記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
定年退職後の61歳です。大手商社で海外部門を長年担当し、退職後は自分の経験と人脈を活かして仕事をしたいと思っています。
40代・50代の方と比べて、起業準備で変えるべき点はありますか?

● 回答
現実的です。ただし「40代・50代の準備の仕方をそのまま当てはめない」ことが前提になります。起業準備で変えるべきポイントは、規模感・設計・体力配分の3つです。以下順番に整理します。
なぜ40代・50代と同じやり方では合わないのか
40代・50代の起業準備は、多くの場合「独立を見据えた収入の置き換え」を目標に設計されます。会社給与がなくなる前提で、月20万・30万を稼げる事業を作ることがゴールになりやすい。
60代・定年後の準備でこの設計をそのままやろうとすると、目標が大きくなりすぎ、準備期間も長くなります。起業18フォーラムを26年運営してきた実感として、50代で体力が陰り、60代で気力を失うケースが少なくありません。体力・気力の使い方も、40代とは別に考える必要があります。
変えるべき理由は3つです。
- 年金という収入の土台があるため、目標金額を「プラスアルファ」に下げられる
- 在職老齢年金の調整(報酬との合算)を意識した形態選択が必要
- 体力・集中力の使い方が変わるため、件数より単価を重視する設計が合う
年金という土台を設計に組み込む
定年後には老齢年金という安定した収入基盤があります。月15万〜20万程度の年金があるなら、起業で目指す金額は「生活費の全額」ではなく「プラスアルファの数万円」で十分です。
日本政策金融公庫の新規開業実態調査(2025年度)では、開業時の年齢で「60歳以上」の割合は6.4%でした。開業者全体の中ではまだ少数ですが、年金という土台があるためリスクを絞りやすく、40代より有利な面もあります。
在職老齢年金の調整を確認する
2026年4月から、老齢厚生年金の在職老齢年金制度で支給停止の基準額が月65万円に引き上げられました。賃金等と老齢厚生年金の合計がこの基準額を超えると、年金が一部停止されます。個人事業主として活動する場合、個人事業収入はこの調整の対象外です。起業形態と年金の関係は事前に年金事務所に確認することをおすすめします。
件数より単価を上げる設計にする
40代なら件数を積み上げて売上を作る方法も有効ですが、60代では体力と時間の使い方が変わります。1件あたりの深度を上げ、専門性で単価を引き上げる方向が長続きします。月2〜5件の相談・顧問・セミナー登壇で月10万円前後を年金にプラスする設計は、リスクが低く継続もしやすい。
ニッチを経験の中から見つける
拙著にこんな考え方があります。
日本に1億3000万人いるとして、その0.1%は13万人。さらにその0.1%でも130人。130人に必要とされるサービスを作れれば、ニッチなビジネスは成立します。
60代の起業は全国1位を目指す必要がありません。自分の専門性が刺さる130人を見つければいい。大手商社で海外部門に長年いた方なら、「中小企業の海外取引の最初の一歩を相談できる人」はそれほど多くない。130人に支持されるニッチは、すでに手元にある経験の中にあります。
体験談:15ヶ月目に単価が2倍になった
起業18フォーラムに参加した、元メーカー海外営業の会員(仮名・辰巳さん・当時61歳)の話をします。
辰巳さんは退職後すぐに「コンサルで月20万を稼ぎたい」と動き始め、1件あたり5万円で複数社に営業をかけました。半年で決まったのは1件のみ。
変わったきっかけは、起業18フォーラムの勉強会で他会員から言われた一言でした。「辰巳さんの価値って、コンサルの量じゃなくて、海外取引の最初の一手を知っていることじゃないですか」。
そこからフォーラムの個別相談で方向を絞り直し、「輸出入の初期設定だけを請け負う」という切り口に変えました。件数を月2〜3件に絞り、1件あたりの深度を上げた結果、15ヶ月目には同じ内容で単価が10万円を超えるようになりました。
今日からの一歩:まず1件だけ受けてみる
年金にプラスする最初の1件を受けてみることからで構いません。月に数件で十分な規模です。まず周囲の知人・元同僚・取引先に「こういう相談なら乗れますよ」と声をかけることを試してみてください。
- 目標収入を「プラスアルファ」に設定する(年金の土台を活かす)
- 件数より単価を上げる設計にする(体力・時間の使い方が変わる)
- ニッチを経験の中から見つける(新スキル習得より強みの棚卸し)
よくある質問
Q.60代で起業すると、年金と収入の合計で税金が増えますか?
増えるかどうかは収入額と控除の組み合わせ次第です。以下のポイントを押さえておくと試算しやすくなります。
- 個人事業収入は事業所得として計算され、年金(雑所得)と合算して確定申告します
- 青色申告を選ぶと最大65万円の控除があり、節税効果が大きくなります
- 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除も活用できます

税金の具体的な試算は、税理士や年金事務所に相談するのが確実です。「起業したら損する」と決めつけず、まず相談窓口に問い合わせることをおすすめします。
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