会社を辞めるべき? 勤めながら起業準備を続ける? 在職180日で見極める道

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

会社を辞めて起業に専念すべきか、それとも今の勤め先を続けながら準備を進めるべきか、ここ何年も答えが出せずにいます。辞めないと本気になれない気もする一方で、家族もいるので失敗が怖い。

どちらから動き出すのが正解なのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

会社を辞めるべきか、それとも勤めを続けるべきか。長く迷っているのなら、すぐに辞めないことが、むしろ答えに近づく近道になります。

辞めるかどうかは、退職せずに180日かけて4つの段階を試し、その手応えで見極めるという考え方があります。厚生労働省は兼業に関するガイドラインを示していますが、会社の外での仕事が当然に認められるわけではなく、勤め先の就業規則や許可・届出の手続きが優先します。辞めるか続けるかを、今日この場で決めてしまう必要はありません。

「辞めてから考える」が迷いを長引かせる理由

私が相談を受けるなかでは、辞めてから起業を考えようとする人ほど、時間ができても迷いが晴れにくい傾向があります。退路をなくすと、かえって一つひとつの判断が重くなるからです。

「辞めてから」と「勤めながら」、それぞれの言い分を並べてみます。どちらにも、うなずける理由があります。

  • 「辞めてから」派の言い分:
    退路を断てば本気になり、時間をすべてそそげて、中途半端では成功しないという感覚
  • 「勤めながら」派の言い分:
    給料という土台があり、失敗しても生活が崩れず、試しながら軌道修正できるという安心

問題は、この二つを「どちらか一方を選ぶしかない」と受け取ってしまうことです。二択だと思い込むほど、決められないまま何年も過ぎていきます。

二択を解く「段階移行」という第3の道

そこでおすすめしたいのが、二択の外に出る進め方です。辞めるか続けるかを先に決めず、順番に試して、答えを自分の中から出していく。これが段階移行という第3の道になります。

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、退職せずに180日かけて、次の4つの段階を踏む進め方を紹介しています。

  • 段階1 考え方を整える:
    完璧を目指さず、100点でなく20点で外に出す準備
  • 段階2 強みから商品をつくる:
    日常の業務や得意なことの棚卸しと、届けられる商品の整形
  • 段階3 届け方を試す:
    知人1人に届けるサイズでの、伝え方と集め方の検証
  • 段階4 本当に売れるかを確かめる:
    最初の1件を有料で受けた後の、手応えと続けやすさの確認

この180日を歩くと、不思議なことが起きます。続けられるかどうかは、気持ちの強さではなく「物理的に無理がないか」で決まると、拙著でも紹介しています。手応えがあって生活も崩れないなら、辞める判断は自然とついてきます。逆に苦しいなら、それはどこかに無理がある合図です。

辞める道を選んでも支えになる制度はある

「勤めながら試す」を勧めましたが、いよいよ辞めると決めたときのために、公的な支えも知っておくと安心です。

雇用保険の再就職手当は、基本手当の受給資格決定後に事業を開始した場合も、要件を満たせば支給対象になり得ます。所定給付日数を3分の2以上残していれば残日数の70%、3分の1以上なら60%が支給率です。

ただし、待期の経過、残日数、事業を安定して継続できると認められること、申請期限などの条件があり、自動的に受け取れる制度ではありません。自己都合退職などで給付制限がある人は、待期満了後1か月の開始時期にも制限があります。事業準備を始めた日が開業日と判断される場合もあるため、着手前に管轄のハローワークへ相談し、受給を前提に資金計画を組まないことが大切です。

もう一つ、時代の追い風も知っておいてください。

先ほど触れた厚生労働省のガイドラインは、2022年の改定で、会社の外での仕事を許容しているか、条件付きの場合はその条件をホームページなどで公表することが望ましいとしました。対象には、他社に雇用される形だけでなく、事業主や請負・委託として行うものも含まれます。これは企業への公表の推奨であって、個々の活動を許可する規定ではありません。

制度と会社のルール、両方を先に確かめておけば、辞めるにしても続けるにしても、足元が見えて動きやすくなります。

辞める・辞めないを考える前に、まず勤め先の就業規則で、外の仕事の扱いが許可制か届出制かを1点だけ確認してみてください

甲斐さんが二択から抜け出せた理由

ここからの人物・数値・発言は、段階移行を説明するために構成した架空の事例です。実在の個人や取引実績を示すものではありません。

架空の例に登場する甲斐さん(40代)は、メーカーで営業をしていた頃、望まない部署への異動を告げられ、自分の時間もキャリアも会社に握られている、と痛感したそうです。以前かじった起業準備は、忙しさを言い訳に止めたまま。辞めるか、このまま定年までいるか、という二択で何年も揺れていました。

一歩を踏み出せたのは、起業18フォーラムの勉強会で、辞めてから決めるのではなく、勤めているうちに小さく試して確かめる、という順番を知ったからでした。まず就業規則を確かめ、外の仕事が届出制だと分かったところから、止まっていた歯車が動き出します。

得意だった提案資料づくりを1時間の相談メニューにし、勤務先のルールと守秘義務・競業の範囲を確認したうえで、知人1人から有料で引き受けました。勉強会で先に進んでいる会員の見せ方を知り、自分のサービスの伝え方を作り直したそうです。

二択で揺れていた頃には、想像もしなかった変化が起きました。今では、甲斐さんを名指しで「あなたにお願いしたい」と声がかかるようになっています。辞めるか続けるかを、いつでも自分の側で選べる。その感覚を持てたことが、何よりの手応えだと話してくれました。

あなたはどこから試すか

辞めるかどうかの答えは、机の上で考え続けても出てきません。試した手応えだけが教えてくれます。今日から始められる順番を、3つに絞りました。

  • 就業規則を確認する:
    外の仕事が許可制か届出制かという1点の確認
  • 最初の1件を試す:
    勤務先のルールや必要な許認可を確認した後の、知人1人による小規模な試行
  • 手応えを記録する:
    かかった時間と気持ちの変化についての1ヶ月の記録

辞める決断を、今日する必要はありません。まずは就業規則と必要な許認可を確認し、問題がなければ知人1人に小さな試作を見てもらってください。有料で受ける場合は、守秘義務、競業、勤務時間、税務や消費者対応も先に整理します。両方を比べる材料が、そこで初めて手に入ります。

段階移行は、決断を先延ばしにすることではありません。辞めるという大きな決断を、確かめられる小さな一歩に分けていく方法です。

勤めながらの起業準備、始め時はいつ? 踏み出す手順を解説
● 質問 いつか自分で何か始めたい気持ちはあるのですが、まだ会社の仕事が忙しく、本格的に動くなら辞めてからのほ

今すぐ辞めて挑むのも、勤めながらじっくり試すのも、間違いではありません。大切なのは、どちらを選んだとしても、追い込まれてではなく、自分で選んだと言えることです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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