資格を取り続ける女性が起業から遠ざかっている理由は?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

30代後半の働く母です。教育研修会社に勤めながら、中高生の子育てと並行して起業準備をしたいと考えています。ただ、まず資格を取るかどうかで12ヶ月止まっています。キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・コーチング資格と3つの講座を比較しては、また保留する日々です。

お金も時間も限られるなか、資格を増やすことが遠回りになるパターンはあるでしょうか?

起業前質問集

● 回答

資格を1つ増やすたびに起業が近づく気がするのに、月収はいっこうに動かない。この順番のねじれが、12ヶ月を空回りさせている正体です。まず、よくある1年の流れを見てください。

資格を増やしながら12ヶ月止まる典型パターン

埼玉県在住の38歳の働く母Sさん(仮名・教育研修会社マネジャー・中高生2人)の1年は、こんな流れでした。

30代後半に入って「このままでは何も残らない」と感じ、夜の23時から1時間、家計簿と参考書を開く生活を始めました。子どもが寝るのを待ってからの時間です。最初の3ヶ月でキャリアコンサルタント資格を取得、続く3ヶ月で産業カウンセラー、その次の3ヶ月でコーチング団体の認定。本人いわく「資格欄が増えるたびに、起業に近づいた気がした」とのこと。ただ、12ヶ月経った時点での月収はゼロでした。

日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)によれば、開業者の97.6%に勤務経験があり、81.1%に斯業経験があります。

資格の有無そのものより、これまでの仕事で積み上げた経験や知識をどう事業に転用するかが重要だと読み取れます。起業の現場で効いているのは「資格そのもの」だけではなく「経験と知識を含めた手持ちの活かし方」です。

資格を増やすほど遠ざかる構造

Sさんが12ヶ月で気づいたのは、資格を増やす行為が「安心の供給」にはなっても「お客さまの供給」にはならない構造でした。資格は、自分が次の一歩を踏み出すための心の支えにはなります。ただし、最初のお客さまを連れてはきてくれません。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』には「相談された場面を10件書き出す」という最初のワークがあります。資格に投じる時間より、過去1年で実際に同僚・友人・知人から相談された場面を10件書き出した1晩のほうが、最初のお客さまの輪郭ははるかにくっきり見える、という考え方です。

「相談された場面10件」の書き出し方

  • 過去12ヶ月で、誰か(同僚・友人・ママ友・親戚)から「ちょっと相談していい?」と切り出された場面を思い出す
  • 場面ごとに「誰が/どんな状況で/何に困っていて/自分が何を答えたか/どうやって解決に向かったか」を1行ずつ書く
  • 10件書き出すと、相談テーマに必ず偏りが出る。その偏りこそが、あなたが商品にできる領域
Sさんが13ヶ月目に動いた1晩の棚卸し

Sさんは起業18フォーラムへ参加。資格テキストを閉じて、子どもが寝た夜23時にA4用紙1枚を開きました。書き出した10件のうち、職場の後輩から相談されたテーマが半分を占めていました。「子育てと両立しながら昇進試験を受けるべきか」「育休復帰後にどう声をかけたら不機嫌な部下と話せるか」「中学生の子の進路相談で自分の親と意見が割れたときの整理の仕方」。

本人の予想では「キャリアコンサルタントの知識を活かしたい」と思っていたのですが、実際の相談は「働く母と中学生の親の二重の判断の整理」という、資格テキストには出てこない領域に集中していたのです。

14ヶ月目以降にSさんが組み立て直したもの

翌月、Sさんは「働く母×中学生の進路相談・60分8,000円」というメニューを1枚紙にまとめ、職場で過去に相談を受けた5人に「メニューを作ったので試してくれませんか」と個別メッセージを送りました。3人から返事があり、そのうち2人が初回相談に来てくれました。

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14ヶ月目で月8,000円、18ヶ月目で月2万4千円、24ヶ月目で月6万円。資格は最後の1年で1つも増えていません。本日の終業後、A4用紙1枚と鉛筆を用意して、過去1年で相談された場面を10件書き出してみてください。キャリアコンサルタントの講座より速く、起業の輪郭が見えてくるはずです。

資格は遠回りではありません。ただし、資格を取り続けることだけが準備になってしまうと、12ヶ月があっという間に過ぎていきます。今夜の1時間を、参考書を閉じて、相談された場面の棚卸しに使ってみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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