ積んでいきます。そのうえでクラウドソーシングや紹介へ広げていくと、いちばん息切れしにくくなります。

ポイント 早瀬さんの契約が月2万円から月6万円に変わるまでの1年半

業務ログの色分けから始まった範囲の広げ方

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会員の早瀬さん(仮名・40代前半)は、医療機器の商社で役員秘書を6年、そのあと総務と庶務を7年担当してきた方です。オンライン秘書の求人を見つけては閉じる、という状態が半年ほど続いていました。応募の欄に書けることが「秘書・事務13年」しか浮かばず、それでは選ばれないと感じていたそうです。

動き出すきっかけをつくったのは、自分の手元に残っていた記録でした。過去3ヶ月分のスケジューラーと送信済みメールをさかのぼり、処理した件名を「決まった作業」「判断が要る調整」「社外との一次対応」の3色で塗り分けてみたそうです。3ヶ月で扱った案件のうち、社外との一次対応が全体の4割近くを占めていました。雑務だと思っていた部分が、実際にはいちばん時間を使っていた仕事でした。

記録を整理したあと、早瀬さんは起業18フォーラムの勉強会へ足を運ぶようになりました。同じように社内の仕事を外へ出そうとしている会員が、自分の担当範囲をどう言葉にしているかを聞いて回ったそうです。とくに残ったのは、経理を長く担当してきた会員が「作業名ではなく、誰の何を代わりに引き受けたかで書く」と話していた場面でした。

早瀬さんは応募書類を書き直しました。「秘書・事務13年」の一行を、「役員3名分の日程を、社外の相手先と直接やりとりして押さえていた」「請求のずれを取引先の経理担当と電話で解決していた」という形に置き換えたそうです。最初に決まったのは、月10時間で月2万円の契約でした。

契約から1年半が過ぎたいま、任される範囲は日程調整から社外との一次対応まで広がり、月20時間で月6万円の契約になりました。稼働時間は2倍ですが、報酬は3倍です。差を生んだのは、第3層の仕事を任されるようになったことでした。

ポイント 勤め先とぶつからないために先に引く線

就業規則と情報の扱いで先に決めておく3点

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勤めを続けながら受けるなら、始める前に確認しておく点があります。あとから揉めると、せっかく決まった取引先まで失うことになります。

  • 就業規則の許可制と届出の要否:
    禁止か、許可制か、届出だけでよいのかで変わる動き方の幅
  • 勤め先の情報を持ち出さないこと:
    取引先名簿、社内書式、文面のひな形をそのまま使わない線引き
  • 連絡がつく時間帯を先に伝えること:
    平日日中にすぐ返せない前提を、契約前に共有しておく段取り

とくに危ないのが、勤め先で使っていた書式や取引先の連絡先をそのまま持ち出してしまうことです。これは規程の問題であると同時に、新しい取引先からの信用の問題にもなります。

逆に言えば、この3点さえ先に押さえておけば、勤めを続けたまま受けられる範囲はかなり広く残ります。稼働の下限が月10時間から設定されている契約もあります。

経理や総務を担当してきた方は、同じ考え方を別の角度から整理したこちらも合わせて読んでみてください。

総務・経理の事務職が独立を考えるときの最初の一歩とは?
● 質問 私は中堅IT企業で総務・経理の事務職を20年続けてきました。子どもの手が離れたのを機に独立を考え始め

ポイント よくある質問

オンライン秘書の独立でよく届く4つの質問

起業前質問集

Q.オンライン秘書に資格は必要ですか?

必須ではありません。運営会社の募集要項で条件として挙げられているのは、事務・営業事務・秘書などの実務経験です。秘書検定は履歴の補強にはなりますが、取得を待ってから動く必要はありません。

Q.パソコンのスキルはどの程度あれば足りますか?

日常の事務でExcelとWordが使え、メールとカレンダーの共有ができていれば入口としては足ります。実際に差がつくのは、チャットツールやオンライン会議アプリに抵抗がないかどうかです。

Q.稼働できるのが平日の夜と週末だけでも仕事はありますか?

あります。ただし、平日日中の即時対応を前提にした案件は難しくなります。資料作成、経費の整理、議事録の清書のように、締め切りだけが決まっている業務から探すと合いやすくなります。

Q.最初はどのくらいの規模から始まりますか?

登録型では、月10時間前後の契約から始まる例がよく見られます。単価は任される層が上がるにつれて動きます。最初の金額よりも、第3層・第4層の仕事をどれだけ早く任せてもらえるかを見てください。

ポイント 最初に確認する1社の決め方

登録要件のどこを読めば判断できるかの基準

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登録先を比べはじめると、料金表や口コミの数に目が行きます。けれど最初に見るべきなのは、その会社の登録要件のページです。必要な実務経験、最低の稼働時間、対応している業務分野。この3つがそろって書かれている会社は、任せ方の設計がはっきりしています。

逆に、必要な経験も稼働の下限も書かれていない場合は、実際の働き方が読み取れません。応募する前の段階で、この差は確認できます。

今日は、気になったオンラインアシスタントの会社を1社だけ選んで、登録要件のページで「必要な実務経験」と「最低稼働時間」の欄を読むところまでで構いません。登録も応募も、そのあとで決めれば間に合います。

秘書や事務の経験は、会社を辞めてから値段がつくのではありません。まだ社内にいるうちに、任されていた範囲を言葉にできた方から順に、外の相手へ伝わるようになります。

登録して外の相場を先に知るのも、社内で任される範囲をもう一段広げてから動くのも、どちらも遠回りにはなりません。大事なのは、どちらを選ぶかを自分で決めたという感覚です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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