記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
学生の頃から英語だけはずっと苦手で、TOEIC等のテストも受けたことがありません。先日参加した起業準備のセミナーで「これからの時代は英語ができないと厳しい」という話を聞いて不安になったのですが、英語ができなくても起業はできますか?

● 回答
日本政策金融公庫総合研究所の2024年度調査でも、開業後に苦労した点の上位に語学力は挙がっていません。起業の可否を分けているのは、英語力ではなく資金繰りや販路開拓への向き合い方です。
とはいえ、海外のサイトから仕入れたり、海外製のツールを使ったりする場面では、英語が要るのではないかと感じる人も多いはずです。どこまでが日本語だけで完結し、どこから英語や翻訳の力が要るのかを、具体的に整理していきましょう。
苦労した点の上位に語学力は入らない
日本政策金融公庫総合研究所が2024年11月に公表した「2024年度新規開業実態調査」は、開業後の企業1,990社から回答を集めたものです。その中で苦労した点の上位に並んだのは「資金繰り、資金調達」「顧客・販路の開拓」「財務・税務・法務に関する知識の不足」であり、語学力の不足は含まれていません。
英語ができるかどうかより、お金の流れや売り先の確保のほうが、開業後の経営を大きく左右するということです。上位に挙がった3つを整理すると、次のようになります。
- 資金繰りと資金調達:
運転資金の確保と入出金のタイミング調整 - 顧客と販路の開拓:
最初の取引先の確保と継続的な集客の仕組み - 税務・法務の知識:
確定申告や契約書などの制度面の理解
英語そのものへの苦手意識も、特別なものではありません。2025年11月に発表された「EF英語能力指数(EF EPI)」の最新版では、日本は123の国と地域の中で96位、スコアは446という結果でした。
ただし、EF EPIは英語学習に関心のある人などが自ら受験したオンラインテストを基にしており、日本の人口全体を代表する調査ではありません。この順位から、英語を使いこなす人の人口割合までは判断できません。
英語が必要になる場面とならない場面
起業準備の中身を具体的に分けてみると、英語がほとんど関係ない作業のほうが多いことに気づきます。よくある場面を整理しました。
| 起業準備の場面 | 英語の必要度 |
|---|---|
| 開業届や税務署への届出 | 日本語だけで完結する |
| 会計ソフトでの記帳や請求書の発行 | 国内向けサービスなら日本語対応が基本 |
| SNSでの発信や集客 | 日本語の読者に向けて書くため不要 |
| 海外の資料や説明書を参照するとき | 翻訳ツールを使えば大部分に対応できる |
表のとおり、英語が顔を出す場面はごく一部です。英語で書かれた説明書に行き詰まったときは、その文章ごと翻訳ツールに貼り付けて、日本語で意味を追ってみてください。
それだけで、次にやるべきことの見当がつくようになります。
資格でなく現場経験を商品にする発想
英語力や資格は、履歴書に書きやすい「持っていないものリスト」に見えてしまいがちです。
2018年に出した拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、離婚や事業の失敗、人見知りといったマイナスに見える経験さえも独自の切り口になり、才能のない人は一人もいないと紹介しています。英語という汎用スキルの有無より、これまで会社で積み重ねてきた実務そのものが、他の人には簡単に真似できない個性になります。
だとすれば、次に見るべきは英語の点数ではなく、自分の実務の中身です。
自分の実務経験を「プロダクト」「スキル」「ノウハウ」「スペース」のどの形に当てはめられるか一度分類してみると、英語の有無より先に、商品の輪郭が見えてきます。
- 作業の再現性:
何十回、何百回と正確に繰り返してきた実務の積み重ねという安心材料 - 例外対応の引き出し:
過去に処理したイレギュラーな案件の数だけ備わる、初めて起業する人にはない判断の速さ - 専門用語を言い換える力:
難しい実務を知識のないお客様にもわかる言葉に置き換える、英語より先に必要とされる力
沢田さんが職務経歴書で気づいたこと
起業18フォーラムの会員さんにも、同じ不安を抱えていた沢田さん(40代後半・製造業の経理事務を15年)がいます。TOEICも英検も受けたことがなく、起業準備のセミナーで語学力の話が出るたびに、資格欄が空欄の自分に自信を持てずにいました。
転職サイトに登録するために職務経歴書を書き直していたとき、資格の欄はほとんど空白のままなのに、実務の欄には月次の締め作業や税務調査への対応、原価計算の見直しなど、15年分の具体的な仕事がびっしり書けることに気づいたのです。
その気づきを起業18フォーラムの勉強会に持ち込み、他の会員さんが自分の実務経験をどう仕事に置き換えたかを聞いたことで、沢田さんは英語や資格でなく、実務の再現性こそが自分の武器だと整理できました。
勉強会のあとは、個人事業主向けの記帳・経理サポートという形に絞り込み、開始から半年で継続の顧問先が3件、単発の記帳整理も合わせて月に12万円ほどの収入になっています。
今日からできることがあるとすれば、まずは今の仕事の中で「ありがとう」と言われた場面を、1週間だけ気に留めて数えてみることです。それが、英語より先に商品になる種です。
英語の点数がどうであれ、これまで積み重ねてきた実務の経験は、他の人には真似できない資産です。
帳簿や数字の扱いに苦手意識がある人も、同じように「持っていないもの」ばかり数えてしまいがちです。数字への苦手意識との向き合い方は、次の記事でも詳しく取り上げています。
「英語ができない」という一点だけを見れば弱みに見えても、15年間積み重ねてきた実務そのものは、誰にも真似できない資産です。その資産に気づけた瞬間から、英語への苦手意識は起業を止める理由ではなくなります。
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