記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
起業準備を始めて3カ月になりますが、いまだに「これだ」というすごいアイデアが浮かびません。誰もやっていない斬新な事業でないと成功しない気がして、結局何も形にできずにいます。
やはり、ずば抜けたアイデアがないと起業はできないのでしょうか?

● 回答
正直にお伝えします。私自身も支援を始めた頃は、「斬新なアイデアこそ起業の核心だ」と信じていました。けれど、6万人近い方の準備に関わるうちに、その考えがむしろ人を止めていると気づきました。起業に、すごいアイデアは要りません。むしろ、平凡な不満や困りごとのほうが、商売の種になります。
「アイデアがある人ほど失敗しやすい」という逆説
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、「アイデアはいらない。あるほうが失敗しやすい」という考え方を紹介しています。誰もやっていない事業には、誰もやっていないだけの理由があることが少なくありません。需要がない、続かない、お金がかかりすぎる。斬新さに惹かれて飛びつくと、この落とし穴にはまります。
同書では、起業ネタを見極める「3つのチェック」も紹介しています。一人で始められるか、一人で続けられるか、大きなお金がかからないか。この3つを満たすかどうかのほうが、アイデアの斬新さよりずっと大切です。
身近な困りごとが商品になった例
起業18フォーラムにいた寺岡さん(仮名・40代前半・メーカー勤務・未就学のお子さんを育てながら準備中)も、同じところで止まっていました。「人がやっていない事業を」と数カ月ひねり出そうとして、空回りしていたそうです。
転機は、自分が検索した経験を振り返ったときでした。育休からの復帰前、社内制度と手続きを調べ尽くしたのに、初心者がつまずく一歩手前の疑問に答えるものが見つからなかった。「自分が困って探し回ったのに見つからなかったこと」が、そのまま同じ立場の人への商品になると気づいたのです。斬新さはどこにもありません。けれど、需要は確かにそこにありました。
とはいえ、思いつきを商品の形にするのは一人では難しいものです。寺岡さんは起業18フォーラムの個別相談で「その悩みを抱えているのは誰か」を具体的に詰め、対象を絞っていきました。最初の月は反応ゼロでしたが、5カ月目に初めて有料の申し込みが入り、そこから少しずつ続いています。
「斬新さ」より「確かな需要」を選ぶ
斬新なアイデアに惹かれてしまうのは、人と違うことをしないと勝てない、という思い込みがあるからです。けれど、起業準備の入口で大切なのは、誰も気づいていない発想ではなく、確かに困っている人がいるかどうかです。寺岡さんが選んだのも、自分が現に困った経験という、地に足のついた需要でした。
同じ悩みを抱えた人が一人でもいれば、商売は始められます。「すごいことを思いつかなきゃ」と力むより、「自分が乗り越えてきたつまずき」を一つ思い出すほうが、ずっと近道になります。
- 一人で始められるか(仲間や大がかりな準備を前提にしない)
- 一人で続けられるか(自分の生活の中で無理なく回せる規模か)
- 大きなお金がかからないか(失っても痛くない範囲で試せるか)
斬新なアイデアを探すのをやめて、自分が「面倒だ」「困った」と感じた場面を思い出してみてください。あなたが当たり前に乗り越えてきたことは、まだそこでつまずいている誰かにとっての答えです。
この1週間、自分や身近な人が「これ不便だな」とこぼした瞬間を、見るだけでいいので心に留めてみてください。商品より先に、悩みを集めるのが近道です。
アイデアの探し方をもう少し知りたい方は、こちらもどうぞ。

すごいアイデアがないことを、あなたは引け目に感じているかもしれません。地に足のついた困りごとから始める人のほうが、長く続いている。それが私の見てきた現実です。
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