家族が起業に無関心で相談できません。一人で進めてもいいでしょうか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

共働きで、配偶者は会社員を続けるつもりです。私が起業準備を始めたいと話しても、反対はしないのですが「ふーん」という感じで、まるで無関心です。相談に乗ってもらえないので、一人で進めるしかないのかと心細くなります。

家族を巻き込めないまま、このまま準備を進めてしまってもいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

結論から言えば、進めて大丈夫です。むしろ、配偶者を起業のパートナーにしようとするのをやめた瞬間に、温度差は問題でなくなります。無関心を「巻き込めていない失敗」と受け取る必要はありません。

多くの方が、家族の無関心を反対と同じ重さで受け止めてしまいます。けれど、この二つはまったく別のものです。反対は「やめてほしい」という意思表示ですが、無関心は「あなたの領域だと認めている」状態に近いのです。順番に解いていきましょう。

「巻き込めない」と感じてしまう理由

そもそも、なぜ配偶者を巻き込みたくなるのでしょうか。多くは「一緒に喜んでほしい」「不安を分け合いたい」という気持ちが根にあります。これはとても自然な願いです。

ただ、ここに落とし穴があります。相手に「起業仲間」の役割を期待してしまうと、相手が勤め先での安定を選んでいる以上、温度が合うことは構造的にありません。求めている役割と、相手が果たせる役割がずれているだけなのです。相手の問題でも、あなたの説明不足でもありません。

無関心は反対ではない

私はこれまで延べ6万人ほどの方の起業準備に関わってきましたが、家族の反応で相談に来られる方の多くが、「無関心」と「反対」を混同しています。

反対しているなら、説得や対話が必要です。けれど無関心なら、説得する相手すらいません。「ふーん」で終わったのは、止められたのではなく、止められなかったということでもあります。あなたの起業準備に、すでに拒否権は使われていません。ここはむしろ前向きに受け取ってよい場面です。

無関心と反対を見分ける3つの問い

  • お金の話:
    家計に手を出さないと伝えたとき、ほっとした様子があるか
  • 時間の話:
    あなたが準備に時間を使うことに、具体的な不満を口にするか
  • 進路の話:
    「会社を辞めるの?」と心配しているか、何も聞いてこないか

3つとも「特に何も言わない」なら、それは反対ではなく見守りの距離を取っているということです。気にかけていないのではなく、あなたを信じて口を出していない場合も少なくありません。

巻き込むのではなく、役割を分ける

では、どうすればよいのでしょうか。鍵は、家庭内で「一緒にやる」発想から「役割を分ける」発想へ切り替えることです。

共働き世帯は、いまや特別な形ではありません。総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」の2023年平均によると、共働き世帯は1,278万世帯で、専業主婦世帯の517万世帯を大きく上回っています。二人がそれぞれ別の仕事を持ち、家庭の役割を分担して暮らすことは、もはや当たり前の風景です。だからこそ、起業準備という新しい役割も、同じ要領で分けられます。

具体的には、配偶者には「勤めを続けて家計の土台を守る役」を担ってもらい、あなたは「会社の外で小さく試す役」を担う。相手の領域に意見を求めず、あなたの領域に意見を求めさせない。役割の線が引けると、温度差は気にならなくなります。

家計には手をつけないと最初に一言だけ伝え、準備のお金は自分の小遣いの範囲でまかなうと決めてください。守る役と試す役の境界線がはっきりすると、相手は安心して見守りの側に回れます。

起業18会員の柏木さんの場合

起業18フォーラム会員の柏木さん(仮名・40代・共働き)も、同じ悩みを抱えていました。準備を始めた当初は、配偶者の「好きにすれば」という反応を寂しく感じ、なんとか興味を持ってもらおうと、夜ごと事業計画を熱心に語っては空回りしていました。家庭の空気が少しずつ重くなり、最初の数か月はほとんど前へ進めなかったそうです。

流れが変わったのは、半年ほどたった頃、自治体の移住・創業相談会にふらりと立ち寄ったときでした。担当者から「あなたの仕事は、この土地で誰の役に立ちますか」と問われ、初めて配偶者ではなく見知らぬ第三者に向けて自分の構想を言葉にしました。家族に分かってもらうことに使っていたエネルギーを、お客様に向けると決めた瞬間でした。

帰宅後、柏木さんは配偶者に一つだけ頼みました。「応援しなくていいから、月末に進み具合を5分だけ聞いてほしい」と。すると配偶者は「それくらいなら」とあっさり引き受けてくれたそうです。説得をやめ、頼みごとを一つに絞ったことで、かえって関わりが生まれました。

フリーランス

そこから柏木さんは、半年・1年と月末の報告だけを淡々と続けました。1年ほどたった今、会社の外での収入は、本業の月収の3割ほどを占めるまでになっています。配偶者は相変わらず事業の中身に詳しくありませんが、月末の5分だけは今も続いています。温度差は消えたのではなく、問題でなくなったのです。

拙著『起業神100則』では、起業の最大のメリットは「自由」であり、同時に最大のデメリットも「自由」だと紹介しています。誰にも相談せず一人で決められる自由は、裏を返せば一人で決め切る覚悟を要するということです。だからこそ、家族には決定権ではなく、見守りという小さな支えだけを設計しておく。一人で抱え込む自由と、適度に支えてもらう仕組みは、両立させられます。

今日できることは、家族に「応援してほしい」と頼むことではありません。「応援はしなくていいから、月に一度だけ進み具合を聞いてほしい」と、見守りだけを一つお願いしてみてください。

相手が無理なく引き受けられる小さな役割を渡せたとき、温度差はあなたの足かせではなくなります。

家族と揉めないために、家計シェアより先にやるべき「会話の順序」とは何?
● 質問 在職しながら起業準備を進めようと考えているのですが、配偶者にどのタイミングで・どこまでの家計情報を共

ご家族の無関心は、多くの方が最初にぶつかるところです。一度で巻き込もうとせず、見守りという小さな関わりから少しずつ景色を共有していけば大丈夫です。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!