記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
東京で起業をしたいと考えると、最初に湧くのは「ここで戦えるのか」という不安かもしれません。
家賃が高い、競合が多い、優秀な人材も全国から集まる。一方で顧客の総数も投資マネーも他都市の比ではない厚みがあります。
東京で起業を始めるときに迷うのは、街の規模ではなく「自分が東京のどの場所のどの市場に入るか」を決めきれないことです。
ここでは、東京固有の支援制度と地域構造を踏まえたうえで、会社員のまま準備を始める手順を整理していきます。
東京で起業するメリットと向き合うべき現実

総務省・経済産業省が公表する令和3年経済センサス活動調査によれば、東京都の民営事業所数は62万8,239で全国1位、従業者数は約959万人に達します。これだけの企業数が同じ都市内にあるという事実は、起業する側にとっては「顧客候補の総数」がそのまま桁違いに大きいことを意味します。
ただし、この数字は同時に「競合の濃さ」も示しています。同じ業種で先行している事業者が他都市の数倍密集しているのが東京の市場であり、ここに何の準備もなく飛び込むと半年で資金が尽きるという現実は珍しくありません。
東京の強みは需要の厚みより「ニッチが成立する規模」
東京で本当に効くのは、「全国で薄く広く拾う」型ではなく「東京の中で深く特化する」型です。地方都市で「対象が狭すぎて成立しない」ニッチでも、東京なら顧客が集まり続けます。
例えば外国人富裕層向けの不動産サポート、士業向けのDXコンサル、特定アレルギー対応の食品宅配。対象を絞るほど月商が読めなくなる地方とは逆に、東京は絞るほど勝率が上がる構造になっているのがこの都市の特徴です。
人件費・家賃の高さは「最初に固定費を載せない」で回避する
23区内のオフィス家賃は地方都市の2〜3倍が相場で、人を雇った瞬間に固定費が跳ね上がります。
ただ、これは「いきなりオフィスを構えて人を雇う」設計を取らなければ問題になりません。最初の半年から1年は自宅やレンタルオフィスを拠点に、ひとりで売上の作り方を確認するのが堅実な進め方です。
エコシステムの近接性は地方では得られない武器
投資家、メンター、先行起業家、専門士業。東京には全国の起業支援関係者が集まっており、勉強会や交流会へのアクセスは抜群に良い環境です。
地方で半年がかりで会いに行く相手と、東京なら日常の中で出会える可能性があります。この近接性は東京で起業する最大の優位点であり、家賃の高さと天秤にかけても残る価値です。
- 市場の厚み:民営事業所62万・従業者959万人の規模
- ニッチ成立:絞るほど勝率が上がる構造
- 近接性:投資家・先行者・支援機関へのアクセス
- コスト:家賃・人件費は地方の2〜3倍
東京で起業するというのは「大きな市場で何でもできる」ことではなく、「絞れば伸ばせる土俵を選んでいる」と捉えるのが正確です。
東京の公的な創業支援制度と拠点

東京には、他の都市にはない規模の創業支援拠点と助成制度が用意されています。ここを知らずに起業準備を進めるのは、使える道具を一つも持たずに現場に入るようなものです。
創業助成金(東京都中小企業振興公社):上限400万円
東京都中小企業振興公社が実施する創業助成事業は、創業予定者または創業から5年未満の事業者が対象で、賃借料・広告費・従業員人件費・委託費などが助成対象になります。
公式の募集要項によれば、助成金申請額は上限400万円・下限100万円、助成率は経費の2/3。事業費および従業員人件費は300万円まで、委託費は100万円までという内訳です。令和7年度第1回の申請受付は4月8日から4月17日までと、応募期間が短いのが特徴で、申請を考えているなら逆算した準備が必要になります。
TOKYO創業ステーション丸の内:3層構造の支援施設
JR東京駅徒歩圏のTOKYO創業ステーション丸の内は、Startup Hub Tokyo(相談・イベント)、Planning Port(事業計画ブラッシュアップ)、Advance Port(創業期支援)という多層構造の支援機能を備えています。
ここは年間300回を超えるイベントが開かれ、利用は基本無料。事業計画の壁打ちから創業後の資金繰り相談まで一箇所で受けられる施設は、全国の自治体支援拠点の中でも最大規模です。
Tokyo Innovation Base(TIB):千代田区の大型エコシステム拠点
東京都が2024年5月にグランドオープンしたTokyo Innovation Baseは、千代田区SusHi Tech Squareの2階・3階あわせて約1,190坪の規模(2階740坪+3階450坪)で、海外スタートアップとの接点を含む全国規模のエコシステム拠点として運営されています。
ここは「これから創業する人が日常的に立ち寄れる拠点」として設計されているので、人脈と情報の更新を恒常的に行いたい人には適しています。
特定創業支援等事業:23区が認定する登録免許税軽減
渋谷区・中央区・文京区・江東区・港区など23区の多くが、産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」を実施しています。区が指定する研修や面談を受けて証明書を取得すると、株式会社設立時の登録免許税が資本金の0.7%から0.35%へ、最低額も15万円から7.5万円に半額になります。
合同会社の場合も最低6万円が3万円に軽減されます。事業計画策定の研修と並行で進めるのが効率的です。
東京開業ワンストップセンター:会社設立手続きを一箇所で
定款認証、登記、税務、年金・社会保険、入国管理。会社設立に必要な複数省庁の手続きを一箇所で対応する施設が東京開業ワンストップセンターです。外国人創業者の利用も多く、英語対応もあります。
これらは「制度の存在を知ったうえで、自分の方向性が固まってから取りに行く道具」と捉えるのが正解です。補助金や支援施設は、何を売るかが固まってから使い始めるほど効率が上がるので、最初の段階で窓口を回ることに時間を使うより、自分の事業設計に時間を使うほうが良い選択になります。
- 創業助成金:上限400万円・助成率2/3・年2回募集
- TOKYO創業ステーション丸の内:3層構造・年300回超のイベント
- Tokyo Innovation Base:千代田区・約1,190坪・来場者10万人突破(2024年12月時点)
- 特定創業支援等事業:23区で登録免許税軽減(半額)
- 東京開業ワンストップセンター:複数省庁手続きを集約
制度の選択肢が多いだけに、自分のフェーズで何を使うかの判断を持っておくことが、東京で起業準備を進めるうえでの分岐点になります。
東京で勝ち目のあるビジネスのつくり方

東京で何の事業を始めるかを考えるとき、「23区のどこに集まる業種か」を見ておくと選択が早くなります。帝国データバンクの調査では設立10年以内のスタートアップは港区22.6%・渋谷区22.1%・千代田区14.8%・中央区11.2%の4区に集中しており、業種の傾向もそれぞれ異なっています。
港区・千代田区の業種:BtoB・専門サービス・FinTech
港区は外資系企業や上場企業の本社が多く集まり、業種は多様。千代田区は霞ケ関・大手町と接しているのでDX・FinTech・コンサル系が強い土地です。この2区は「企業を顧客にする事業」が成立しやすく、月単価10万円以上の継続契約モデルが組みやすい特徴があります。
ただし、初期から大企業を顧客にしようとすると意思決定スピードと与信の壁にぶつかります。中小企業や中堅企業から入って実績を積み上げる順番が現実的です。
渋谷区の業種:EC・エンタメ・ファッション・メディア
渋谷区はIT・EC・ファッション・エンタメが集積する地域で、個人向け(BtoC)の事業者が多く活動しています。トレンド変化が速い領域なので、半年単位で商品を見直す前提で動ける人に合います。
ECや動画コンテンツのように在庫を持たないモデルなら、自宅をベースに渋谷の人脈を活かす形で始められます。
中央区の業種:ヘルスケア・金融・BtoB専門サービス
中央区は日本橋・兜町を擁する金融・ヘルスケア系スタートアップの集積地です。BtoB型の専門サービスが成立しやすく、医療・バイオ・フィンテック分野の事業者が増えています。
23区外・周辺都市の業種:地域密着・士業・教育
世田谷区・杉並区・練馬区・多摩地域は住宅街が広がる地域で、地域密着型の事業(士業事務所、教室、医療系サポート、シニア向けサービス)が成立しやすい土壌です。
「東京=中心区」のイメージで考えると見落としやすいですが、住宅地エリアで地元の顧客と長く付き合うモデルは、家賃を低く抑えながら堅く育てられる選択肢でもあります。
どの区を選ぶかは「顧客が誰か」から逆算する
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に「自分の事業ロケーションは商品から決まる」という考え方を書きましたが、東京の場合は特にこれが当てはまります。
法人客なら千代田区・港区方面、個人客の若年層なら渋谷区方面、住宅街の常連客が中心なら世田谷区や多摩地域。先にオフィスを決めてから業種を決めるのではなく、商品と顧客が固まってから拠点を決める順番を守ると、固定費の失敗が起きにくくなります。
- 港区・千代田区:BtoB・FinTech・コンサル・専門サービス
- 渋谷区:EC・エンタメ・ファッション・メディア
- 中央区:ヘルスケア・金融・BtoB専門サービス
- 世田谷区・杉並区・多摩地域:地域密着・士業・教育系
- 選び方:商品と顧客が固まってから拠点を決める
東京は「どの業種でも誰かが成功している都市」ですが、自分にとってどの土俵かを見極めるまで動かないのが、結果として近道になります。
東京で会社員から起業した会員さんの実例

港区の外資系IT企業で勤めていた佐々木さん(仮名・40代男性)は、在職起業の流行に乗ってECサイトを自己流で立ち上げ、半年で在庫140万円を抱え込んで一度行き詰まりました。商品選定の視点も、集客の組み立てもないまま走り出したのが原因です。
その後、起業18フォーラムに会員登録し、勉強会で「最初の顧客を商品より先に決める」「在庫リスクを取らない検証から始める」という基本を学び直したのが転機でした。
在庫モデルから受注後発注モデルへの作り直し
佐々木さんは事業を一度たたみ、在庫を持たない受注後発注モデルに切り替えました。商材は外資系での経験を活かした「英文ビジネス資料の作成代行」。最初の顧客は会社員時代の名刺整理から探し当てた知人経由で、月額3万円の継続契約から始まりました。
12ヶ月目には法人顧客8社、月の継続収入は42万円に達しています。現在は在職中の朝晩1時間と週末で運営しており、退職時期を見極めながら法人化のタイミングを設計している段階です。
東京の人脈が「最初の顧客」をつくった
佐々木さんが立て直せた理由のひとつは、東京で築いてきた人脈の存在でした。在職中の20年間で会ってきた人の中に、自分のサービスを買ってくれる人が10人いれば、それで月20万円から30万円の継続収入は作れるという設計に着地したのです。
地方では「最初の顧客」を見つけるのに半年かかることもありますが、東京なら名刺と勉強会のつながりだけで初期の壁を越えられる確率が高くなります。
補助金・支援拠点を使うのは「方向性が固まってから」
佐々木さんが創業助成金や登録免許税軽減を検討したのは、収入が読めるようになってからです。「最初に補助金ありきで動くのは、自分の事業設計を補助金の条件に縛らせる行為になる」という勉強会の言葉が刺さって、まず売上の組み方を作る順序を守ったとのこと。
東京の支援制度は最終局面で活用するほうが、自分の事業の伸ばしたい方向に合致します。
同じ轍を踏まないための要点
佐々木さんの事例で参考になるのは、自己流で在庫を抱えた段階では立ち止まれず、第三者から手順を学ぶことで初めて方向修正ができたことです。情報過多の都市にいると、自分が何を学んでいないかが見えなくなりやすいので、伴走者を持つことが東京の起業準備で特に重要になります。
東京で起業を始める前にやっておきたい順番

東京は支援制度も拠点も豊富ですが、それゆえに「制度をめぐる時間」が増えてしまい、肝心の事業設計が後回しになる人を見てきました。順番を間違えると、せっかくの環境が逆に足を引っ張ります。
最初にやるべきなのは、起業18フォーラムの動画やセミナーで起業の全体像と基本手順をつかむことです。在職中に時間が取りにくい東京の会社員でも、朝晩30分ずつのインプットで土台は作れます。全体像が頭に入ってから自分の方向性を絞り込み、その方向性が固まった段階で創業助成金やTOKYO創業ステーション、特定創業支援等事業の制度を選んで使うのが、東京で時間とお金を無駄にしない順番です。

東京で起業するというのは、選択肢が多すぎて立ち尽くしてしまいやすい都市にいる、ということでもあります。だからこそ「学ぶ・絞る・使う」の順番だけは譲らずにいてください。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
