支えてくれる家族がいない独身でも、起業準備はひとりで進められる?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

独身で、近くに家族も頼れる人もいません。起業の準備を始めたいのですが、何かあったとき支えてくれる人がいないと思うと、つい考え込んでしまいます。

失敗しても誰も助けてくれない自分が、ひとりで全部抱えて進めるしかないのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

ひとりで「抱え込む」のと、ひとりで「始める」のは別のことです。独身で身近に頼れる人がいなくても、準備そのものはひとりで進められます。けれど、抱え込む必要まではありません。その線引きを、これからお話しします。

支えてくれる家族がいない。その不安は、決して大げさなものではないと思います。会社員なら毎月給料が入りますが、起業準備を始めると「うまくいかなかったとき、誰が自分を受け止めてくれるんだろう」という問いが、夜にふと頭をもたげます。その重さを、軽く扱うつもりはありません。

「ひとりで起業準備」は、もう特別な話ではない

まず、前提を一つ置き直しておきます。ひとり暮らしで起業を考える人は、いま珍しい存在ではありません。

総務省統計局の令和2年国勢調査では、単独世帯は2,115万1千世帯で、一般世帯の38.1%を占めました。夫婦と子どもの世帯などを抜いて、世帯のかたちとしては最も多くなっています。つまり、日本の3世帯に1世帯を超える割合がひとり暮らしです。あなたが感じている「ひとりで抱える状況」は、いまの社会ではむしろ標準に近いものになっています。

数が多いということは、同じ立場で起業準備を進めている人も、それだけたくさんいるということです。だからこそ、頼り先を「家族」だけに限定して考えると、選択肢を狭く見積もってしまいます。

不安を、いったん3つに分けてみる

「ひとりで抱えるしかない」という言葉の中には、実はいくつもの別々の不安が混じっています。漠然としたまま抱えていると重く感じますが、分けてみると、向き合い方が見えてきます。ここでは3つに仕分けてみます。

  • お金の不安:
    収入が途絶えたら生活できないのではないか、という心配
  • 判断の不安:
    相談相手がいないので、自分の決め方が合っているか確かめられない
  • 気持ちの不安:
    失敗したとき、受け止めてくれる人がいないさみしさ

このうち、お金の不安には分かりやすい答えがあります。会社に勤めながら準備を進めれば、毎月の給料は途切れません。独身なら、生活費を自分の分だけに絞れる強みもあります。守るべき家計のかたちがシンプルなぶん、攻めの設計はむしろ立てやすいのです。

残りの「判断の不安」と「気持ちの不安」は、たしかにひとりでは埋めにくい部分です。けれど、ここを家族の代わりに支えてくれる場所は、ちゃんとあります。

頼り先は「家族」でなくてもいい

判断の不安について、ひとつ心強いデータがあります。日本政策金融公庫総合研究所の2024年度新規開業実態調査(2024年11月公表)では、開業時に直面した困難は「資金繰り・資金調達」が59.2%、「顧客・販路の開拓」が48.1%でした。多くの人がつまずくのは、お金と売り先という、わりと具体的な場所です。

具体的な困りごとには、具体的に答えられる相手がいます。お金のことなら創業融資の窓口、売り先のことなら同じように起業した先輩。家族のような無条件の味方とは別に、「この件はこの人」と頼れる先を一つずつ持っておく。それが、ひとりで進める人の現実的な支えになります。

拙著『起業神100則』では、一人で全部を抱え込まず、メンターや仲間といった人の力を借りることを、起業を続けるための大切な条件として紹介しています。誰かに寄りかかって決めてもらうのではなく、自分で決めるための材料を、人から借りる。その感覚に近いものです。

同じ立場の会員さんが、頼り先を一つ作るまで

起業18フォーラムにいた田原さん(仮名・30代後半・男性・メーカーの品質管理職・独身でひとり暮らし)も、最初は同じ不安を抱えていました。「失敗したとき、実家にも頼れないし、誰も支えてくれない」。その思いから、準備を全部ひとりで抱え込んでいたそうです。

休日にこつこつ作っていた、製造現場のちょっとした改善ノウハウをまとめた資料。それを試しに知人へ渡したところ、「これ、お金を払ってでも欲しい人がいるよ」と言われ、思いがけない手応えがありました。けれど、その手応えをどう仕事に育てればいいのかは、ひとりでは分かりませんでした。

転機は、起業18フォーラムの勉強会で、同じように独身で準備を進める会員さんと話せたことでした。「ひとりで抱えているのは自分だけじゃない」と分かっただけで、肩の力が抜けたそうです。そのあと会員どうしの個別相談で、頼れる先を一つ作ること、つまり「この件はこの人に聞く」という窓口を決めることを勧められました。田原さんは、まず資料の売り方を相談できる相手を一人決めるところから動き直しました。

やり方も変えました。資料を一度売って終わりにするのではなく、買ってくれた人が次の月もまた見に来たくなるよう、毎月一つずつ事例を追記していく形に組み替えたのです。フォーラムの勉強会で学んだ、その場限りで終わらせず積み上げていく考え方を、自分の商品に当てはめてみた結果でした。

11ヶ月目には、置いた資料が継続的に読まれ、問い合わせが途切れず入る導線ができていました。一件ごとに売り込み直さなくても、関心を持った人が自然と連絡をくれる流れができたのです。「ひとりで抱えていた頃より、むしろ気持ちが軽い」と田原さんは話してくれました。頼り先が一つあるだけで、ひとりで決めても怖くなくなったのだといいます。

今日からできる、ひとりで決めないための一歩

頼り先は、いきなり大勢を作る必要はありません。まずは一人、話せる相手を見つけるところからで十分です。地元の自治体や商工会議所が開いている創業相談会に出て、同じように起業を考えている人と話してみてください。独りで全部を決めなくていいのだと、その場の空気だけで分かるはずです

支えてくれる家族がいないことを、ハンデのように感じてきたかもしれません。けれど、頼り先は家族でなくても作れます。同じ立場の仲間や、具体的な困りごとに答えてくれる窓口を一つずつ増やしていけば、ひとりで進む準備は、ひとりで抱える準備ではなくなっていきます。

ポイント よくある質問

独身でひとり、起業の準備を進める人からよくある疑問

起業前質問集

Q.独身であることは起業に不利でしょうか?

不利ではありません。守るべき生活費が自分の分だけで済むので、リスクを小さく見積もりやすく、使える時間も比較的自由です。支えてくれる家族がいない不安はありますが、それは頼り先を社外に作ることで補えます。身軽さは、ひとりで起業する人の強みになります。

Q.相談相手がいなくても準備は進められますか?

進められます。ただ、判断に迷う場面では、一人で結論を出そうとせず、同じ立場の人や専門の窓口に話してみてください。無料で使える創業相談の窓口もあります。決めるのは自分でも、材料は人から借りていいのです。

Q.失敗したとき、本当に誰も支えてくれないのでしょうか?

会社に勤めながら準備を進める限り、収入が途絶える失敗は起こりません。試したことがうまくいかなくても、戻る場所がある状態です。気持ちの面でも、同じ道を歩む仲間が一人いれば、受け止め手はゼロではなくなります。

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● 質問 起業すると孤独になる、と聞きました。会社に勤めていると同僚に相談できますが、独立したら相談できる人が

失敗しても誰も支えてくれない、とまで考えてしまうのは、それだけ真剣に自分の先を見ているからです。その慎重さを持ったあなたなら、頼れる先を一つずつ選んでいけます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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