記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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会社の給料以外に自分の収入の柱がほしい。そう考えて動き出そうとした瞬間、多くの方が同じところで足を止めます。「これって会社に知られたら、まずいのではないか」という不安です。
せっかく気持ちが前に向いたのに、ばれることへの心配が先に立って、何も始められないまま時間だけが過ぎてしまう。そういう声を、私はこれまで何度も聞いてきました。
結論をお伝えすると、知られたくないなら、確認すべきことを正しい順番で押さえていくのが一番の近道です。やみくもに隠そうとするのではなく、就業規則を読む、住民税の仕組みを知る、勤めながらできることとできないことを分ける。この3つを順に踏むだけで、不安の大半は具体的な手続きに変わります。
この記事では、その進め方を公的な情報や実際に準備を進めた方の歩みを交えて整理していきます。
最初にやるのは就業規則の確認

準備を始めると決めたら、隠し方を考えるより先にやることがあります。自分の会社の就業規則を読むことです。多くの方が、ここを飛ばして「とにかくばれないように」と動いてしまいます。けれども、何が禁止で何が許されているのかを知らないまま進めるのは、地図を持たずに夜道を歩くようなものです。
国の方針は、ここ数年で大きく変わりました。厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業時の労働時間、健康管理、秘密保持、競業避止などの考え方が整理されています。国の流れは、会社の外で収入を得ることを一律に否定する方向ではなく、会社ごとのルールを確認しながら進める方向へ動いています。頭から禁止だと思い込む必要はありません。
とはいえ、最終的なルールは会社ごとに違います。就業規則を開いて、まず探すのは「兼業」「許可」という言葉です。全面禁止なのか、届け出れば認められるのか、競合となる事業だけを制限しているのか。就業規則を読んで自社の線引きを把握することが、すべての準備の出発点になります。条文があいまいなときは、人事に直接聞かなくても、社内規程の閲覧範囲で確認できる場合がほとんどです。
勤めながらやれること・やってはいけないこと

就業規則の線引きが見えてきたら、次は自分の行動を仕分けます。勤めながらだからこそ動けることと、トラブルのもとになりやすいことを、あらかじめ分けておくのです。ここを整理しておくと、迷いながら手を止める時間がぐっと減ります。
準備段階でやれることは、思っているよりたくさんあります。市場を調べる、自分の経験を棚卸しする、小さく試作してみる。会社の信用や情報を一切使わない範囲であれば、平日の夜や週末に進められることばかりです。逆に、避けたいこともはっきりしています。
- 会社の資産を使う:
業務用のパソコンや顧客リスト、社内で得た情報を準備に流用する - 勤務時間に作業する:
就業中に準備の連絡や作業を進めてしまう - 自分から話してしまう:
同僚や上司に準備中であることを得意げに打ち明ける - 競合領域に踏み込む:
勤務先と同じ顧客や同じ商品で勝負しようとする
この4つは、いずれも自分の不注意から起きるものです。私のこれまでの起業支援の経験では、知られてしまうきっかけは税金や制度よりも、本人の口からの場合が圧倒的に多いのです。準備が進んでも、軌道に乗るまでは社内で話さないと決めておくと安心です。
住民税の普通徴収という選択肢

制度の面でひとつだけ押さえておきたいのが、住民税の納め方です。給与所得者の住民税は通常、給与から天引きされる特別徴収という形になっています。この仕組みでは、給与以外の収入が増えると天引き額が変わり、それが経理を通じて見えてしまうことがあります。
ここで知っておきたいのが、徴収方法を選べる場合があるという点です。確定申告のときに、給与以外の所得にかかる住民税を「自分で納付」、つまり普通徴収にすると、その分は会社を通さず自宅に届く納付書で納める扱いになります。ただし自治体や所得の種類によって運用に幅があり、扱いが分かれることもあるため、申告前に確認しておくと安全です。
たとえば事業所得の赤字を申告した場合など、給与所得と合算されて通知に表れるケースもあります。心配なときは、お住まいの市区町村の窓口で扱いを確かめておくと確実です。確定申告の前に、普通徴収の選択欄を必ずチェックすると決めておきましょう。
勤めながらだからこそ商品の形を育てておく

就業規則と税金の確認が済んだら、いよいよ準備の中身です。会社を辞めずに進める強みは、収入が安定しているうちに、商品の形をじっくり育てられる点にあります。焦って一発勝負を狙わなくていいのです。
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』でも書いているのですが、商品は4つの構成で組み立てると安定します。気軽に試せるお試しの入口をつくり、その先に本命となるメインの商品を置く。さらに、ついでに買ってもらえる脇役のメニューと、毎月続けて利用してもらえる継続型の仕組みを組み合わせる。この4つがそろうと、一度きりで終わらない収入の流れが生まれます。
給料が安定しているうちは、このうちのお試しの入口を整えることから始められます。いきなり全部をそろえる必要はありません。小さな入口をひとつ用意し、反応を見ながら本命の商品へつなげていく。辞めずに準備するからこそ、収入の柱を慌てずに育てられます。
順番を守って進めた会員さんの歩み

たとえば、起業18フォーラムの会員さんで、メーカーの事務職をしている佐々木さん(仮名・40代前半・既婚・子育て中)がいました。準備を始めた当初は、とにかく会社に知られるのが怖くて、誰にも相談できず手探りで動いていました。就業規則も読まず、住民税の仕組みも知らないまま、ただ漠然と隠そうとしていたのです。
転機は、自己流で抱え込むのをやめ、勉強会で進め方を学んだことでした。就業規則を読んで自社が届け出制だと分かり、住民税は普通徴収を選べばよいと知ったのです。
不安が具体的な手続きに変わると、動きが速くなりました。準備開始から半年で、得意な書類整理を教えるお試し講座を小さく開き、1年が過ぎたころには月に数万円の手応えをつかみました。現在は本命の継続講座も用意し、辞めずに収入の柱を育てています。怖さの正体が手続きだと分かると、準備は一気に前へ進みます。

佐々木さんが変わったのは、隠す努力をやめて、確認する順番に切り替えたからです。就業規則を読む、税の納め方を選ぶ、やれることから手をつける。この道筋をたどるだけで、ばれることへの漠然とした恐れは、ひとつずつ片づく作業に変わっていきます。
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