西粟倉村の起業はどう進める? ローカルベンチャーの村で踏み出す道筋制度

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

岡山県の北東、鳥取県との境にある西粟倉村は、人口1,300人ほどの小さな村です。それでも「起業したい人が集まる村」として全国から注目されています。いつかは自然の近くで自分の仕事を持ちたい。そう考えたとき、こうした村の名前が候補に上がる方は少なくありません。

ただ、勢いで移住してから「何で食べていくか」を探し始めると、思った以上に苦しくなります。

この記事では、西粟倉村という土地の特徴を押さえながら、勤めながら起業の方向性を固めていく手順を順番に整理していきます。

ポイント なぜ小さな村に起業家が集まるのか

森林の村が起業家の集まる村へ変わった背景と理由

西粟倉村

「百年の森林構想」が起点になった

西粟倉村は面積の約93%を森林が占める、典型的な中山間の村です。2008年に村が掲げた「百年の森林構想」をきっかけに、林業を軸にした地域づくりが本格的に動き出しました。間伐材を加工して家具や床材として売る取り組みから、村の外の人材を呼び込む流れが生まれていきます。

ここで大切なのは、村が「企業を誘致する」のではなく「事業を起こす人を育てる」方向へ進んだことです。大きな工場を一つ呼ぶより、小さな事業をいくつも生むほうが、この規模の村には合っていました。

ポイント 「消滅可能性」から抜け出した村

人口や起業数の数字で見る西粟倉村の現在地

西粟倉村

かつて西粟倉村は、人口減少を理由に「将来消える可能性がある自治体」として民間の推計に挙げられたことがありました。ところが2024年4月に公表された新しい推計では、そのリストから外れています。背景にあるのが、移住して事業を起こした人たちの存在です。

  • 人口:
    約1,300人(村の約2割弱が移住者とその子ども)
  • 起業数:
    2008年以降に50社を超えるローカルベンチャーが誕生
  • 雇用:
    新たに約220人分の働く場が生まれた

この数字は、日本経済新聞の報道(2024年5月)や村の公式情報をもとにしています。人口1,300人ほどの村で50社という起業の密度は、全国でも珍しい水準です。人口の規模ではなく、事業を起こす人の数で村の未来を支えてきたのが西粟倉村の特徴です。

ポイント 村が用意している起業支援を知っておく

村が用意する起業支援の制度を頭に入れておく

西粟倉村

ローカルベンチャースクールという入口

西粟倉村には、起業を志す人を村ぐるみで支える仕組みがあります。代表的なのが2015年に始まった「西粟倉ローカルベンチャースクール」です。村内で事業を立ち上げたい人を募り、研修や先輩起業家との対話を通じて事業計画を磨いていく取り組みになっています。

地域おこし協力隊の枠を使って、最長3年ほど村に滞在しながら準備を進める道もあります。すでに事業を回している移住者が身近にいるので、相談相手に困りにくいのも、この村ならではの環境です。

ポイント 支援制度は「方向性が固まってから」効く道具

補助金や相談窓口を活かす正しい順番への注意

西粟倉村

こうした支援制度や補助金は、とても心強い仕組みです。ただ、ひとつだけ順番に気をつけてほしいことがあります。補助金や移住相談窓口は、自分が「何屋さんになるか」が見えてきたあとに使う道具だと考えてください。

何を売るかが決まっていない段階で窓口に行っても、担当者も具体的な提案がしにくいものです。逆に「林業の周辺でこういう事業をやりたい」と言える状態であれば、制度はぐっと使いやすくなります。まずは方向性を自分の中で固めることが先決です。

ポイント 西粟倉村で現実的に始めやすい事業

村の森林資源と勤め人の経験を掛け合わせる発想

西粟倉村

林業の周辺には事業の余白が多い

西粟倉村の強みは、なんといっても森林資源です。木材そのものの加工だけでなく、その周りには事業の余白がたくさんあります。木工雑貨のオンライン販売、村の暮らしを発信するコンテンツ制作、森を活かした体験プログラムの運営などが、現実的に始めやすい例です。

会社員時代に身につけた経験も、そのまま武器になります。たとえば、Webマーケティングの経験があれば村の事業者の発信を手伝えますし、経理の経験があれば小さな事業者の事務を支える仕事が成り立ちます。

  • 木を活かす:
    木工雑貨や家具のオンライン販売、間伐材を使った商品づくり
  • 発信で稼ぐ:
    村の暮らしや林業の現場を伝えるコンテンツ制作、SNS運用代行
  • 会社員の経験を売る:
    経理・人事・Web運用など、小さな事業者が外注したい業務の代行

ポイント いきなり移住しない選択肢も持つ

二拠点や関係人口から無理なく始める選択肢

西粟倉村

起業の入口として、いきなり全部を村に移す必要はありません。会社員を続けながら、まずは関係人口として村に通い、現地の事業者とつながりを作る方法もあります。東京や大阪に拠点を残したまま、月に数回通って事業の感触を確かめる二拠点のスタイルです。

リモートワークを続けながら、空いた時間で村の事業を育てる。そうして手応えがつかめてから移住を判断すれば、生活が立ち行かなくなるリスクをかなり抑えられます。

ポイント 村で事業を起こす人がたどりやすい道筋

村で起業する人によくある成功と失敗のパターン

西粟倉村

受け皿を一枚、先に持っておく

西粟倉村のような小さな村で事業を始める方によく起きるのは、移住してから「自分が何屋さんなのか」を探し始めて時間を使ってしまうパターンです。村に魅力を感じて飛び込んだものの、収入の柱が見えないまま貯金が減っていく。地方移住の相談で繰り返し聞く失敗の形です。

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、「好きなこと」と「求められていること」が重なる一点を先に見つけることの大切さを紹介しています。移住の前に「自分はこの村でこれを売る人です」と言える一枚の看板、つまり受け皿を先に用意しておくことが、つまずきを防ぐ最大の鍵になります。

この村に集まる移住者は20代から40代が中心で、勤めながらオンラインで商品を一つ売ってみる、村の事業者の仕事を週末だけ手伝ってみる、という小さな試行から入る人が目立ちます。半年から1年ほどかけて「これなら続けられそうだ」という確かさを得てから、移住という大きな一歩を踏み出すケースが多いです。受け皿が先、移住は後、という順番です。

ポイント 西粟倉村で起業するための次の一歩

起業の基礎を固めてから村の制度を使う手順

point

ここまで読んで、西粟倉村で何かを始めてみたいと感じた方へ、進め方の順番を整理します。最初にやるべきは、村の窓口を訪ねることではありません。まずは起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の基礎と全体像をつかんでください。自分の経験のどこが売り物になるのか、何屋さんとして立つのかを、ここで言葉にしていきます。

方向性が見えてきたら、次に西粟倉村のローカルベンチャースクールや移住相談窓口、補助金を活用する段階に進みます。受け皿の形が固まっているほど、これらの制度は力を発揮します。

そして、いきなり全部を移すのではなく、関係人口や二拠点居住から段階的に関わっていくのがおすすめです。お試し移住や期間限定での滞在から始めれば、自分と村の相性も見極められます。今日できることは、起業の全体像を学べる動画を一本見て、自分が村で売れそうなものを一つ書き出してみるだけで十分です。

森に近い暮らしと、自分の手で起こした仕事。その両方を手にした人は、村に入る前から準備を始めていました。あなたの番は、今日の一歩から始まります。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!