記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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北九州で起業を考えるとき、ものづくりの街という土地柄をどう活かすかが分かれ道になります。鉄鋼・自動車・ロボットの集積に支えられたBtoBの裾野は広く、関門海峡と新幹線で本州側にも顧客圏がつながっています。
一方で、政令市の中では家賃や人件費を抑えやすく、特定創業支援等事業を使えば株式会社設立時の登録免許税を半額にできます。
会社員のまま小さく始め、方向性が見えてからCOMPASS小倉や補助金を道具として使う。それが北九州で着実に独立へ進むための順番です。
北九州で起業を始めるなら知っておきたい強み

北九州市は人口約90万人を擁する政令市で、令和3年経済センサス活動調査によると民営事業所数は39,995(うち法人26,706・個人13,055・団体234)にのぼります。注目したいのは産業構造で、市内総生産における第2次産業の構成比が27.0%と政令市の平均よりも高く、製造業の厚みが暮らしの根に残っているところです。
もう1つの強みが立地です。小倉駅から博多駅まで新幹線(みずほ・のぞみ)で最速約15分、関門海峡を渡ればそのまま本州の市場にもアクセスできます。福岡市と比較すると家賃・人件費の負担が抑えやすく、会社員のまま北九州で準備を始め、必要に応じて博多や下関の取引先まで足を運ぶといった働き方が組みやすい場所です。
- 市内総生産における第2次産業比率27.0%という製造業の厚み
- 関門海峡と新幹線で本州側にも直結する立地
- 福岡市と比較して家賃・人件費を抑えやすい生活コスト
- 特定創業支援等事業による株式会社設立時の登録免許税半額
- COMPASS小倉などの公的なコワーキング・相談窓口
26年で6万人を超える会社員の起業準備を支援してきた経験から見ると、地方都市で結果を出している人ほど「土地の強みを背中に置いてから動く」傾向があります。北九州でいえば、製造業の集積と低コストの暮らしを土台にできる立地そのものが、最初の参入障壁を下げてくれる味方です。
北九州市の創業支援制度・施設の全体像

北九州市は産業競争力強化法に基づく「北九州市創業支援等事業計画」の認定を受けており、特定創業支援等事業の支援を1ヶ月以上受けると、株式会社の設立時に資本金の0.7%かかる登録免許税が0.35%に軽減されます。最低税額でいえば、株式会社は15万円が7.5万円に、合同会社は6万円が3万円に下がる計算です。
創業支援の中核施設はCOMPASS小倉(コンパス小倉)です。小倉駅新幹線口のAIMビル6階にあり、コワーキングスペースとスモールオフィス、創業の総合相談窓口がまとまっています。「先輩起業家を紹介してほしい」「会員制施設を試したい」といった用途で使う場所です。
市の補助金としては、令和7年度の制度で、研究開発・実証枠が最大500万円/年(最大2年間で1,000万円)、事業展開枠が最大1,000万円/年(最大2年間で2,000万円)となっています。また、行政課題解決や市内企業との協業を対象としたイノベーション支援プログラムには最大400万円/年が設定されています。北九州商工会議所でも経営相談や補助金情報の提供を行っています。
- 特定創業支援等事業による登録免許税半額(株式会社15万円→7.5万円・合同会社6万円→3万円)
- COMPASS小倉のコワーキングとスモールオフィス・総合相談窓口
- スタートアップ研究開発・実証支援補助金(最大500万円/年)
- スタートアップ事業展開支援補助金(最大1,000万円/年)
- 行政課題解決・市内企業協業の補助金(最大400万円/年)
- 北九州商工会議所による経営相談・補助金情報
補助金や支援施設は、何を売るかの方向性が固まってから使う道具です。先に申請窓口を回るより、商品の輪郭を整えるほうが優先順位は上です。制度は「商品の磨きに集中する時間を買い直すための仕組み」と捉えると、使い方を間違えにくくなります。
北九州で起業に向いているビジネスの方向性

北九州市の事業所構成を見ると、卸売業・小売業が9,972事業所(24.9%)、宿泊業・飲食サービス業が4,856事業所(12.1%)、医療・福祉が4,229事業所(10.6%)と続きます。製造業の比率が高い土地柄は変わらないものの、暮らしと医療の事業者数も厚く、BtoB/BtoCを問わず「既にお金が流れている場所」が複数ある街です。
会社員時代の経験を商品にしていく際は、地場の事業所が困っている小さな仕事から拾い直すと立ち上がりが早くなります。たとえば次のような方向性です。
- 中小製造業の検査記録・伝票・出荷書類のデジタル化代行
- ロボット・FA関連企業向けの教育資料作成や据付サポート
- 医療・介護4,229事業所向けの事務代行・採用文書づくり
- 関門海峡・小倉城エリアでの体験ガイド・撮影・通訳
- 北九州への移住者向けの暮らし支援・行政手続きの代行
一方で、ものづくりの街は競合の数も多く、商品の輪郭がぼやけたまま発信を増やしても反応はほとんど返ってきません。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』にも書いたのですが、商品力・発信力・信用力の3つは掛け算の関係です。どれか1つがゼロなら、ほかの2つを伸ばしても結果はゼロになります。
北九州のような産業色の強い土地では、まず商品の輪郭を磨くことが最初の1手になります。「自分の商品は誰のどんな困りごとを解決するのか」を1枚の紙に書き出し、近い職場の知人3〜5人に当ててみると、輪郭の粗さがすぐに見えてきます。商品の確からしさが見えてから発信や制度活用に進むと、補助金の使いどころも判断しやすくなります。
北九州在住の会員さんの体験談

起業18フォーラムの会員、北九州市八幡西区にお住まいのTさん(仮名・50代男性・元自動車部品メーカーの検査担当・定年再雇用で月収32万円・妻と子ども2人)は、再雇用初年度に「このまま給与が下がり続けるのは不安だ」と感じ、自己流で起業準備を始めました。最初に選んだのは、知り合いの工場から廃番部品の在庫情報を集めて転売するEC、汎用工具のレビューサイト、検査用治具の中古販売の3商品を同時に走らせる進め方でした。
ところがどれも中途半端なまま、半年で月収ゼロが続きました。商品を3つ並列で走らせて発信ばかり増やしたために、お客様への信用も商品の輪郭も育たなかったのです。「もう自分には向いていないのかもしれない」と感じ始めた頃に、八幡西区の知人から起業18フォーラムを紹介されて参加します。
勉強会で繰り返し言われたのは「商品力と発信力と信用力を同時に育てるのは、個人ひとりではできない」という考え方でした。Tさんは商品を「中小製造業の検査記録のデジタル化代行」1サービスに絞り直し、自分が前職で培った検査基準書の読み方という名もなき強みを軸に据えました。月2社の小規模事業者にだけ、まずは無料で試してもらうところからやり直しました。
会社員のまま、商品を1つに絞る判断ができたかどうかで、その後の継続力が大きく変わります。Tさんは13ヶ月目に最初の月5万円、18ヶ月目で月18万円継続に到達しました。今も会社員のまま、北九州市内の中小製造業5社と継続契約を結んでいます。
- 商品を3つ以上同時に走らせて全部中途半端になる進め方
- 商品の磨きをせずに発信だけ先に増やす順序
- 補助金や制度を起業の入口に置いてしまう発想
- 同じ街の同業者を競合と見て敬遠してしまう姿勢
Tさんがやり直した順序は、北九州だけに当てはまる話ではありません。それでも、ものづくりの街には「磨いてきた1つの仕事」を持っている会社員が多く、絞り込みの判断さえできれば、その積み上げが商品の信用に直結しやすい土地柄です。
まずは小さく学ぶ。制度を使うのはそのあと

北九州で起業準備を始めるなら、最初の数カ月は学びと試運転に時間を割くことを勧めます。具体的には、起業18フォーラムの動画やセミナーで起業の全体像をつかみ、自分の名もなき強みを言語化したうえで、商品を1つに絞り込む段階です。月5万円が見えてきてから、特定創業支援等事業の支援を申し込み、COMPASS小倉や補助金を道具として使う流れにすると、制度の効きが大きくなります。
- 起業18フォーラムの動画・勉強会で起業の全体像を整える
- 自分の名もなき強みを言語化し、商品を1つに絞る
- 知人3〜5人にモニターとして使ってもらい、輪郭を確かめる
- 月5万円が見えたら特定創業支援等事業の支援を受け始める
- COMPASS小倉や補助金は方向性が固まってから活用する
今夜、自分の前職で「あの仕事はあの人に聞けばいい」と社内で言われていた領域を、紙に1つだけ書き出してみてください。その1行が、北九州で売っていく商品の輪郭の起点になります。

鉄都の街は、機械を磨き続けてきた人たちが暮らす場所です。あなたが磨いてきた1つの仕事を、まずはひとりに渡すところから始めてみてください。
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