記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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神戸で起業を考えているなら、「関西第3の都市」という規模感よりも「産業の多層構造」に注目してください。
港湾貿易・医療バイオ・食品製造という、ひとつの都市の中に複数の柱が重なっている点が、神戸で起業する会社員にとって有利に働きます。
人口は約152万人(令和2年国勢調査・神戸市)でありながら、神戸医療産業都市をはじめとする国際的な産業クラスターが市内に根付いており、B2B分野でも個人起業家が活かせる専門ニーズが豊富です。
このページでは神戸ならではの創業支援制度と、産業構造から逆算したビジネスの入口を整理しました。
神戸で起業する3つの強み

神戸の強みを起業の視点で整理すると、大きく3点に絞れます。
第1は「港湾・貿易ネットワーク」です。神戸港は国内第3位のコンテナ取扱量(外内貿合計約277万TEU・令和6年速報値)を誇り、市内の港湾関連企業は市内雇用の約3割を占めています(神戸市調べ)。輸出入に関わる中小企業・商社が多数存在するため、貿易書類・通関・物流に詳しい会社員が持つ専門知識は、ここでは「売りやすいスキル」になります。
第2は「神戸医療産業都市(KBIC)のクラスター」です。神戸医療産業都市には令和4年度末(令和5年3月)時点で約360の企業・団体が集積しており、雇用者数は1万2,400人に達しています(神戸市調べ)。バイオ・医療機器・製薬系の企業が集まるこのエリアでは、IT・翻訳・広報・人事といった「本業の周辺支援」に対するニーズが絶えません。
第3は「食・観光のブランド力」です。神戸牛・神戸スイーツ・異人館といったコンテンツは全国に通じるブランドを持っており、食品・観光業の事業者向けの発信支援・商品開発コンサルは、外から見た「神戸らしさ」を強みとして活かせる分野です。
神戸の創業支援制度を知っておく

神戸開業支援コンシェルジュ
神戸市では「神戸開業支援コンシェルジュ」という窓口が、創業前の相談から資金調達まで伴走します。運営はこうべ産業・就労支援財団(神戸市産業振興センター6F)。事業計画の作成支援から、日本政策金融公庫の新創業融資における自己資金要件の緩和まで、この窓口を通じると一部の融資優遇が受けやすくなる仕組みになっています。
神戸市独自の制度融資(信用保証料の全額補助)
神戸市には市独自の制度融資があり、創業時に利用する場合は信用保証料を神戸市が全額負担するという特別措置があります(神戸市中小企業向け融資制度)。通常の融資では信用保証料が数万円から数十万円かかることを考えると、コスト負担は大きく抑えられます。
神戸市分野特化型インキュベーション事業補助金
フード・ヘルスケアなど特定分野に特化したスタートアップ支援事業を行う法人向けの補助金です。補助対象経費の2分の1以内で、会計年度あたり上限1,000万円・最長36カ月・最大3,000万円まで受けられます(神戸市)。インキュベーション施設の入居者として活動しながら利用できるケースがあります。
Life-Tech KOBEと食のスタートアップ支援
神戸市がビジョンに掲げる「Life-Tech KOBE」は、医療・ヘルスケア×テクノロジーのスタートアップ支援プログラムです。「食のスタートアップ支援事業」(こうべ産業・就労支援財団)は、食品分野での創業者に専門家のアドバイスと市場接点を提供しています。
- 神戸開業支援コンシェルジュ:事業計画支援+融資要件緩和(こうべ産業・就労支援財団)
- 神戸市独自融資:創業時は信用保証料を市が全額負担
- 分野特化型インキュベーション補助金:年間上限1,000万円・最長36カ月・最大3,000万円
- Life-Tech KOBE:医療×テクノロジー系スタートアップ支援
- 食のスタートアップ支援:食品分野の専門家コーチング+市場接点
補助金や支援施設は「何を売るか」の方向性が固まったあとに使う道具です。どの制度が自分に合うかは、ビジネスの軸が見えてから選んでも遅くありません。
神戸の産業構造から逆算するビジネスアイデア

神戸で起業を考えるなら、「全国どこでも通じる汎用サービス」よりも「神戸の産業構造に刺さるサービス」を先に探すほうが入口として速いです。
港湾・貿易周辺サービス
令和3年経済センサス(経済産業省・総務省)によると、神戸市内の純付加価値額の21.5%を卸売業・小売業が占めており、輸出入に関わる中小商社や物流会社が密集しています。英語・中国語で輸出入書類を処理できるスキル、通関書類の作成補助、貿易英語レター作成代行といった業務は、商社・物流会社勤務経験者がほぼゼロコストで始められる分野です。こうした企業の多くはバックオフィス支援の外注先を常に探しており、「分かる人」へのニーズが途切れません。
医療産業都市周辺のB2B支援
KBICに集積するバイオ・医療機器スタートアップは、研究開発に注力するあまりマーケティング・採用・翻訳・薬事申請周辺の事務作業が手薄になりがちです。医薬品・医療機器業界での勤務経験、英語翻訳スキル、薬事実務の知識を持つ会社員は「医療スタートアップ向け専門アシスタント」として市場に入れます。
食・観光ブランドの発信支援
神戸牛・スイーツ・異人館・ポートアイランドという観光コンテンツを持つ神戸の飲食・観光事業者は、SNS発信・メニューコピー・外国語メニュー作成において外部の手を借りたいと思っているケースが少なくありません。食の知識、旅行業経験、英語・多言語スキルを組み合わせた支援は、地域密着型の仕事として起業当初から安定しやすいです。
- 港湾・貿易支援:輸出入書類代行・貿易英語レター作成・物流効率化相談
- 医療産業都市周辺:医療スタートアップ向け翻訳・薬事補助・採用広報代行
- 食・観光発信支援:飲食事業者向けSNS運用・多言語メニュー作成・ブランディング
- IT支援:中小商社・物流会社向けクラウド会計導入・ExcelマクロのVBA化
3つの市場のどこに自分の経験が重なるか、まず1点だけ絞り込んでみてください。最初から複数市場を狙う必要はありません。
会員さんの体験談:「秘書室の経験」を小さな会社の武器にした事例

起業18フォーラムには、神戸・兵庫エリアの会社員から「自分の経験が起業に使えるとは思っていなかった」という声がよく届きます。
Kさん(仮名・女性・40代・神戸市在住・元大手商社の社長秘書室勤務)の事例をご紹介します。
Kさんは神戸市内の大手商社で20年近く社長秘書室に在籍していました。スケジュール管理・渉外対応・各種書類の英日翻訳・来客応対と、秘書業務全般をこなしてきましたが、ご本人は「特別なスキルがあるとは思っていなかった」と話します。
起業18フォーラムに参加したのは、40代になって少し経ってからのことでした。「自分に何ができるか分からない」という状態でしたが、拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』の中にある「会社員のまま長く積み上げてきたことの中に、誰かに喜んでもらえるスキルが必ずある」という考え方が刺さったといいます。棚卸しをしてみると、貿易実務の知識・秘書業務・英語メール作成・役員スケジュール調整という4つのスキルが見えてきました。神戸には輸出入に関わる中小商社・メーカーが多いことを思い出し、「小さな会社の秘書代行と貿易書類サポート」という組み合わせでサービスを設計します。
最初のお客さんは、フォーラムで知り合った異業種の経営者でした。「書類を頼める人が欲しかった」という一言からスタートし、口コミで依頼が広がるようになります。起業から10ヶ月目には月12万円の定期収入になり、現在はリモートで兵庫県内の中小輸出入企業5社とのレギュラー契約を結んでいます。
- 属性:女性・40代・神戸市在住・元大手商社社長秘書室勤務
- スタート時状況:「自分に特別なスキルはない」と思い込んでいた状態
- 時系列:フォーラム参加後に強みの棚卸しを実施→最初の受注まで約3カ月
- 転機:貿易×秘書という2つのスキルの組み合わせを発見したこと
- 現在地点:兵庫県内の中小輸出入企業5社とリモートでレギュラー契約
「自分の経験は普通すぎる」と思っている人ほど、実は使えるスキルを持っているケースは珍しくありません。問題は棚卸しの方法を知っているかどうかです。
神戸から起業を考えている方へ

神戸は創業支援の仕組みが整っており、支援施設や補助金の入口として使いやすい環境があります。ただ、支援制度をいくら調べても「自分が何で起業するか」という問いには答えが出ません。
起業18フォーラムでは、まず動画やセミナーで起業の全体像を学ぶところから始めていただくことを勧めています。全体像と基礎が見えてきたら、方向性を絞り込む。その後で神戸開業支援コンシェルジュや分野特化型補助金を活用する。この順番で動くことが、結果として最も速く進む道になります。

神戸には「起業のタネ」になる産業資産が豊富に揃っています。会社員として積み上げてきた経験を、この街で使える形に変えていく作業を一緒に始めてみましょう。
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