記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
45歳の女性です。子育てが一段落して、これから自分の力で何かを始めたいと思っています。ただ、起業のセミナーに行くと20代や30代の方が元気で、転職市場と同じで45歳はもう遅いのではないかと不安になります。
今から起業して本当に間に合うのでしょうか? 家庭との両立もできるか心配です。

● 回答
45歳の女性が起業を始めるのは、遅いどころか、いちばん力を出しやすい年代に入ったということです。20代に負ける部分も正直にありますが、そこをあえて選ばなくていいのが45歳の強みです。私が26年でお会いしてきた中でも、子育てが一段落した45歳前後の方が、いちばん落ち着いて事業を伸ばしていきます。
不安の正体は「年齢」ではなく、年齢を理由に一歩を止めてしまうことのほうにあります。まずは数字から、その思い込みをほどいていきましょう。
「45歳は遅い」という前提が、もうデータと合っていません
起業家が若年化しているという話はよく聞きます。実際に20代で始める方は増えました。ですが、開業者全体の中心は、いまも45歳前後にあります。
だからこそ、まず数字を一つ置かせてください。日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)によると、開業時の平均年齢は43.9歳で、調査開始以来もっとも高くなりました。同じ調査で、開業時の年齢構成は「40歳代」が36.9%と最多で、「30歳代」28.0%、「29歳以下」は7.0%にとどまります。つまり、開業する人のいちばんの多数派は、あなたと同じ40代なのです。
女性についても流れは同じ方向です。この日本政策金融公庫の調査では、開業者に占める女性の割合は25.7%と、4年連続で過去最高を更新しました。45歳の女性が起業を考えること自体が、いまや珍しいことではなくなっています。
働く側の土台も厚くなっています。総務省「労働力調査(基本集計)2025年平均」(2026年1月公表)では、就業者数は6828万人で前年より47万人増え、15〜64歳の就業率は80.0%に達しました。中高年が現役で働き続ける社会になり、45歳から新しいことを始める人を受け止める市場も、確実に広がっています。
20代に勝てない点と、20代が逆立ちしても持てない点
正直に言います。45歳が20代に勝てない部分は、たしかにあります。気力と体力、そして失敗してもやり直せる時間の長さです。ここは認めたほうが早いです。だから、徹夜で量を出すような勝負には乗らないことです。
そのかわり、20代が逆立ちしても持てないものを、あなたはすでに持っています。それは人脈と、現場で積んだ経験と、これまで誠実に仕事をしてきたことで貯まった信用です。取引先に顔が利く、同じ業界の言葉が通じる、頼まれごとが回ってくる。この3つは、年数を重ねないと手に入りません。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、年齢や経験は重荷ではなく資産だという見方を紹介しています。同書には「スキルなんて、起業をしながら磨くんだよ」という言葉も出てきます。45歳までに身につけてきたものは、磨き直すまでもなく、もう商品の材料になっているのです。
- 20代に譲る土俵:
体力・気力で押す量勝負、やり直せる時間を前提にした大きな賭け - 45歳が勝てる土俵:
人脈・経験・信用を活かした、狭くて深い専門サービス - 判断軸:
若さで勝てない場所では戦わず、年数でしか手に入らないものを売る
今日できることは、これまでの仕事で「あなたに頼みたい」と名指しで来た相談を、3つ書き出してみることです。そこに、20代には真似できない最初の商品が隠れています。
勝ち筋は「経験の商品化」を小さく試すこと
では、その資産をどう形にするか。45歳の女性に合うのは、大きく構えることではなく、手持ちの経験を小さく商品にして、反応を見ながら育てるやり方です。
選ぶなら、在庫を持たない、一人で完結できる、身近な1人から始められる、この3つの条件で考えると失敗しにくくなります。趣味で続けてきたこと、職場で人より詳しかったこと、家事や子育てで身についた段取り。どれも立派な出発点です。最初の1人のお客様は、たいてい遠くではなく、すでに知り合いの中にいます。
このとき大事なのは、完璧に整えてから出そうとしないことです。45歳になると、つい「ちゃんとしてから」と準備に走りがちです。けれど準備が長くなるほど、年齢を理由にした言い訳が増えていきます。小さく出して、反応を見て、直す。この順番のほうが、結局は早く形になります。
家庭と両立するなら、勤め先のうちに種をまく

家庭との両立が心配だというお気持ちは、とてもよくわかります。ここは精神論ではなく、お金の設計で解いていきましょう。
私がいつもおすすめしているのは、毎月の収入があるうちに事業の種をまき、芽が出たのを確かめてから本格化することです。いきなり収入をゼロにして始めると、家計の不安がそのまま判断の遅れにつながります。家族の不安は、収入そのものより、毎月の固定費に対する不安であることが多いものです。だからこそ、予算・期間・撤退ラインの3つを紙に書いて、家族と先に共有しておくと、空気がずいぶん変わります。
「いくらまでなら使っていいか」「いつまで試すか」「どうなったらやめるか」。この3点を決めておけば、家庭を危険にさらさずに挑戦できます。45歳から自分の未来に少しずつ投資できるかどうか。そこが、いちばんの勝負どころになります。
45歳から始めた富永さんの1年
起業18フォーラムの会員に、富永さん(仮名・45歳・女性)がいます。長く専業主婦をしながら、週末に近所の子ども向けの工作教室を趣味で開いていた方です。本人は「ただの趣味で、お金になるとは思っていなかった」とおっしゃっていました。
転機は、教室に来ていたお母さんたちの口コミでした。「うちの子の習い事仲間にも教えてほしい」という声が続けて入り、断りきれずに枠を増やしたところ、いつの間にか順番待ちが出るようになったのです。富永さんはそこで初めて、自分の教室に値段をつけてみることにしました。
とはいえ最初から順調だったわけではありません。値付けに迷い、知り合いだからと安くしすぎて、忙しいのに手元に残らない時期が続きました。起業18フォーラムで先輩会員の値決めの考え方を聞き、材料費と自分の時間を分けて計算し直してからは、無理のない料金に整えられました。教室を有料化して1年ほどで、月13万円の収入が安定するようになっています。
富永さんは、特別な資格を取ったわけでも、新しいスキルをゼロから覚えたわけでもありません。45歳までに積んだ「子どもの扱いと段取りのうまさ」を、小さく商品にしただけです。年齢は、何ひとつ足を引っ張りませんでした。

よくある質問

Q.45歳から起業するのに、資格は取っておくべきですか?
多くの場合、資格は必須ではありません。資格は「自信のなさ」を埋めるために走りがちですが、お客様が見ているのは肩書きより、実際に役に立つかどうかです。45歳までに積んだ経験そのものが、すでに最初の商品になります。資格は、お客様から求められたときに後から取るほうが、回り道になりません。
Q.起業の資金はいくらから始められますか?
始め方しだいで、自宅と手持ちのパソコンだけで始められるものもあります。在庫を持たず、一人で完結できる事業を選べば、初期費用は最小限ですみます。日本政策金融公庫には「女性、若者/シニア起業家支援資金」という融資制度もあり、40代の女性も対象です。まずは小さく始めて、必要になってから資金を考える順番で十分間に合います。
Q.何から手をつければいいか分かりません。最初の一歩は?
最初の一歩は、これまでの仕事や暮らしの中で「あなたに頼みたい」と言われたことを書き出すことです。立派な事業計画より先に、その小さな名指しの中に商品の種があります。書き出したら、身近な1人に試しに提供してみる。反応を見て直す。この繰り返しが、いちばん確実な出発点になります。
年齢を気にする必要はありません。一度しかない人生を大切にするためにこそ、今日は頼まれてきたことを3つ書き出すだけで十分です。
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