「応援するよ」が重いと感じるのはおかしい? 期待に応えられるか不安なとき

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

思い切って起業したい気持ちを家族に打ち明けたら、想像していた以上に前向きに「応援するよ」と言ってくれました。反対されるより嬉しいはずなのに、その一言がなぜか重く感じてしまいます。

期待に応えられなかったら家族を裏切ることになる気がして、かえって一歩が踏み出せません。賛成してもらえているのに動けないなんて、わがままなのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「応援されているのに、どうして足がすくむんだろう」。そう戸惑ってしまう自分を、わがままだと責めなくて大丈夫です。賛成が重く感じるのは、家族の期待とあなた自身の不安が同じところで混ざり合って、逃げ道が見えなくなるからです。

26年にわたって延べ6万人の起業準備に付き合ってきましたが、「反対されて困る」という相談と同じくらい、「賛成されすぎて怖い」という声を聞いてきました。賛成も反対も家族の感情であって、あなたが起業を続けるか見直すかの判断軸とは、切り離して考えていいものです。まずは、この重さの正体をほどいていきましょう。

「応援するよ」がなぜ重く感じるのか

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』で、ドリームキラーという考え方を紹介しています。「どうせ無理だよ」と夢をくじく人からは距離を置こう、という話です。応援してくれる家族は、その正反対に見えて、実は同じ性質を抱えています。

心配も期待も、家族があなたに向ける感情という点では同じです。反対は「失敗しないで」という心配、賛成は「うまくいってほしい」という期待で、ちょうど裏表の関係にあります。反対なら説得すれば前に進めますが、賛成されると応えるべき相手が増えた分、失敗が許されない気がしてきます。

だからこそ、その期待をそのまま背負い込まないでください。家族の気持ちはありがたく受け取りつつ、続けるか見直すかの判断は、自分の物差しで決めてかまいません。

不安の正体を3つに分ける

「失敗できない」という重さは、ひとかたまりのままだと手がつけられません。中身を分けてみると、対処できる不安と、自分では動かせない感情に分かれます。

  • お金の不安:
    生活費や初期費用が足りるか。数字で見積もれるので、対処できる側の不安。
  • 期待に応えられない不安:
    家族の「うまくいってほしい」に届くかどうか。相手の感情で、自分では直接動かせない部分。
  • 失敗が裏切りになる不安:
    負けたら家族を落胆させるという恐れ。事実ではなく、頭の中で作った物語。

この3つを並べると、いま手をつけられるのはお金の不安だけだと分かります。残りの2つは相手の感情なので、追いかけるほど苦しくなります。

日本政策金融公庫の2025年度「起業と起業意識に関する調査」では、起業関心層のうちまだ起業していない人が挙げた理由で、「自己資金が不足している」が48.4%でした。お金の不安は、具体的な金額に分けて検討できる問題でもあります。

だからお金の不安は、ぼんやり怖がるより、具体的な数字にしてしまうほうが早く軽くなります。

まず、いまの生活費の何か月分を確保できれば挑戦できるのかを、家計の数字でざっくり出してみてください。守るべき金額が見えると、期待や裏切りへの恐れも輪郭が変わってきます。

それでも、お金の準備が整っても消えにくいのが、失敗そのものへの恐れです。

同じ調査では、起業していない理由に「失敗したときのリスクが大きい」を挙げた人が29.1%いました。家族が賛成していても、失敗への恐れは別の問題として残ることがあります。

ただ、その「失敗」の中身を具体的に見ていくと、対処のしようが見えてきます。

失敗時のリスクが大きいと答えた人に中身を尋ねた項目では、「投資した資金を失うこと」が74.8%、「安定した収入を失うこと」が66.0%、「借金や個人保証を抱えること」が58.7%でした。勤めを続けながら新たな借入れを抑えて準備すれば、安定収入や債務に関するリスクを小さくできます。

お金と失敗のリスクは、こうして先に手が打てます。最後に残るのは、期待という感情そのものへの向き合い方です。

期待を重圧に変えないための線引き

起業18フォーラムの会員に、桑原さん(仮名・40代・メーカー勤務)という方がいました。妻に起業の相談をしたところ、「あなたが決めたなら、応援する」と言われたそうです。嬉しかった一方で、その日から手が止まってしまったといいます。

「応援してくれた分、中途半端にはできない」と気負い、完璧な計画ができるまで動けなくなっていました。転機になったのは、起業18フォーラムの勉強会で、心配と期待を自分の判断から切り離す考え方に触れたことです。桑原さんは、いつまでにいくら使い、どうなったら見直すのかという線引きを、先に決めてから動き直しました。

  • 予算:
    準備に使ってよい上限額を決める。ここまでなら家計に響かないという安心の線。
  • 期間:
    どのくらいの期間ためすかを区切る。だらだら続けて疲れないための線。
  • 出口:
    どうなったら一度立ち止まるかを決める。失敗ではなく、あらかじめ決めた見直しの合図。

この予算・期間・出口を先に決めておくと、うまくいかなかったときも「約束どおり立ち止まっただけ」になります。出口をあらかじめ引いておけば、失敗は家族への裏切りではなく、二人で確認した計画の一部に変わります。

桑原さんは会社を続けたまま準備を進め、数字を追う気負いより、応援に応えたいという前向きな気持ちで動けるようになったそうです。

起業の失敗が怖い人へ|辞める前に決めておく3つの撤退ライン
起業に興味はあるけれど、失敗したら家族の生活まで巻き込んでしまう。そう考えると、どうしても最初の一歩が踏み出せ

重さを軽くする最初の一歩は、頭の中の不安を外に出すことです。今夜、「自分が一番怖いのは何か」を一行だけ書いてみてください。言葉にした瞬間に、それが対処できる不安なのか、切り離すべき感情なのかが見えてきます。不安を感じているのは、それだけ真剣に自分の人生と家族のことを考えている証拠です。その慎重さは、起業準備においてはむしろ強みになります。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!