記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
北海道十勝の上士幌町で起業したい。そう考えて検索すると、補助金や移住相談の窓口の情報ばかりが出てきて、肝心の「何で食べていくか」がなかなか見えてきません。人口4,600人ほどの町で、勤めを続けながら準備を進められるのか。そう不安に思う方は多いはずです。
上士幌町は、ふるさと納税を起点に十勝でも珍しい人口の回復を見せている町です。だからこそ、いきなり移住するのではなく、関係人口として通いながら自分の事業の形を整えていく道が現実的になります。この記事では、上士幌町という土地の固有性を踏まえて、勤めながら起業の準備を進める手順を整理していきます。
上士幌町はどんな町か。まず土地の性格を知る

十勝でも珍しく、人口回復が注目されてきた町
上士幌町は、帯広市の北、大雪山系のふもとに広がる酪農と農業の町です。上士幌町の人口は4,600人(2026年5月末時点・上士幌町公式統計)で、総務省統計局の国勢調査でも1955年の1万3,000人台から半世紀以上減り続けたあと、2015年前後に増加へ転じた経緯が確認できます。十勝管内でも人口回復が注目されてきた町として、地方創生の文脈でたびたび取り上げられてきました。
その原動力になったのが、ふるさと納税です。集まった寄附を子育て支援や移住の受け皿づくりに回し、町の外とのつながりを増やしてきました。起業を考える人にとって大切なのは、この町には「外から人が関わる流れ」がすでにできているという点です。ゼロから市場を作るのではなく、流れている人やお金の近くに自分の事業を置く。その発想が活きる土地だといえます。
帯広・十勝帯広空港からのアクセスと町の規模感
上士幌町へは、とかち帯広空港から車でおよそ1時間15分前後、JR帯広駅からは車で50分ほどです。羽田からの便を使えば、東京からでも半日で町に入れます。週末に通って関係を作り、平日は勤め先で働く。そんな二地域での準備が、距離の上でも無理なく組めます。
人口規模が小さいぶん、町の中だけで完結する商売は限界があります。だからこそ、町の外に顧客やファンを持つ事業のほうが続きやすくなります。小さな町で起業を考えるときは、町内向けの商売と町外向けの発信を最初から両方の視点で設計してください。
知っておきたい支援制度。ただし窓口は最初の一歩ではない

上士幌町や北海道には、移住や起業を後押しする制度がいくつもあります。先に知っておくと安心ですが、これらは「何をやるか」が見えてきたあとに効いてくる道具です。順番を間違えないことが、遠回りを避けるコツになります。
北海道の起業支援金と移住・定住の受け皿
北海道には、地域の課題をデジタルの力で解決する起業を支える補助金があります。北海道「地域課題解決型起業支援事業」(令和8年度募集)は補助率2分の1以内・上限200万円で、地域活性化や子育て支援などの社会的事業が対象です。募集時期や要件は年度ごとに変わるため、北海道や北海道中小企業総合支援センターの最新情報を確認してください。
町のほうでは、定住者向けの住宅建設の支援や、子育て世帯向けの住まいの助成が用意されています。働く場所が自由な事業であれば、住む場所への支援と組み合わせて、生活の足場を整えやすくなります。
- 北海道の起業支援金:
地域課題解決型起業支援事業は補助率2分の1以内・上限200万円。募集時期や要件は年度ごとに確認 - 町の住まい支援:
定住住宅や子育て世帯向けの建設助成など、暮らしの足場づくりを後押し - ふるさと納税の流れ:
寄附者との交流イベントや体験ツアーで、町の外にファンを作りやすい土壌がある
補助金の申請を起業の最初の行動にしないでください。何を売るかが固まる前に窓口へ行っても、担当者も答えに困ります。
登録免許税が軽くなる特定創業支援等事業も視野に
会社を作る段階まで進むなら、市町村が国の認定を受けて行う特定創業支援等事業の証明を取ると、会社設立時の登録免許税が軽くなる場合があります。制度の有無や内容は年度や自治体ごとに変わるため、最新の取り扱いは上士幌町役場や地元の商工会に直接確認してください。ここでも、事業の中身が見えてから動くほうが、相談の中身が濃くなります。
上士幌町で現実に始めやすい事業の形

小さな町だからといって、できる事業が限られるわけではありません。むしろ酪農・農業、観光、子育て支援といった町の資源と、これまで会社で培ったスキルを掛け合わせると、地元の人がやりたがらない隙間が見えてきます。
町外に届けるリモート型と、町内に根ざす地域密着型
ひとつは、勤め先で身につけたスキルをそのまま町外に届ける形です。Webの制作、データ分析、経理や事務の代行、オンラインでの講座など、場所を選ばない仕事は移住後も収入の軸を保てます。町外に顧客を持つリモート型の事業は、人口の少ない町でも収入が町の規模に縛られない強みがあります。
もうひとつは、町の暮らしや産業に根ざす形です。農産品の加工や販売の手伝い、ふるさと納税の返礼品まわりの発信支援、移住者向けの暮らしのサポートなど、町の中で生まれている流れに自分の手を差し込んでいきます。
- リモート継続型:
Web制作・事務代行・オンライン講座など、勤め先で得たスキルを町外の顧客に提供 - 地域コンテンツ発信:
酪農や農業の現場、ふるさと納税の返礼品を町外に伝える発信や販路づくり - 暮らしのサポート:
移住希望者の下見案内や子育て世帯向けの小さなサービスなど、町の受け皿を補う仕事
いきなり移住ではなく、関係人口・二拠点から
上士幌町は、ふるさと納税の寄附者を交流イベントや体験ツアーで町とつなぎ、関係人口を増やしてきた町です。この流れは、起業を考える人にとってそのまま入口になります。まず寄附者やリピーターとして通い、町の人と顔の見える関係を作りながら、自分の事業の種を試す。関係人口として通う期間に、町の人が本当に困っていることを一つでも見つけられれば、移住後の事業の核になります。
二拠点での準備には、もうひとつ利点があります。勤め先の収入を保ったまま小さく試せるので、うまくいかなくても生活が揺らぎません。続けるかやめるかを、生活の不安に追われずに判断できます。
地方で陥りやすい失敗と、1年目の進め方

人口の少ない町で起業する人がつまずきやすいのは、移住そのものを目的にしてしまうことです。住む場所だけ先に決めて、何で食べていくかが後回しになると、貯金を取り崩しながら答えを探すことになります。
移住が先、事業が後になると苦しくなる
地方移住で起業を考える方によく起きるのは、最初の半年から1年で収入の柱が立たず、想定より早く資金が細るパターンです。町への憧れが先に立ち、町の人が何にお金を払っているかを確かめる前に動いてしまうからです。移住の決断より先に、町の中で誰がどんなことに困り、何にお金を払っているかを自分の足で確かめないと、収入の見込みが立たないまま走り出すことになります。
だからこそ、関係人口として通う期間に、町の実情を確かめる作業を済ませておくことが効いてきます。
続けるうちに、自分のやることが見えてくる
最初から完璧な事業計画を立てる必要はありません。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書いたのですが、起業の1年目は、町や顧客を調べて、小さく試して、続けられる形に整えていく時間です。リサーチして、試して、手応えのあるものに絞り込んでいく。この順番で進めると、無理なく自分の事業が固まっていきます。
同じ本で紹介しているのですが、ある40代の会員さんは最初に卓球センターを考え、調べるうちに「自分はそこまで好きではない」と気づき、次に旅行用カバンのレンタルを試して撤退しました。それでも続けるうちに「ブログを始めたい人を手伝う」というニーズに出会い、12ヶ月目にはそのサポート業で軌道に乗っています。やめずに試し続けた人だけが、自分に合う事業にたどり着けます。続けることそのものが、答えを見つける手段になるのです。

上士幌町での起業を、今日から進めるために

上士幌町は、関係人口とふるさと納税で外とのつながりを育ててきた町です。その流れに自分の事業を重ねれば、勤めを続けながらでも準備を進められます。順番だけは間違えないでください。
まず起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の基礎と全体像をつかむことから始めてください。自分が何で食べていくか、どんな事業が自分に合うかの方向性が見えてきたら、そこで初めて北海道の起業支援金や上士幌町の移住相談の窓口を使います。方向が定まった人にとって、補助金や支援制度は強い味方になります。
そして、いきなり移住に踏み切る必要はありません。関係人口として通い、二拠点で試しながら、手応えのある事業を一つずつ固めていく。今日できることは、上士幌町の暮らしや産業を調べながら、起業の基礎を学べる動画を一本見るだけで十分です。そこから、あなたのペースで町との距離を縮めていけます。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
