建築士の独立で失敗しない準備と起業アイデア5選

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「いつかは自分の名前で設計をしたい。」そういう思いを胸に抱えながら、ゼネコンや設計事務所で10年以上働き続けている建築士さんは、決して少なくありません。独立を考えるたびに「もっと実績を積んでから」「まず大きな事務所を構えてから」と後回しにしてきた方も多いのではないでしょうか。

でも、その「準備が整ったら」という感覚は、起業準備を始める上で最も避けたいブロックの一つです。

今回は、建築士としての経験を持つ会社員が、在職中からどう動けるかを具体的に整理していきます。

ポイント 建築士の「設計力」は、そのままビジネスになる

11万件超の設計事務所が示すもの

建築士

国土交通省の調査によると、2022年4月時点で全国の建築設計事務所は114,983件にのぼります。全国のコンビニエンスストア(約6万店)の約2倍という数字です。この事実が示しているのは、「建築士の設計力はそれ単体で商売になる」ということに尽きます。

建築士の強みは、CADを使った設計だけではありません。現場監理のノウハウ、法規チェックの精度、クライアントとの打ち合わせ経験、施工会社との調整力。これらは普段の業務の中で10年以上積み上げてきた「名もなき強み」です。「私は設計以外に何もできない」という考え方は、一度外してみてください。

あなたが当たり前にこなしている法規の読み解きや工期の管理は、一般の人にとってまったく未知の世界です。その当たり前が、誰かにとっての大きな価値になります。

ただ、ここで多くの建築士さんが勘違いをします。「設計スキルで独立するには、事務所と従業員が必要」という思い込みです。実際には、一人の建築士が個人事業主として設計監理を受注するのに、法的な制限はほとんどありません。一級建築士または二級建築士の資格があり、都道府県に建築士事務所の登録をすれば、個人でも業務が行えます。事務所登録は在職中でも申請できます。

ポイント 在職中にできる起業準備のステップ

会社を辞める前にやるべき4つのこと

建築士

建築士の起業準備は、まず「誰の何を解決するか」を絞ることから始まります。「何でも設計します」では依頼が来ない。ターゲットを絞ることで、口コミや紹介が生まれやすくなります。

ステップ①:得意領域を1つに絞る

住宅なのか、店舗なのか、リノベーションなのか。自分が最も深く経験を積んだ領域を棚卸しします。「木造住宅の家族動線設計が得意」「古民家リノベが好き」という具体性が、最初の顧客を生みます。「なんでもやります」は逆に信頼されにくいのです。

ステップ②:最初の依頼を「無料または割引」で受ける

拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』でも書いているのですが、最初の1人の顧客を得ることが起業の最大の難関です。知人・友人の住宅改修相談に無料または低価格で対応することで、最初のポートフォリオと口コミ源をつくります。「お金をもらえるか」より「誰かの役に立てるか」を先に試す順番が大切です。

ステップ③:SNSまたはブログで発信を始める

住宅設計のポイント、法規の読み方のコツ、現場で見た工夫など、日々の業務から発信できる内容は無数にあります。専門家としての発信は「この人に頼みたい」という信頼を積み重ねます。

どのプラットフォームが合うかは人によります。写真や図面を見せたい方はInstagramやYouTube、文章で伝えたい方はブログやnoteとの相性がいいです。「毎日投稿する」より「続けられる頻度で発信する」を優先してください。最初の発信が荒削りでも、それが逆に信頼につながることがあります。

ステップ④:建築士事務所の登録準備を確認する

個人で設計監理を受注するためには、都道府県への建築士事務所登録が必要です。登録は在職中でも申請できます。手続きは管轄の都道府県建築士事務所協会に問い合わせると、必要書類と流れを確認できます。事前に準備しておくと、独立の判断をしたときにすぐ動けます。

これら4ステップを会社員のまま少しずつ進めていくのが、建築士の起業準備の基本的な形です。

ポイント 建築士の経験を活かした起業アイデア

「設計以外」も視野に入れた収入の軸

建築士

起業18フォーラムで支援してきた建築士さんの傾向を見ると、最初の収入につながりやすいのは「設計そのもの」よりも「設計の周辺サービス」であることが多いです。

  • 個人住宅のリノベーション設計・監理(友人・知人からの紹介受注)
  • 建築確認申請の代行サービス(小規模工務店・DIYリノベ向け)
  • 住宅購入前の物件調査・セカンドオピニオン
  • インテリアコーディネートとの複合サービス(空間づくりの総合提案)
  • 建築知識を活かしたオンライン相談・コンサルティング

特に「住宅購入前の物件調査」は、不動産会社に言いにくいことを第三者として指摘できる立場を活かした、建築士ならではのサービスです。耐震性の懸念点や法規上の問題を購入前に確認したいという需要は、都市部を中心に確実にあります。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、建築技術者の平均年収は640.8万円です。同等以上の収入をフリーランスとして得ている建築士も、都市部では珍しくありません。ただし、独立直後からその水準に達するわけではないので、在職中に軌道を確認してから動く順番が安全です。

会員Aさん(40代前半・大手ゼネコン設計部・子ども2人)は、設計経験15年のベテランです。起業準備を始めた当初は「大きな設計事務所を構えてから独立する」という考えが強く、なかなか動けずにいました。転機は、会社に報告したうえで友人の自宅リノベーションをプロボノとして担当したことです。「これで1件受注できたら成立する」という手応えを得て、9ヶ月目に初案件の報酬20万円を受け取りました。現在は月2件ペースで個人受注の体制を整えながら、独立準備の最終段階に入っています。

まず「1件」を成立させることを目標にしてください。月10件の受注は、その最初の1件を積み重ねた後の話です。

ポイント 建築士が起業で失敗しやすいパターン

資格があるからこその落とし穴

建築士

建築士として起業するとき、「専門性が高い」ということが逆に障害になるケースがあります。以下の失敗パターンは、建築士さんから実際に相談が届くものです。

失敗①:「大きな仕事」だけを待ち続ける

建築士には「百万円単位の案件しか受けない」という意識が根づきやすいです。しかし最初の段階では、小さな相談や軽微な改修の依頼に丁寧に向き合うことが、後の大きな案件につながります。「最低受注金額」を早期に設定しすぎると、依頼そのものが来なくなります。

失敗②:資格の取得にこだわりすぎる

「二級から一級を取ってから独立しよう」という考え方です。一級建築士があれば受けられる案件が増えるのは事実ですが、二級建築士でも個人住宅や小規模施設の設計監理は十分に行えます。「もっと準備してから」という発想は、起業準備では致命傷になりやすい。今持っている資格と経験で始められる仕事から着手することが大切です。

失敗③:営業をしない

設計の仕事は「いい設計をすれば依頼が来る」という業界文化があります。しかし独立当初は、まず知人・友人に「個人で仕事を受け始めた」と伝えることが最初の営業です。口コミが最初の顧客源になる点は、他の専門職と変わりません。メッセージを送るのが気恥ずかしいと感じる方も多いですが、「知人10人に話す」から始まった起業準備が、最初の受注につながった事例は数多くあります。

ポイント 「20点の設計図」でまず動いてみてください

完璧を待たずに最初の一歩を踏み出す

建築士

建築の仕事には「完璧な図面」を追求する文化があります。それは現場では正しい姿勢です。でも起業準備の場面では、完璧を待っていると永遠に始まりません。

拙著『起業神100則』に「20点の状態でいいから出してみて」という考え方が出てきます。これは建築士さんにとっても有効な考え方です。完成度より先に「誰かの役に立てるか」を早めに試す。その繰り返しの中で、独立後の軸が見えてきます。

建築士としての経験は、あなたが思っている以上に、社会で求められています。設計図を描く技術と現場で磨いた判断力は、会社の中だけで使うにはもったいない財産です。

デザイナー起業の始め方|スキルを活かして独立する前に知っておくこと
デザイナーとして働きながら「このスキルで独立できないか」と考えたことがある人は、思っている以上に多いです。でも

その力を自分の名前で使い始める準備を、今日から一歩ずつ進めていきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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