記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
一人暮らしで扶養している家族もいません。守るものが少ないぶん、起業準備では思い切ってリスクを取れる立場だと思っています。一方で、もし収入が途切れたら頼れる人がいないという不安も拭えません。
独身の自分は、どこまでリスクを取って、どれくらいの生活防衛資金を残しておけばいいのでしょうか?

● 回答
独身で扶養家族がいない方が起業準備で最初に決めるべきは、リスクの大きさではなく、生活費の何ヶ月分を手元に残すかという生活防衛資金の基準です。守るものが少ない立場は確かに強みですが、その自由をどう設計するかで結果は大きく変わります。
起業18フォーラム会員の黒田さん(仮名・30代後半・物流会社の事務職)も、同じ問いを抱えて相談に来られました。自由に動ける立場をどう使えばいいのか、迷っていたのです。
自由が最大の強みであり、最大の落とし穴になる
扶養する家族がいないと、平日の夜も週末も、自分の判断だけで動かせます。家計を誰かと相談する必要もありません。独身で身軽な立場は、起業準備を進めるうえで時間とお金の使い方を自分一人で決められる大きな強みになります。
ただ、ここに落とし穴があります。拙著『起業神100則』では、起業の最大のメリットは自由であり、最大のデメリットもまた自由だと書きました。誰にも止められないからこそ、際限なく踏み込んでしまう。私が現場で見てきた独身の準備中の方には、勢いで貯金を講座やツールに注ぎ込み、手元が薄くなって不安に飲まれる方が少なくありませんでした。
黒田さんも最初は自己流でした。守るものがないからと、半年で貯金の大半を高額な起業塾とサイト制作の外注に使い、いざ収入が立たないと分かった時には手元の現金がほとんど残っていなかったのです。
頼れる人がいないからこそ、生活防衛資金を先に決める
一人暮らしで頼れる相手がいない不安は、感情ではなく数字で対処できます。最初にやるのは、月々の生活費を把握し、その何ヶ月分を絶対に使わないお金として分けておくことです。
独身で会社員を続けながら準備するなら、生活費の半年分を生活防衛資金として確保しておくと、収入の波に飲まれずに動けます。この半年分を別の口座に隔離してから、残った範囲だけで起業準備に使うと決めるのが順番です。守るものが少ない立場でも、頼れる人がいないぶん、この一線だけは厳しく引いておくほうが安心して挑戦できます。
背景の数字も知っておくと、自分の位置が見えてきます。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査2024年」(単身世帯調査・2024年12月18日公表)では、金融資産を保有していない単身世帯が32.8%、保有額の中央値は100万円でした。単身世帯の3割超が金融資産を持たないという現実は、頼れる人がいない立場ほど手元の防衛資金を先に固める意味を裏づけています。
- 生活費を把握する:
家賃・食費・通信費など月々の必要額を一度書き出す - 半年分を隔離する:
生活費の半年分を別口座に移し、準備資金とは分けて触らない - 残りの範囲で動く:
隔離後に残ったお金の中だけで起業準備の支出を決める
勉強会で気づいた「自由の使いどころ」
転機は、黒田さんが起業18フォーラムの勉強会に参加したことでした。そこで自由はアクセルだけでなくブレーキも自分で握る立場だと知り、自分が勢いだけで踏み込んでいたと気づいたのです。
黒田さんはまず、月々の生活費を書き出し、その半年分を別口座に移しました。残ったお金の範囲だけで動くと決め、高額な外注はやめて、自分の手で小さく作って試す方法に切り替えたのです。身軽さは、お金を使う自由ではなく、平日の夜に時間を寄せる自由のほうに振り向けました。
独身ならではの時間の自由を、支出ではなく試行回数に使う。これが効きました。1年後、黒田さんは勤めながら月の副収入が38,000円ほどに届き、生活防衛資金は半年分を一度も崩さずに残せていました。
守るものが少ない立場は、無謀に賭ける自由ではなく、何度も小さく試せる自由として使う。黒田さんが変えたのは、リスクの大きさではなく自由の使いどころでした。今のあなたが半年分の生活費を先に隔離できれば、頼れる人がいなくても、不安に飲まれずに準備を続けられます。

今夜、毎月の生活費を一度書き出して、その半年分がいくらになるかを計算してみてください。
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