記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
これから起業しようと考えていますが、商品を仕入れて売る物販と、在庫を持たずに自分の手やスキルで動くサービス業の、どちらから始めるかで止まっています。物販は売る形がはっきりしていて分かりやすい反面、売れ残りが出たらと思うと踏み出せません。
サービス業は在庫を抱えない代わりに、自分にお金を払ってもらえるものがあるのか自信が持てません。最初の一歩として、物販とサービスはどちらから始めるほうが安全なのでしょうか?

● 回答
商品をいきなり大量に仕入れて売り出すのは、試着をせずに服を大量買いするようなものです。サイズが合わなければ、そのまま手元に残ってしまいます。最初の一歩としてどちらか一つを選ぶなら、在庫を持たないサービス業から入るほうが、傷が浅く済みます。売れるかどうかを、仕入れという先払いをせずに試せるからです。
物販が悪いという話ではありません。分かれ目になるのは「在庫を持つかどうか」の一点だけです。この一点を軸にするだけで、どちらから始めるかの迷いは驚くほど整理できます。
在庫の有無が「やり直しやすさ」を分ける
物販は、仕入れて在庫を持ち、それを売って利益を出す形です。売れれば分かりやすい一方、売れ残りは値下げか処分になり、使ったお金は戻ってきません。サービス業は、注文を受けてから動くので在庫がゼロです。方向を変えたくなっても、抱えた在庫が足かせになりません。
この「やり直しやすさ」は、最初にかけるお金の大きさにも直結します。だからこそ、実際の開業費用がどのくらいなのかを見ておく価値があります。
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、同公庫の融資先のうち融資時点で開業後1年以内の企業などを対象に調べた結果、開業費用の中央値は600万円で、250万円未満で始めた企業が20.1%を占めました。開業費用は長期的に少額化しています。在庫を抱えないサービス業は、この少額スタートに乗りやすい側です。物販は仕入れの分だけ、この金額がふくらみやすくなります。
- 先に出ていくお金:
物販は仕入れ代が先払い。サービス業は受注してから動くので先払いがほぼゼロ。 - 売れ残りの重さ:
物販は在庫が残れば値下げか処分。サービス業は抱える在庫そのものがゼロ。 - 方向転換のしやすさ:
物販は残った在庫が足かせ。サービス業は身軽に切り替えやすい形。
並べてみると、物販の不安は、その多くが「在庫」から来ていると分かります。裏を返せば、在庫を持たない形を選ぶだけで、その不安の大半は消えるということです。
迷ったら「3つのチェック」で見比べる
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、起業ネタを選ぶときの「3つのチェック」を紹介しています。①一人で始められるか、②一人で続けられるか、③大きなお金がかからないか。この3つに当てはめると、物販とサービスの向き不向きが見えてきます。
とくに③の「大きなお金がかからないか」は、在庫の有無とそのまま重なります。仕入れて在庫を持つ物販は、ここでつまずきやすい形です。だから最初の一つを決めるときは、物販とサービスの両方を同じ物差しで測るのが、遠回りのようで一番の近道になります。
- 一人で始められるか:
物販は仕入れ・保管・発送まで一人で回せるが物量に縛られる。サービス業は自分の時間だけで開始できる。 - 一人で続けられるか:
物販は在庫の入れ替えが続く。サービス業は依頼に応じて動くので在庫管理が要らない。 - 大きなお金がかからないか:
物販は仕入れ資金が要る。サービス業は元手を抑えて始めやすい。
この3つを両方に当てると、自分に向いているのはどちらかが見えてきます。まずは3つのチェックを、気になる物販とサービスの両方に一度当てはめてみてください。
起業18フォーラムの会員に、米田さん(仮名・30代前半・男性)という方がいます。会社勤めのかたわら、まず分かりやすさで物販を選び、人気商品を自己流で仕入れて売り始めました。最初の数か月は、売れた実感もあったそうです。
ところが手元には、売り切れずに残った在庫が少しずつ積み上がっていきました。米田さんは売れた数と残った数を自分でノートに書き留めていて、その記録を見返すうちに、利益よりも売れ残りの金額のほうが大きい月がある、と自分の数字で気づいたのです。
迷いが消えたのは、起業18フォーラムの勉強会で、その記録を持ち込んで話したときでした。在庫を持たない形なら同じ手間を「人の役に立つ作業」に振り向けられると整理でき、米田さんは仕入れ販売から、これまでの実務経験を活かした事務まわりの代行サービスへと切り替えました。
切り替えたあと、月に3件だった依頼は、半年ほどで月12件まで増えました。在庫を抱えない分、合う仕事だけを選んで受けられるようにもなったと話しています。
米田さんの例で大事なのは、扱う商品を変えたことより、在庫を手放して身軽になったことのほうです。同じ迷いの前に立っている人にも、この順番は当てはまります。
もしあなたが今、物販とサービスのどちらかで迷っているなら、今日はどちらかに決めなくて構いません。気になっている物販の商品とサービスの内容を1つずつ挙げ、「仕入れが要るか」「売れ残りが出るか」の2点だけで見比べてみてください。
この2点を並べるだけで、自分がどちらの不安になら耐えられそうかが、はっきりしてきます。仕入れの先払いが怖い人はサービス寄り、人と関わる仕事に気後れする人は物販寄り、という具合です。

物販とサービスのどちらが正解かは、商品の種類ではなく、あなたがどちらの不安と付き合えるかで決まります。ここまで在庫のことまで考えて選ぼうとしているなら、勢いだけで走り出す人とは、もう出発点が違うのではないでしょうか。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
