記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「合格通知が届いた日に、テレビ局の採用ページを開いていました」。気象予報士の試験に通ったばかりの方から、そんな話を聞いたことがあります。気象予報士の資格があっても、自分で予報を出して売るには気象業務法第17条の許可が要ります。
気象庁が公表する気象の予報業務の許可事業者は、2026年7月17日時点で89者です。資格に価値がないという話ではなく、壁の位置を先に知るほど資格の使いどころがはっきりします。
気象予報士の資格が届く範囲と届かない範囲

気象予報士制度が始まったのは平成6年度です。気象庁は制度の目的を、民間の事業者が出す予報の信頼性を担保するため、数値予報資料などの高度な予測データを適切に扱える技術者を確保することだと説明しています。
気象庁の公表によると、気象予報士の登録者数は2026年3月末時点で12,921名です。最も多い東京都が2,557名で、いちばん少ない高知県は36名です。
ここで押さえたいのは、資格が何を許すのかという点です。気象業務法第19条の2と施行規則は、現象の予想を気象予報士に行わせること、事業所ごとに所定人数の専任の気象予報士を置くことを定めています。
つまり資格は、許可を受けた事業のなかで予想を担当できる人だという証明です。資格そのものが、予報を売ってよいという免許になるわけではありません。
予報を売るなら気象業務法第17条の許可が要る

気象庁以外の者が気象や波浪などの予報業務を行うときは、気象庁長官の許可が必要です。根拠は気象業務法第17条にあります。許可制の趣旨は、技術的な裏付けのない予報が社会に発表されて混乱をもたらすのを防ぐことにあります。
無許可で予報業務を行った場合は、気象業務法第46条により50万円以下の罰金が科されます。「知らずにやってしまった」で済む話ではありません。
2026年5月29日には改正気象業務法が施行されました。無許可で予報業務を行う者の名称を公表する仕組みと、外国法人などに国内の代表者を置かせる義務が加わっています。無許可の予報を放置しない方向へ、制度は動いています。
それなら許可を取ればいい、と考える方もいます。ただ、そろえるべき人数が先に決まっています。現象の予想を行う事業所ごとに、1日の予想時間が8時間以下なら2人以上、8時間を超え16時間以下なら3人以上、16時間を超えるなら4人以上の専任の気象予報士が要ります。
予報業務を適確に遂行するうえで支障がないと気象庁長官が認める場合には、必要人数が少なくなる例外もあります。それでも、退職した翌日から個人ひとりで簡単に通せる手続きではありません。これに予報資料の収集手段や設備の審査も加わります。気象の予報業務の許可事業者が89者にとどまっている事実が、その難しさを表しています。
- 気象業務法第17条:
気象庁以外が予報業務を行うときに必要な気象庁長官の許可 - 気象業務法第19条の2:
現象の予想を気象予報士に行わせる義務(配置人数は施行規則が規定) - 気象業務法第46条:
無許可で予報業務を行った場合の50万円以下の罰金
許可が要る仕事と要らない仕事の分かれ目

予報業務とは、観測の成果にもとづく現象の予想を発表する業務をいいます。時と場所を特定して予想を出し、それを利用者に届ける行為を繰り返せば業務にあたります。逆に言えば、この形に入らなければ許可の対象ではありません。
| 仕事の形 | 予報業務の許可 | 具体例 |
|---|---|---|
| そのまま伝える | 不要 | 気象庁の警報・注意報・予報を加工せずに配信する |
| 独自の予想を出す | 必要 | 気象庁のデータを補正して特定地点の予想値を出す |
| 過去の記録を整理する | 予想の発表に踏み込まなければ対象外 | 過去の気象記録と作業中止の実績を突き合わせて判断の目安を作る |
3つ目の型が、資格を持つ人にとっていちばん現実的な入口になります。
過去の記録を整理して傾向を示すだけなら、許可を待たずに今日から手をつけられます。勤め先や現場に残っているデータが、そのまま材料になります。
ただし、3つ目と2つ目の境目は書き方ひとつで動きます。「明日の午前は風が強まる見込みです」と資料に書けば、それは予想の発表です。自分が作ろうとしている資料が予想の発表にあたるかどうかは、気象庁の予報業務許可の担当窓口に事前に確認してください。
予報ではなく判断の材料を届ける

予報を売るのが難しいなら、では何を売るのか。ここで効いてくるのが、資格を取る前にいた業界です。気象予報士として独立の芽が出やすいのは、予報そのものではなく、気象の情報を自分がいた業界の判断に翻訳して届ける形です。
建設の工程管理、屋外イベントの運営、農業、小売の発注担当。どの現場にも、天気で判断が変わる場面があります。作業を止めるか進めるか、明日の発注量をいくつにするか。これらは予報の精度の話ではなく、この数字が出たらこうする、という基準の話です。
気象庁は、予報を出す人とは別に、気象データを事業に活かす人材の育成講座を認定しています。経済産業省の第四次産業革命スキル習得講座の認定を受けていることが、気象庁が「気象データアナリスト育成講座」を認定する前提になっています。
気象と、データの扱いと、事業側の課題。この3つをつなぐ人を増やすための仕組みだと考えると、資格の置き場所が見えてきます。
まずは自分がいた業界で、天気によって判断が変わる場面を1つだけ選んでみてください。選ぶ場面が具体的なほど、次に集めるべき記録がはっきりします。
設備保全の経験を資料に変えた及川さん

及川さん(仮名・30代後半・男性)は、インフラ企業で設備の保全を担当して11年目になります。気象予報士の試験に通ったあと、まず探したのは予報を出す会社の求人でした。求人の数は限られていて、天気の解説をSNSに投稿しても、読まれはするものの依頼にはつながりませんでした。
流れが変わったのは、職場の休憩室でした。「天気で困ることある?」とその場にいた同僚に順に聞いてみると、5人中3人が同じことを口にしました。翌日の作業を実施するか延期するか、朝の判断が毎回もめるという話です。
その後に参加した起業18フォーラムの勉強会では、ほかの会員さんが自分の経験を商品に変えていった過程を聞きました。及川さんが持ち帰ったのは、売るものを予報から判断の材料へ置き換えるという考え方でした。
作ったのは、翌日の作業可否を決めるための確認シートです。気象庁の警報と注意報はそのまま載せ、そこへ過去3年分の作業中止の記録を並べました。自分で予想を出す形になっていないかは、気象庁の窓口で確認したうえで配りはじめました。
資料作成の依頼は、9ヶ月目で月2件でした。2年目に入ったころから単発が毎月の契約に変わり、いまは1件1万5,000円の資料を月12件、定期契約で受けています。取引先からは、朝の打ち合わせでもめる回数が減ったと言われます。
1件いくらで何件必要かを先に計算する

業界を絞ると相手がいなくなるのではないか。この不安は、絞ろうとするたびに顔を出します。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、1億3000万人の0.1%は13万人、その0.1%でも130人が残るという見方を紹介しています。絞ったからといって、相手がいなくなるわけではありません。
そのうえ、相手が会社なら1件あたりの金額が個人向けとは違います。翌日の作業可否を判断するための資料を1件1万5,000円で受けるなら、月4件で6万円、月8件で12万円になります。必要なのは130人ではなく、毎月続けて頼んでくれる数社です。
- 決めること1:
天気で判断が変わる場面のうち、いちばん頻度の高いもの - 決めること2:
その判断を助ける資料の形 - 決めること3:
1件あたりの金額 - 決めること4:
目標額に届くまでの月あたりの件数
数字にしてみると、必要な相手の数は思ったより少ないとわかります。全国の天気を語る側に回らなくても、目の前の数社に向けて資料を整えるだけで、月の目標額には届きます。

気象予報士の独立に関するよくある質問

Q.気象予報士の資格があれば、個人で天気予報を売れますか?
資格だけでは売れません。予報業務は気象業務法第17条の許可制で、資格を持っていることと許可を受けていることは別です。気象庁が公表する気象の予報業務の許可事業者は2026年7月17日時点で89者にとどまり、無許可で予報業務を行うと第46条により50万円以下の罰金が科されます。
Q.許可を取らずにできる仕事にはどんなものがありますか?
気象庁の発表をそのまま伝える配信、過去の気象記録の整理、社内向けの読み方研修などがあります。ただし、時と場所を特定した現象の予想を発表する形になると許可の対象に入ります。判断に迷う内容は、気象庁の予報業務許可の担当窓口に事前に確認するのが確実です。
Q.予報業務の許可は個人でも申請できますか?
申請そのものは個人でもできます。ただし現象の予想を気象予報士に行わせる義務が気象業務法第19条の2にあり、施行規則は予報業務を行う時間に応じて事業所ごとに原則2人以上の専任の気象予報士を置くよう定めています。気象庁長官が認める場合には必要人数が少なくなる例外もありますが、予報資料の収集手段や設備の審査もあり、資格を取った人がそのまま一人で始められる仕事とは別物です。
Q.気象データアナリストの講座を受ければ独立できますか?
講座の受講は入場券であって、依頼が来る保証ではありません。経済産業省の第四次産業革命スキル習得講座の認定を受けていることが、気象庁が育成講座を認定する前提になっており、学ぶ内容の水準は担保されています。そのうえで、自分がいた業界のどの判断に結びつけるかを決めたときに、はじめて依頼の形が見えてきます。
起業18フォーラムの勉強会でできること

起業18フォーラムは、起業したい方のための会員制コミュニティです。勉強会では、自分の経験のどこに値段がつくのかを、ほかの会員さんの事例と照らしながら整理します。気象予報士のように資格の使い道が絞られて見える分野ほど、外から見た用途を知る場が効いてきます。
今日は、自分が出せる資料を1件いくらで受けるかを決めてしまってください。件数は、単価が決まってから逆算すれば足ります。
資格が武器にならないと感じるときほど、これまでいた現場で当たり前に見てきた困りごとのほうを見落としています。気象の知識に値段がつくのは、天気そのものではなく、その天気で誰かが迷っている場面です。
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