キッチンカー起業の始め方|週末1台・出店場所の確保から始める手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

キッチンカーで何か始めたいと思ったとき、多くの人がまず車両のカタログを開きます。新車で数百万円、特別仕様の一台、ラッピングのデザイン。けれど、その順番で進めた人ほど、肝心の「どこで売るか」が後回しになって立ち止まります。

実は、キッチンカー起業でいちばん最初に動かすべきなのは、車でも資金でもありません。今日はその順番を、26年の起業支援の現場で見てきたことを交えながら整理していきます。

ポイント キッチンカー起業は「大型投資」から始めるものではない

大きく作るほど止まりやすいという現場の実感

キッチンカー

キッチンカーと聞くと、ぴかぴかの大きな車体に厨房設備を一式そろえる姿を思い浮かべる方が多いと思います。その完成形を最初の目標に置いてしまうと、必要な資金は一気にふくらみます。

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用は「250万円未満」と「250万〜500万円未満」で4割以上を占め、平均値は975万円でした。これは融資を受けて店舗を構える層も含めた数字で、いまの起業の実態は「大きく構える」より「小さく始める」方向に動いています。キッチンカーも同じで、軽トラックをベースにした小さな一台なら、車両と最低限の設備で始める道があります。

最初から完璧な一台をそろえない

私がこれまで起業準備のご相談を受けてきた中でも、キッチンカーで早く手応えをつかんだ人ほど、最初は驚くほど身軽でした。中古の軽トラックに必要な設備だけを載せ、メニューを1品か2品に絞り、週末だけ動かす。その規模なら、もし合わなくても痛手は小さく済みます。

大きく作るほど月々の支払いが重くなり、「売れる場所」を探す前に体力が尽きてしまいます。

ポイント 最初にやることは車選びではなく「出店場所の確保」

売れる場所から逆算するキッチンカー起業の手順

キッチンカー

キッチンカーの起業手順で、私がいちばん順番を間違えやすいと感じているのが、ここです。多くの人は「車をそろえる→営業許可を取る→出店場所を探す」と進めます。けれど、この順番だと、せっかく車を用意しても出せる場所が見つからない、という事態が起きます。

おすすめしたいのは逆です。まず「ここなら出せそう」という場所を1か所見つけてから、その場所に合った車と設備を考えるという進め方です。出店できる場所が先に決まっていれば、必要な車のサイズも、扱う食材も、1日の売上の見込みも、すべてそこから逆算できます。

出店場所には大きく3つのタイプがある

出店場所は、性質ごとに分けて考えると探しやすくなります。

  • オフィス街・工場の敷地:
    平日の昼に安定した需要。ビルや施設の管理者との直接交渉が中心
  • 商業施設・スーパーの駐車場:
    休日の家族連れが対象。施設の販促担当が窓口になることが多い
  • イベント・マルシェ:
    集客は主催者頼みだが、単発で試せる。最初の練習台に向く

このうち、安定した収入の土台になりやすいのは、決まったお客様が毎日通る平日のオフィス街です。一方で、最初の一歩としては、申し込めば出られるイベントから始めて反応を確かめる人も少なくありません。

出店場所のあてが一つもない状態で車を買うのは、お客様がどこにいるか分からないまま大きな買い物をするのと同じです。

ポイント 営業許可と仕込み場所という2つの関門

許可と仕込みは保健所ごとに運用が違う点に注意

キッチンカー

場所のあたりがついたら、次に避けて通れないのが営業許可です。ここはキッチンカー起業特有のつまずきどころなので、丁寧に押さえておきましょう。

2021年6月に施行された改正食品衛生法により、それまで「飲食店営業」「菓子製造業」などに分かれていた営業許可が、原則として「飲食店営業」の一本に整理されました。あわせて設備の基準も全国で統一され、手洗い設備は水道の栓を手でひねらずに使えるタイプが求められるようになっています。

許可は「出す場所」を管轄する保健所で取る

注意したいのは、営業許可は出店したい地域を管轄する保健所で取る、という点です。一つの許可で都道府県内のどこでも出せる地域もあれば、エリアごとに許可を取り直さなければならない地域もあり、保健所ごとに運用が異なります。だからこそ、出店場所の見当をつけてから、その場所を管轄する保健所に確認する順番が効いてきます。

もう一つの関門が「仕込み場所」です。販売当日の車内調理以外の下ごしらえは、自宅の台所では認められないことが多く、保健所の許可を受けた施設が必要になります。

  • 知人の飲食店を借りる:
    すでに営業許可を満たした厨房なので、仕込み場所として申請しやすい
  • シェアキッチンを契約する:
    設備が整っており、自分で工事をせずに使える
  • 車両の設備を強化する:
    給排水タンクを大容量にすれば車内仕込みが認められる地域もある

仕込み場所が要るかどうかも自治体で差があります。食品衛生責任者の資格は各都道府県の食品衛生協会の講習で取れますので、許可申請とあわせて早めに動いておくと安心です。

ポイント 出店場所オーナーの一言から広がった黒木さんの例

声をかけられた縁が黒木さんの事業を動かした実話

キッチンカー

起業18フォーラムの会員さんに、黒木さん(40代)という方がいます。もともとは食品メーカーで働きながら、いつか自分の店を持ちたいと考えていた方でした。

黒木さんは当初、新車のキッチンカーで本格的なカフェを開く構想を描いていました。けれど見積もりを取るほど金額がふくらみ、一歩を踏み出せないまま時間だけが過ぎていきました。「大きく始めなければ恥ずかしい」という思い込みが、かえって自分の足を止めていたのです。

転機は、思いがけない一言から訪れます。週末のマルシェに中古の軽トラックで試しに出店していたとき、近くのオフィスビルの管理人さんから「平日もここの前に出してみない? 昼に困っている人が多いんだよ」と声をかけられたのでした。黒木さんはその場所に合わせて、メニューをコーヒーと数種類の軽食だけに絞りました。

平日の昼にその一角へ通ううちに、顔なじみの常連が増えていきました。半年ほどで、平日だけで会社員時代の手取りに近い水準まで届くようになります。大きな車で全部そろえる構想を捨て、声をかけてもらった一つの場所に集中したことが、黒木さんの転機でした。

ここで効いてくるのが、拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』で紹介している、単価を上げる3つの方向です。流通経路を変える、居場所を変える、扱うカテゴリを変える。黒木さんの場合は、まさに「居場所を変える」一手でした。週末のマルシェという不特定多数の場から、平日のオフィス街という決まったお客様がいる場へ。同じコーヒーでも、置く場所が変わるだけで売れ方はまるで違ってきます。

ポイント 元請け一択ではない、自分の足で場所を見つける

出店場所は探すより声をかけて生まれるという考え方

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キッチンカーの出店場所というと、出店枠を仲介する会社に登録して紹介を待つ形を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも一つの手です。ただ、その入口だけに頼ると、紹介がなければ動けない受け身の事業になってしまいます。

黒木さんがそうだったように、自分の足で歩いて見つけた一つの場所が、いちばん長く続く土台になることがあります。出店場所は「探して与えられるもの」だけでなく、「声をかけて生まれるもの」でもあるのです。気になる場所があれば、まずはその管理者に一声かけてみる。それだけで、紹介を待つだけでは出会えなかった縁が生まれます。

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キッチンカー起業の始め方として、今日できることは、出店できそうな場所を1か所、実際に見に行って管理者に声をかけてみることです。車のカタログを眺めるより、その一歩のほうが、あなたの起業をずっと前に進めてくれます。場所に目を向けて動けるあなたなら、勢いだけで大きな車を買う人とは、出発点からもう違っています。

ポイント よくある質問

キッチンカー起業の始め方でよく寄せられる疑問

起業前質問集

Q.キッチンカーは会社に勤めながら週末だけでも始められますか?

  • 週末のイベント出店から小さく試す形が現実的
  • 軽トラックベースなら設備も最小限で始められる
  • 反応を見てから出店日数を増やす進め方が安全

いきなり毎日出すのではなく、まず週末のマルシェやイベントに1台で出してみて、お客様の反応を確かめるところから始める人が多くいます。手応えがあれば、平日の固定の場所へ少しずつ広げていけば十分です。

Q.営業許可はどこの保健所で取ればいいのですか?

  • 出店したい地域を管轄する保健所で取得
  • 都道府県内一円で出せる地域とエリアごとに必要な地域がある
  • 運用差が大きいので出店先の保健所に事前確認

営業許可は出店する地域を管轄する保健所で取ります。一つの許可で都道府県内のどこでも出せる地域もあれば、エリアごとに許可が必要な地域もあります。出店場所の見当をつけてから、その場所の保健所に確認するのが確実です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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